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潜入作戦


 ウェスト・テキサス・インターミディエイト。


 テキサス州で産出される原油のことをこう呼ぶ。

 アメリカ国内で産出される原油の6%。世界で産出される原油の1~2%ほどを占める原油で、その価格は世界の原油価格の中で最も有力な指標となる。

 実際の産出量は、一日わずか100万バレルと多くはない。

 しかし先物の一日あたり取引量はその百倍の1億バレルを超え、価格の大きな変動、特にその値上がりは、世界経済に大きな影響を及ぼす程、発言力がある。

 

 中華帝国軍が北米へ侵攻する際、東海岸や五大湖に橋頭堡を築くことはプランとして存在した。

 しかし、そこに不足しているものが、何と言っても石油。

 石油がなければ兵器を動かすことは出来ない。

 生産拠点は自国のそれで十分。

 むしろ、敵の生産拠点は容赦なく破壊してこそ意味がある。

 何と言っても、石油を確保することが大切。

 ヒューストンが狙われたのは、そんな理由からだ。


 現在、中華帝国軍は油田と石油生産施設のほとんどを手中に収めている。

 本来なら、その石油資源をもって世界経済さえ牛耳りたいのが実情だろうが、彼等にとって、石油は自分達が消費してこそ価値がある。

 アフリカや中東の資源をEUに押さえられている現状、世界最大級の生産拠点はあるにしても、工場を動かす石油資源に事欠く中華帝国にとって、それは喉から手が出るほど欲しい存在。


 下手をすれば、彼等が北米へと侵攻した最大の理由は、その石油資源の確保と言っても言いすぎではない。


 石油確保のために血眼になっているEUの縄張りに侵攻しようものなら、EU各国は老人や赤ん坊にまで武器を持たせるだろう。


 中華帝国軍参謀達がこぞって中東への武力侵出に反対したのはそういう理由であり、実際にそうなっている。


 それだけに、載賢がテキサスの石油資源確保のため、北米に派遣した軍に対してテキサスの死守を命じたのは当然のことなのだ。


 逆に言えば、アメリカは意地でもテキサスを奪還する必要がある。


 ベネット大統領は、全軍に対してテキサス奪還を厳命。

 米軍はその奪還作戦を実施すべく部隊を編成。既に米国の総力を挙げて製造された兵器と、各地から動員された兵士達がテキサスへ向けて移動を開始している。

 その規模は、待ちかまえる中華帝国軍をして、攻めから防御に転じるしかないと認めさせる程だ。


 無論、問題もある。


 中華帝国軍が散布した狩野粒子の影響により、米軍はご自慢のハイテク兵器を使用出来ない。


 陸軍の主力兵器は、何と50年近い前に退役したM48パットン戦車にM60と同じ105ミリ砲や、エンジンやトランスミッションを搭載したM48A5というタイプ。そして空を舞うのはムスタングやA-1スカイレーダーといえば、どれ程米軍が割り切ったか、およその想像が付くだろう。

