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パワー・オブ・ワールド  作者: ふくあき
―罪滅ぼし編―
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第十章 二十七話 Shapeshifter

「――俺の真似、してんじゃねぇよッ!!」

「てめぇこそ誰の許可得て俺の真似してやがんだ、あぁん!?」


 ――蒼対蒼。ここまでは全くと言っていいほど互角な火力でのぶつかり合いだった。


「おい! 後はお前でカタをつけとけよ!!」

「はぁ!? おい、てめっ! どこ行きやがる!?」


 そしてこれ幸いとばかりに緋山はその場からの離脱を狙っていた。その理由は当然、夕飯の準備を間に合わせる為と、もう一つ。


「悪ぃがちょっと連れて行かなきゃいけねぇ奴もいるんでな! それとも俺がそいつを始末してやらねぇと無理か!?」

「無理とは言ってねぇよ! この状況を説明も無しに逃げてんじゃねぇって――」

「理由なら後で説明してやるから、ひとまずは自分のクローンと決着つけるんだな!」

「なっ、クローンだと!?」


 改めてそういう目で見れば、納得のいく瓜二つぶり。しかし違いとなって表れているのは、相手の発言や行動が僅かばかりに自分とは異なる点。表面上は同じようになぞっているように見えても、どこか薄っぺらさを感じるのはその為か。

 そして発言を聞いていたのはクローンの方も同じだが、あくまで自分ではなく相手がそのクローンじゃないかと口にする始末。


「へっ、てめぇがクローンの間違いじゃねぇのか?」

「俺がクローンな訳ねぇだろうが。俺の真似事しながら、あんな雑魚相手に手間取りやがって――」

「あぁ!? 聞こえてんぞ穂村ぁ!」

「いいからさっさと失せるなら失せとけ緋山ァ! 巻き添え喰ってぶっ殺されても文句言えねぇからなァ!」

「ちっ……後でぶちのめしてやるからな」


 魔人からの宿題を優先するべく燃える髪の少女を探しに姿を消す緋山と、代わりとなって立ち塞がる穂村。最初は緋山を目で追ってはいたものの、クローンの穂村はまず目の前に立つ同じ姿で同じ力を持つ少年へと意識を集中させていく。


「炎熱系最強をぶっ倒す前に、まずはそっくり真似事してやがるてめぇからブチのめすか」

「奇遇だな。俺もてめぇをブチのめしてぇって思っていたところだ」


 そうして鏡合わせに立つ二人の穂村の周りの空気が、少しずつ陽炎のように熱を帯びて歪んでいく。


「…………」

「……っ!!」


 初手、右の拳によるクロスカウンター。

 互いの頬に、深々と燃える拳が突き刺さる。


「っ、面白れぇ……!」

「考えることも同じってのは、楽でいいなァ!」


 同時に後ろへと下がり、両足からジェットエンジンの様に勢いよく炎を噴射させ、両名は空を飛ぶ。そして互いに距離感を測りながら、戦いは空中戦へと発展していく。


燗灼玉レッドボール!!」


 互いに燃え盛る火の玉をばら撒いて、撃墜を狙う。しかし戦闘機の様な高速移動をするが為にそれらは全て回避され、残された建物が破壊されていくばかり。

 次々と爆発が起こり、建物が倒壊していく中、両者は再びぶつかり合う。


「オラァッ!!」

「ハァッ!!」


 空中に青い軌道を残しながら、ぶつかり、離脱し、そして再びぶつかり合う。そうした空中での殴り合いも全く互角のまま、戦いは続いていく。


「っ、マジで互角ってことあるかよ!?」

「知るかよんなもん、てめぇがそれだけ俺にそっくりって事だろう、がッ!!」


 ここに来て遂に、均衡が破られる。殴ると見せかけたフェイントで正面をガードさせ、ブーストで加速させた蹴りを鳩尾に叩き込む一撃は、クローンの穂村を文字通りくの字に折り曲げていく。


「ぐへぁっ!?」

「俺を名乗っておいてこの程度のフェイントに引っかかってんじゃねぇよ、雑魚が!!」


 そのまま丸まった背中に両の拳を上から叩きつけ、穂村はクローンの自分への格の違いを知らしめるかのようにのように地面へと叩き落としていく。


「…………」

 ――“……なぁ”

「言われねぇでも分かってる」

こいつ(クローン)が俺であって、俺じゃねぇって違和感があることぐらいな)


 それはクローンだから、というよりも穂村正太郎として欠けている何かがあるから、という漠然とした思いつきでしかなかった。しかし仮にこのクローンの穂村を時田が見たとして、自分と思い込んだりするだろうか。子乃坂と鉢合わせたとして、自分だと騙されたりするだろうか。

 ――否。そんなことはないと、理由は言えないままに、穂村はそう思ってしまう。


「ゲホッ、ゴホッ……っ、偽物のくせに、やるじゃねぇか……クソッ」

「…………」


 血を吐きながらなおも立ち上がろうとする穂村クローンの前に静かに降り立つと、穂村は一言、問いを投げかける。


「……てめぇはどうして、最強を目指す?」


 かつての自分も最強を、Sランクを目的として戦っていた。

 最強という称号が欲しくないといえば、嘘になる。だが穂村にとってはそこが到達点ではなく、その先にある目的を持っていた。

 そして今、穂村はあることを確認する為に、自分自身が持っていた目的を問いただすかのように、クローンへと問いかける。


「最強になって何になる。緋山を倒した後、てめぇは何をする?」

「ぺっ! ……何ってそんなもん決まってんだろ」


 血の入り混じった唾を吐き捨てながら、クローンの穂村は当然とばかりに答えを返す。


「――この力帝都市で最強ってことは、外の世界でも最強って事だろ? 俺はただ、てっぺんを目指してぇだけなんだよ!」

「……なるほどな」


 ――てめぇは穂村()じゃねぇって事が、これではっきりしたみてぇだ。

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