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パワー・オブ・ワールド  作者: ふくあき
ー超えていくべきもの編ー
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第一章 第二話 存在の証明

「なんでアンタって問題をひとつ解決したら必ずひとつ問題を引っ張ってくるワケ?」

「知らねぇよ少なくとも今回は俺のせいじゃねぇっての」

「それにしても、未来から来たっていうのは流石に信じられないかな……」

「しょうたろーがパパ……? それってどういうことだおねぇちゃん? えっ? おねぇちゃんも分かんない?」


 その場にいる誰もが、一人の少女の主張の意図を理解できずにいた。というよりも理解を拒んでいるといった方が正しいのかもしれない。

 詳しい話を聞く為に穂村の家に集まった少女達であったが、目の前の銀髪の少女の自己紹介に半信半疑のまま。


「だから! 何度も言ってるんだけど、私の名前は穂村ジュンといって、未来ではれっきとした穂村正太郎パパの子供なの!」

 自らを穂村正太郎の娘だと名乗る少女は、曰く未来からやってきたのだという。見た目は穂村よりも年上の女子大生の様子であるが、その理由も未来から来たのだから年齢の前後の説明も一応はつけられるようにはなっている。


「……だ、そうだけど? アタシは納得いかないわ。大体正太郎は黒髪だし、この場に(同年代で)銀髪の子なんていないし」

「もしかして染めてる?」

「これ? これは地毛よ」

「だったらなおさら意味不明じゃない! 結婚するならアタシか子乃坂さんだろうし」

「…………」


 確かに、今の穂村正太郎にとって、同年代でこの髪色の少女と出会った覚えなどない。しかし説明し辛い本能とでも言うべきか、この少女と自分には何かしらの繋がりがある――それだけは確信を持つことができていた。


(なんつーか、この前まで『傲慢(アッシュ)』を通して自分を見てきたから、目つきが似てるといえば似てるか……?)


 切れ長と言うべきか、常にガンを飛ばしているとでも言うべきか、いずれにしても目つきの悪さは確かに穂村正太郎から受け継いでるように思われる。そしてその見え隠れする横暴さもまた、過去の自分を見ているようでうっすらとした同族嫌悪を感じさせる。


「……とにかく、現状では俺にそんな髪色の知り合いはいねぇが――」

「そういえばおねぇちゃんと髪の色がいっしょだ! もしかして同じ研究所だったのか?」


 ここでまさかのイノの一言が、事態を急転させる。


「えっ!?」

「(やっぱりあり得ないとは思っていたけど)まさか……」

「ハァ!?」


 確かに指摘されて初めて気が付く共通点。穂村ジュンを名乗る少女と、イノにとって双子の姉に当たるオウギの髪の色は、確かに同じ色。


「……アンタまさか、マジでロリコ――」

「違ぇから! っつーかこのくだり以前もしただろ!」

「髪は同じでも、目の色が違うっておねぇちゃんが言っているぞ。確かに本当だ!」


 金色の瞳――確かにオウギとは違う色で、当然穂村とも異なっている。仮に穂村が能力を発動させた時の色を考慮したとしても、その色は赤、もしくは蒼になっている筈。


「ってことは、オウギちゃんとも違うって事かな……」

(よかったー……これでオウギちゃんで確定しちゃったらどうしようかと思った……)


 ホッと胸をなでおろす子乃坂であったが、それでもまだこの事態に納得はいっていなかった。


(それにしても、未来? そんなことあり得るの?)


 いくら力帝都市が外の世界とは違う何でもアリな都市だったとしても、未来から人がやって来るなんてSFの極みみたいなことがあり得るものなのか。そしてそれは子乃坂だけではなく、力帝都市に長い間Sランクへの関門として君臨してきた時田にとっても前代未聞の話。


「それにしても、未来って……嘘はついている様子はなさそうだけど」


 ここまで観察を続けてきた時田の眼にも、穂村ジュンが嘘をついているようには観えない。そのことから少なくとも彼女がそれを信じ切っているのか、あるいは――


「――マジに未来から来たのなら、一つ聞かせて貰えるかしら」

(というか、最初からこれを聞けば終わってた話よね)


 そうして時田は目の前の娘を名乗る少女の真偽を確かめるのに一番クリティカルな質問を投げかける。


「? 私に答えられる範囲なら」

「直球で聞くわ。正太郎は誰と結婚したの?」

「えぇっ!?」

「ブッ!?」


 そもそも娘だというのであるのなら、母親だっている筈。そしてその答えを返せない限りは、彼女が未来から来た証明にはならない。


「なっ、おまっ、何言ってやがる!?」


 吹き出してしまったお茶を拭いながら、穂村は時田の方を見て「マジかよこいつ」といった様子で目を丸くする。


「結構真面目な話よ。だって父親がアンタなら母親だって当然いるし、こっちで勝手に推理してたけどそもそも聞けばいいってだけの話だし」

「それは……」


 それまで流ちょうに話していたジュンの口が、一気に言葉を詰まらせていく。そこには何か隠し事があると素人目にも分かるほどの焦燥を前に、穂村もまた疑惑の目を向ける、


「……()()()()のか、()()()()のか、どっちだ」


 そもそも未来から来たことが嘘だから言えないのか、はたまた未来から来たからこそ言わないのか。


「……今は()()()()。でも、私がパパの娘だって事だけは、信じて欲しい」

「……そうかよ」

(そう、今の私には言えない。言ってしまえば――)


 ――私はこの場に存在することを許されなくなるから。

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