 歩兵に与えられる銃だって、それまでのM16や、M16から更新が進んでいるM4ではない。

 簡易生産の最たる存在でもあるグリースガンだ。

 米軍には、新兵教育にかけている時間も資源も全てが存在しない。

 新兵募集所のドアをくぐったヤツはすべて銃を握らせて、即座に戦場に送り込みたいのが本音だ。

 無論、そうはいかない。

 上手くいかない穴埋めをしているのは、実は名もなき市民達だった。


 例えば、ヒューストン。

 占領されたとはいえ、そこには米国民が多数存在している。


 中には中華帝国軍相手に商売している者も、或いは彼等に尻尾を振るう者も存在する。

 だが、多くの米国民が中華帝国軍という占領者を決して歓迎していない。

 中華帝国軍の兵士が店に入っても、呼ばれるまで近づかない。

 軍用車両が多く通る通りにクギを撒く。

 中華帝国軍に納入を命じられた製品の品質を落としておく。

 そんなことはザラだ。

 なにより、多くの市民がしたことは、中華帝国軍の存在を意識的に忘れること。

 つまり、無視することで、その協力を拒む。

 そんな市民達は、後に沈黙の抵抗者サイレント・レジスタンスと呼ばれるようになる。

 彼等に対する中華帝国軍の仕打ちは日に日にエスカレートした。

 タイヤのパンクを笑った子供相手に見せしめと称して機関銃を乱射した兵士の話なんて、まだ大人しい方だ。


 そんな彼等が共通して黙っていたことがある。


 ヒューストンのどこに米軍兵士が隠れているか。


 これだ。


 ヒューストン港へ通じる道は、そのほとんどが中華帝国軍により封鎖されている。

 市民の多くは港に用事はない。

 あるとしたら、それは軍の用事がある者達だけ。

 そんな連中の中にも、彼等は紛れ込んでいた。



 早朝。


「よし―――通れ」

 中華帝国軍の検問所で、若い兵士が通行証を返してくれた。

「どうも」

 小さく会釈したのは、ハンチング帽を被った老人。

 口元を白い髭が隠している。

 彼が運転するのは、オンボロの牛乳運搬トラック。

 彼が経営する小さな牧場にとって大切な商売道具だ。

 今、港湾管理施設へ牛乳を納入する仕事についている。

「やったなオヤジ!」

 助手席に座る息子が嬉しそうに顔を紅潮させた。

「こいつはスゲエ!」

「ジョン。黙れ」

 彼はしかめ面したまま、息子を窘めた。

「一番恐いのはここからだ」

「大丈夫だよ!」

 息子は自信満々に言った。

「牛乳の自販機、この前わざと故障を見逃しておいたんだ。このタイミングで壊れてくれたのは、俺の功績だぜ!?後は、あの施設の近くのマンホールの上、ドンピシャで車を止めればいいんだ!」

「配送歴はお前の歳より長いが……な」

 興奮する息子を前に、彼は鼻を鳴らした。

「こんな曲芸じみた配送は初めてだ」


 いつも通りの角を曲がり、目的地へと向かう。

 ちょっと前まで、港湾関係者が盛んに行き交い、活気があふれていたというのに、今では厳めしい兵士達があちこちに立っているせいで、活気もなにもあったもんじゃない。


「あっ!」

 息子が声を上げたのは、最後の角を曲がった時。

 息子が驚いた理由は、彼にもすぐわかった。

 港湾施設前に止められた軍用車に気付いたからだ。

 しかも、兵士達がその前に銃を持って立っている。

「お、オヤジ」

 息子が震える手で彼の袖を掴んだ。

「落ち着け」

 彼は叱るように言った。

「こういう時は、脅えた方が負けだ」

 彼は、極めて落ち着いて軍用車の前に車を止めた。

「民間人が何の用だ?」

 最悪なことに、軍用車には「憲兵」というプレートがついていた。

 彼は漢字は読めないが、人の良い兵士がMPの意味だと教えてくれて以来、このプレートのついた車には近づかないようにしていた。

 彼がドアを開くより先に、隊長だろう随分と尊大な男が彼に尋ねた。

「その」

 彼は通行証を提示しながら言った。

「牛乳の業者でさ。旦那」

「牛乳の業者がこんな時間に何の用だ」

「販売機が壊れたと苦情がありましてね?修理もですけど、痛んだ商品の回収と交換もやろうと」

「ふん。アメリカ製の牛乳を飲む物好きがいるのか?」

「おかげさまで、ご愛顧いただいております」

「俺も実家は酪農をやっている。俺の牧場で生み出される牛乳に比べれば、どうということはないだろうがな」

「……おっしゃる通りでしょう」

 カチンと来たらしい息子を押しとどめ、彼は頷いた。

「そんな品で申し訳ありませんが、収めさせていただいて構いませんか?」

「ふん」

 隊長は乱暴に通行証を突き返すと言った。

「さっさと済ませろ」


 憲兵達が見守る中、カーゴのドアを開く。

 カーゴの中には背丈より高く牛乳を入れるカゴが積まれている。

「配達の途中でズルしましてね」

 男は、空のカゴをカーゴから取り出しながら釈明した。

「ジョン、俺が空のカゴを下ろしているから、お前、先に行って自販機の修理にかかれ」

「わかった」

 息子は頷くと、工具箱を手に施設へと入っていく。

「はい、ごめんなさいよ」

 男はそれを見送りながら、空のカゴをトラックの左右に積み始めた。

「瓶の入ったヤツを降ろす関係で、後ろにゃ置けませんもので」

「その前に」

 カーゴの中を眺めた隊長が言った。

「この音は何だ?」

「こいつは保冷車でしてね。冷却装置の音です。止めるのは勘弁してください?一度止めると中の牛乳がダメになっちまう。酪農家にとって、納入前に牛乳をダメにされるなんて、そんな殺生な」

「……まぁ、いいだろう」

 隊長は頷くと、彼が卸し始めた牛乳の入ったカゴから一本を引き抜き、踵を返した。

「さっさと済ませろ」



 マズいだなんだのと罵声を喰らわせてくる隊長の捨てぜりふを背中で聞きながら、カーゴの中で作業を続ける男は、カゴに向かって独り言のように言った。

「行きましたぜ?幸運を」




●ヒューストン港湾施設 地下トンネル

「ううっ……寒かった」

 スウェットスーツ姿の男が、震える仕草をした。

「冷蔵車の中って、要するに冷蔵庫の中だからなぁ」

「黙れ、スワル。それでも栄光あるシールズか」

「……へい」

「この作戦は、貴様は挽肉機に放り込まれるようなものだと言っていたが、訓練校に比べたらどうということはないぞ」

「そういうもんですか?」

「新兵たるお前をここに連れてきたのは間違いだったと、俺に言わせるな」

「……はっ」

「目標は海上の石油リグだ。ヴァチカン経由で入手した情報だと、中華帝国軍は港にあったリルシップ式石油リグを改造、ゲートの管理施設として使っている。

 先のハリケーンで地上施設がやられた経験から、海の方がいいと判断したらしい。リグを吹っ飛ばすのは簡単だといいたいが、そうもいかん。だから、俺達がリグの制圧に動く。わかってるな?」

