第三章:闇のオークション
オークションの日が訪れた。
カトリーナは透けるような薄衣をまとわされ、暗く冷たい地下の大広間へと連れて行かれた。そこには既に多くの商品――彼女と同じように囚われた子どもや女性たちが並ばされていた。
「おい、新しいのが来たぞ」
男たちの無機質な声が響く。隣にはまだ十にも満たないような幼い少年が怯えて震えていた。その先には若い女性たちが、虚ろな目をしながら座らされている。
「お願い、帰りたい……」
すすり泣く声があちこちから聞こえたが、誰も助ける者はいない。ただ冷酷な男たちが淡々と準備を進めていた。
やがて、オークションが始まる。
「次の品を紹介しよう!」
司会者が声を張り上げると、一人の少女が舞台へと押し出された。怯えながらも抵抗する力もなく、ただ震えるばかりの姿に、客席からは嘲るような笑いが漏れた。
「ほう、これはなかなか……」 「まだ若いな。使い道はいくらでもある」
まるで家具や家畜を品定めするような視線が注がれる。次々と競りが進み、彼女たちは次々と買われていく。
「では、次の商品を」
カトリーナの番が来た。
「やめて……!」
だが、反抗は許されない。薄衣一枚のまま舞台へと引き出される。無数の視線が彼女の肌を這い回った。
「ほう……なかなかのものだな」 「この娘は高値が付きそうだ」
耐えられない。逃げ出したい。でも、足が動かない。心が折れそうになったその時──
「王国法に基づき、この場の全員を逮捕する!」
突然、騎士団が屋敷に突入した。ラズモンド伯爵は捕らえられ、関わっていた貴族たちも次々と拘束されていく。
騎士団による救出が終わった後、カトリーナは他の少女や子どもたちとともに安全な場所へと運ばれた。
「もう、大丈夫だからね」
騎士団の女性隊員が優しく声をかけると、怯えていた少女たちはようやく涙を流しながら頷いた。幼い少年が小さな手を握りしめ、震えながらも「お家に帰れるの?」と問いかける。
「ええ、あなたたちはもう自由よ」
その言葉に、子どもたちは泣きながらも微笑んだ。カトリーナもまた、長い恐怖から解放され、心の底から安堵したのだった。
しかし安堵したのも束の間、騎士団に連れられた先で、彼女を待っていたのは役人たちだった。
「君は未成年者だ。法に基づき、親族である伯爵の元へ送っていこう」
「でも、私は売られたんです……叔父が私を手放したんです!どうか別の場所に行かせて下さい」
「それは違法な取引だった。しかし、正式な手続きがない限り、君は後見人である伯爵のもとへ戻されるべき立場だ」
淡々とした役人の言葉に、カトリーナの心は凍りついた。叔父の家に戻される——それは再び地獄の日々が待っているということだった。
「嫌……戻りたくない!」
絶望した彼女は、その夜のうちに逃げ出した。




