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間違いだらけの作品論  作者: ミン
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画面越しのキエフ


 ロシアがウクライナに軍事進行している。

 2022年3月4日現在、衝撃的なニュースと映像が毎日飛び込んできている。


 新型コロナウィルスが人類文明に打撃を与え、そうかと思えば、今度は大国が核兵器をちらつかせながら他国へ攻め込んでいる。「平和」というのは、文明史的に見れば、流れ星の光る一瞬の出来事のような、ある種奇跡のようなものなのかもしれない。


 思えば、アメリカでは9,11の同時多発テロがあった。イラク戦争があった。そして日本人には、3,11東日本大震災。それから、二年前、人類は新型コロナウィルスに遭遇した。そして今まさに起こっているのは、ウクライナでの戦争だ。


 当たり前のように思っていた「平和」は、実は当たり前ではなかった。

「覚悟を決めろ」「現実と向き合え」――このたった十年間の歴史に、そんなことを突き付けられているような気がしてならない。戦争は、話し合いで解決できるという理想論がある。平和な場所では、それがさも「現実」のように受け入れられる。しかしもう、平和な日本人だって気づき始めている。なぜなら、日本の中にあった「平和」が、今や、崩れかけようとしているからだ。それでも平和だと信じ込みたくて縋りたい、確かに、私もそう思う。しかし「現実」を見なければならない。


 ロシアは核兵器を持っている。

 ロシアが、なりふり構わぬ大破壊をする可能性は、果たして、万が一などという低い確率だろうか。


 それはともかく、私は、「世界はどうする、プーチンは――」と、この戦争の動向が、そんな主語で語られることを好まない。好まないというより、むしろ、「どうする」と問われているのは、日本であり、そして「私」であるように思っている。「この戦争、貴方はどれほどの覚悟を持って戦えますか」と。仕事を失う覚悟がありますか、社会的身分を失う覚悟がありますか、私財を失う覚悟がありますか、命を失う覚悟がありますか――どこまでできるんですか、と。


 恐らく、直接戦闘に突入する覚悟がなければ、日本はロシアの軍事侵攻を止めることはできないのではないだろうか。死ぬ気でもがく相手を仕留めるのには、こちらも相応の覚悟で挑まなければ。「獅子は兎を狩るにも全力を尽くす」という。そうしなければ、窮鼠猫を噛む、という言葉にある通り、手痛い一撃を――場合によっては致命的な一撃を受けるからだ。そしてロシアは、ネズミや兎ではない。


 今世界中の民主制を敷く国々は、暴れ回る一匹の巨大マンモスを囲っている。日本も手に竹槍を持って。マンモスがどこまで暴れるか、それはマンモスにしかわからない。しかし自分の覚悟は、自分で決められる。「その時」が来てしまったなら、マンモスの足元に歩み出で渾身の一刺しを食らわせてやる、という覚悟を持てるかどうか。マンモスだって、自分を殺そうと囲んでいる奴らの面構えくらいは、見ている事だろう。狡猾なマンモスは、きっとその覚悟の隙を見逃さない。


 戦争はいけない、人殺しはいけない――その平和教育、平和哲学のさらに奥に分け入ることを、もう恐れるべきではない。どんなに理想を掲げても、お花畑のファンタジーを頭に描いても、モニター越しのウクライナの町には、今日もミサイルの雨が降り、戦車のキャタピラー音と、乾いた銃声が聞こえてくることだろう。

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