「職員もすべて殺傷。ただし、事を荒立てるなと」

「そうだ。全てはリグの外に知られないようにする必要がある。それこそ、我々シールズの務めとして相応しいだろう」

「……はい」

 スワルと言われた男は顔をくしゃくしゃにして喜んだ。

「腕が鳴ります」

「よし」



 ヒューストン海上に浮かぶ巨大なゲートは、巨大な円筒形の物体を半分海に沈めたような格好をしている。


 これがあるからこそ、中華帝国軍は上海からヒューストンまでをわずか数分で行き来することが出来るのだ。

 そのゲートを管理しているのが、少し離れた所に浮かぶリルシップ式、つまり、船の形状をした石油リグだ。

 ヒューストン港陥落時、メキシコ湾の油田調査にむけて出港準備中だったこの不運なリグは、中華帝国軍に接収された後、別に使われるでもなく放置されていたのだが、先のハリケーンの影響で地上施設が破壊されて以降、ハリケーンを乗り切ったことからゲート管理施設の基地として着目された。

 今では上部構造物のほとんどを覆うドーム状施設のため、兵士達からは別名で“饅頭マントウ”と呼ばれているし、外見は水に浮かぶドームに近い。


 とはいえ、改装を受けたのは上部構造だけ。

 その元は変わるところはない。


 米軍はそこに目をつけた。


 スワル達は2チームに別れてテキサス州に空挺降下によって潜伏した後、レジスタンスに合流。

 その一人である牛乳業者の協力の下、この施設へと侵入することに成功した。

 下水施設であるトンネルを抜けて海へ出る。

 まだ日の明け切らない薄暗い中の移動だが、夜明けを待っていたら的を呼び寄せてしまう。


 全てが時間との勝負だ。


 ひんやりとする海水の冷たさを感じながらスワル達は海に出た。

 シールズの養成校を出たばかりのスワルにとっては日頃の訓練と何も変わるところはない。

 暗い潮の流れを感じながら、魚の群をかき分けて石油リグの下に出た彼の先頭を行くマグダル隊長が上を指さした。

 リグの下を構成する無骨な鉄骨の間を縫って、慎重に浮上を開始する。

 ここで勢い余って音を立てようモノなら作戦は失敗。教官達より厳しい叱責が待っているどころではない。

 音を立てずに海面に出た。

 ビンゴだ。

 すぐ間近に歩哨がいる。

 数は二人。

 中国語はわからないが、暇つぶしの雑談にふけっているらしい。

 スワルは慎重に移動を続けた。

 未だに歩哨達は自分達に気付いていない。


 大丈夫。

 

