第七章:真実の解明と新たな未来
エドワードの徹底した調査によって、ついにカトリーナの本来の身分が証明された。
「カトリーナ、君は正式にローレンス伯爵家の唯一の後継者だ。」
エドワードは静かに言ったが、その言葉の重みは計り知れなかった。カトリーナは息を呑み、動揺を隠せなかった。
「……私が?」
「そうだ。君の父上、正当なローレンス伯爵が亡くなったとき、本来ならばお前が爵位を継ぐはずだった。しかし、ハロルドが強引に家を乗っ取り、君を排除した。」
エドワードは冷静に説明を続けた。カトリーナは拳を握り締めた。確かに、両親の死後、彼女は全てを奪われた。自分が相続するはずだった家も、財産も、名誉も。だが──
「……私にはもう、関係ないです。」
「何?」
「ローレンス伯爵家は、もう辛い思い出しかないのです。」
彼女はうつむいて言った。
「私はもうあの家の人間じゃない。」
カトリーナの声は静かだったが、強い決意が感じられた。エドワードは少し驚きながらも、彼女の決断を尊重した。
「……君がそう言うのなら、無理に継がせることはしない。」
彼は微かに微笑んだ。
しかし、これで終わりではなかった。
ハロルドたちが関わっていた闇オークションについて、カトリーナが証言することで事態はさらに大きく動いた。ラズモンド伯爵の悪行が白日の下に晒されるとともに、ハロルドが後見していた娘を虐待していたこと、売り飛ばした事実も貴族社会に広まったのだ。
「前伯爵の娘を金のために売り飛ばした男が、どの面を下げて貴族を名乗るのかしら?」「その娘も使用人以下の扱いをしていたとか……信じられないわ」「奥方も娘も同じように前伯爵の娘を粗雑に扱っていたらしいな」
「しかも、伯爵家を乗っ取った挙句、財産を食いつぶして借金に溺れるとは……。」
「奥方も不貞にふけっていたようですわね。」
「娘のリリアナも、他人の婚約者に手を出していたと聞いたわ。」
社交界は彼らの醜聞で持ちきりになり、もはや彼らに手を差し伸べる者はいなかった。
そして──
「ハロルド・ローレンス、貴様の爵位は剥奪されることが正式に決定した。」
裁定が下り、ハロルドは全てを失った。
エレーヌは夫の没落に悲鳴を上げ、リリアナは泣き叫んだ。しかし、誰も彼らに同情しなかった。
エドワードの計略は完璧だった。
ハロルド、エレーヌ、リリアナは、社交界から完全に追放されることとなった。
財産を失い、屋敷を手放さざるを得なくなった彼らは、貧しい下町へと身を落とす。
かつて、カトリーナを虐げた報いとして。
彼らに待つのは、誰からも見向きもされない惨めな未来だけだった。
こうして、ハロルド一家は完全に没落したのだった。
すべてが終わり、カトリーナは安堵の息をついた。
「これで……もう、終わったのね。」
彼女の肩からは、長年の重圧が抜け落ちたようだった。
そんなカトリーナを、エドワードはそっと見つめていた。気づけば、彼は彼女に強く惹かれていた。
苦しみを抱えながらも生き抜いた少女。
貴族としての誇りを捨て、自分の道を選んだ強い女性。
「……君はこれから、どうしたい?」
エドワードの問いに、カトリーナは少し考えた。そして、柔らかく微笑んだ。
「この先のことは、ゆっくり考えてみます。」
「そうか……なら、君が望む未来を見つけるまでここにいて欲しい。」
エドワードはカトリーナの手を取った。
──これからは、彼女の未来を支えていく。
カトリーナもまた、彼の手のぬくもりを感じながら、新しい人生を歩み出すことを決意するのだった。
こうして、彼女は本当の幸せへと向かっていった──。




