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間違いだらけの作品論  作者: ミン
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『シグルリ』のミコとアズズ ~セリフ回しのお手本~

終わってしまったシグルリのオープニングテーマ『Higher’s High』にも、琴線に触れる鋭い言葉があった。「守りたいもの 守れないもの」と「痛みさえも強さにして」という言葉、これはなかなか、グサりとくる。「痛みさえも力にして」ではなく「強さ」とした所なんか、センスを感じる。案の定本編も、面白かった。作り手側が、細部までこだわっているのが良くわかる。ぱっと1シーン見た瞬間、セリフを聞いた瞬間、そういうこだわりというものは見ている側に伝わるものだ。――と、思うのだが、ネットのアニメ好き界隈の反応はさほどふるっていない。一体何を観てるんだ! と、言いたい。


明日に決戦を控えた中、夕焼けのベンチでのミコとアズズの会話があった。ここのセリフ回しは、ラノベのお手本のようだ。

「アズって、ホント泣き虫だよね」

「弱虫でごめん……」

「アズは泣き虫だけど、弱虫だったことは1回もないよ」

「ウチは怖い」

「私も怖いよ。おあいこ」

「こんな重たい責任、背負えない……」

「じゃあ、半分こしてあげる」

「――次の戦い、死ぬかも」

「かもねー。でも、アズが死ぬときは、私も死んでるよ。天国でも、朝起こしに行ったげる」

「お前は声がデカいから嫌だ。優しく起こして。そしたら考える」


と、この素晴らしさを知ってほしくて書き出してしまったが、書き出すと、いっそう良いものだと思う。なかなかこういうセリフ回しは、できるものじゃない。上辺だけのプロフィールや関係性を書き連ねるような作品が多いが、本当に優れた書き手は、セリフ一発で全部を表現してしまう。そういうことが、よくわかるシーンだ。


北欧神話の設定とか、「ピラー」なんて存在が安直だ、なんて批判もあるかもしれないが、作品の良さというのは、設定ではない所にある。完璧な舞台装置があったとしても、演じるのが大根役者では意味がない。逆もしかりで、多少舞台に粗があったとしても、役者が役者なら、その劇は素晴らしいものになる。視聴者馬鹿にするな、というものが多い中、この秋は良い作品に巡り合えた。

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