 スワルは自分に言い聞かせた。


 大丈夫―――自分を信じろ。


「スワル。タイミングは任せるが、同時にやるぞ」

 マグダル隊長から短い通信が入る。

 スワルは音を立てず、左手で歩哨達の立つ床を掴むと、歩哨の腰に手を伸ばした。

 視線の端で、別な歩哨が海へ引き込まれるのが見えた。

 歩哨を掴んだまま、スワルは海へと戻った。

 何が起きたか分からず、必死に足掻く歩哨ののど元へナイフを突き刺し、引き抜く。

 パッと、烏賊が墨を吐いたように水中に黒い血煙が上がり、彼は歩哨から手を離した。

 力を失った歩哨が暗い海の底へと消えていくのを見送ることもせず、彼は海面を目指した。

 スワルが海面に出た時には、先に浮上していたチームメイトが彼に手を伸ばしてきた。

 無言で手を伸ばした彼は、床へと引き上げられた。

「こちらホテル6。ポイント1にて敵2名を始末」

 マグダル隊長の通信を聞きながら、スワルは銃を準備した。

「ポイント2に移動開始」

「了解した。ホテル6」

 こういう時、シールズは無駄な号令は出さない。

 マグダル隊長のハンドシグナルを確認したスワルは、音を立てずに隊長のフォローに回った。

 鉄製の階段を警戒しながら登って行く。

 発電機だろう重くのしかかるような音が耳に響いてくる。

 上に上っているのに、まるで天国へ通じる気がしない。

 13階段を上っているかの如き錯覚に、胃が痛くなる。

「タンクの影に敵」

 誰かの声がした。

「交戦を許可。ただし、消音兵器を」


 手すりから身を乗り出して下を見ている兵士がいた。

 スワルはサプレッサーをつけた小銃で彼を捉え、トリガーを引いた。

 頭部に命中した一発が、彼を奈落の底へと突き落とした。

 人が目の前で殺されたというのに、スワル達の仲間は何も頓着することさえせず、先を進む。

 警戒する兵士達がほとんどいないことは事前の情報として知らされていたが、これ程の重要施設にもかかわらず、どうしてこうも手薄なのか、スワルはふと考えた。


 ―――下より上を警戒している。


 それが、彼の答えだった。

 つまり、上に行けばわんさと兵士達がいる。

 冗談じゃない。


「第二関門だ」

 マグダル隊長が指さしたのは、“休憩室”と書かれたプレートが張り付けられたドア。

 隊長とスワルがドアの両脇に立った。

 ノブはスワルの方にある。隊長と目配せしたスワルがノブに手を伸ばしたそのタイミングだ。


 ガチャ。

 

 音がしてドアが開いた。

 ドアの向こうで、若い兵士がびっくりした顔でこちらを見ている。


 声をかけるより早く、スワルは銃のトリガーを引いた。

 呆然とした顔の兵士が被弾のエネルギーに吹き飛ばされ、ドアから遠のく。

 スワルはドアを掴むとすぐに室内に飛び込んだ。


 えっ?


 居合わせた中華帝国軍兵士達の声をまとめれば、この言葉で足りるだろう。

 唖然とした顔の兵士達が、次々とスワルやその仲間達によって射殺されていく。


「クリア」

「クリア」


 室内に続いたチームメイト達が室内の制圧を宣言。

 血と硝煙の匂いが立ちこめる室内を後に、彼は再び隊長のフォローとして階段へと飛び出した。


 階段とステップを3つ回った時、隊長の足が止まった。


 それまでと違って、設備が新しい。


「ここからだ」

 隊長は言った。

 そう。

 お目当ての管制室だ。

 ここを制圧すれば、ゲートを制圧できる。


「―――下手な発砲はするな?設備に傷を付けたらそれこそ終わりだ」


 スワルは無言で頷いた。


 隊長が胸ポケットに仕舞っていたメモ書きに書かれていたパスワードを入力。

 電磁ロックはそれで簡単に開いた。

 警戒が手薄にも程がある。

 普通の建物だってもう少し。

 奇妙な憤りさえ感じながら、スワルは室内へ飛び込んだ。


 そこは見慣れないパネルや計器類が並ぶ空港の管制室のような室内。

 海軍ならCICを連想させるような造りだった。

 ここで発砲したらどうなるか。

 それは、彼にもわかった。


 突然の乱入者が誰か分かったんだろう。

 管制室にいたワイシャツ姿の男達が恐る恐る手を挙げた。

「カイト、外へ連れ出せ」

 銃で威圧しながら隊長が言うと、カイトと呼ばれたチームメイトがスワルの脇をすり抜け、脅える男達を管制室から外へ連れ出した。

「さて。新米のお前をどうしてここに連れてきたかは、これでわかったろう?」

 隊長は自信満々に言った。

「……ええ」

 スワルはニコリと笑った。

「こいつは、コンピューターに強くないと勝てない」

「事前情報は読んでいるな?」

「ええ」

 ポキリポキリとスワルは指を鳴らした。

「目を潰されたって、やってみせます」

「上等だ。何分で出来る?」

「60―――いや、30分」

「安心しろ。俺は慈悲深い。10分でやれ。すでに“ゲスト”は移動中だ」

「……了解」

 スワルが椅子に座り、キーボードに手を伸ばした時だ。


 ―――俺達は戦闘員じゃない!

 ―――降伏する!だからっ!


 通路から聞こえてきた命乞いと悲鳴は、耳で聞き流すだけにした。





 牛乳配達の業者を送り出した港湾施設職員は、海上に浮かぶゲートを苦々しく睨み付けた。

 チンク共に言い様にされているが、いつかは見てろよ!

 ゲートを見るたびに沸き上がってくる憎悪を心地よくさえ感じる彼の目の前で、ゲートの筒の中の空間が真っ黒に歪んだ。

「何だ?」

 彼は、眠そうにしている同僚の肩を叩いた。

「おい、見ろよ」

 ゲートの異変に気付いたのは何も彼だけではなかった。

 窓の外から見ると、兵士達も気付いたらしい。ゲートを指さしたり、走り回ったりしている。

「……なんだ?」


 彼が見守る中。

 ゲート内部の空間が元通りになった。

 ホッとする彼の前で、ゲートを潜ってきた船団の舳先が現れようとしていた。


 舳先に掲げられた旗が、朝日に映えて輝いてさえ見えた。


 それは、中華帝国船籍を示す、黄色の旗ではなかった。


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