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パワー・オブ・ワールド  作者: ふくあき
―罪滅ぼし編―
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第二十話 炎による包囲

「――珍しいですね。キミが僕を頼るなんて」

「こういうのは秘密結社で働いたことがある人間に頼るのが一番だろ」


 第十二区画の一角にある、とある病院。負傷した炎を操る少女がいるであろう場所の前に、再び緋山励二は立っていた。

 そして今回は助っ人として、緋山と同じアパートの住人であり、かつては穂村と敵対したこともある少年、之喜原のきはらすずめがその隣に立っている。


「事前に調べがついている筈だが……」

「この先に病院があるというのは、いささか無理があるでしょうね」


 科学が発展したこの区画、土地のほとんどが舗装された道によって綺麗に整備され、他の区画では見られない近未来的な街づくりが区画全体でなされているのが大きな特徴である。

 しかし二人が見やる視線の先――夕日の当たらない裏路地、そして不規則に点滅する街灯。同じ近未来的な構造物でできていたとしても、ここまで印象は変わるものなのかと思える程に退廃的に感じられる光景が奥まで広がっている。


「……仕方ねぇ、いくか」

「ええ。ここでくだを巻いたところで意味がないでしょうし」


 穂村がかつてイノとオウギを巡って敵対していた秘密結社、イルミナス。そこに所属していた之喜原。そして過去にイルミナスと類する組織と戦い、壊滅させた経験を持つ緋山。

 その両名が持っている勘のようなものが告げている。

 ――この場所には何かがある、と。


「それにしても路地裏か……」

「おや? かつて様々な相手にバトルを仕掛けた記憶でもよみがえりましたか?」

「それもそうだが……なんつーか、悪党っていつもこういう場所にいることが多いよなっていうのがな――って……」


 現時点で敵対と思わしき介入もなく、余裕もあってか雑談を繰り返していた緋山励二ら二人の前に現れたのは、かつてのAランクの関門。


「なんでこんなところにいやがる」

「…………」

「ちっ……答えねぇんなら、そこをどけ――」


 返事の代わりとなって返ってきたのは、地面を疾走する赤い焔。そして()()は続けざまにとびかかって、炎の拳を振り下ろす。


「っ、てめぇまさか、この怪しい研究に手を貸してるんじゃ――」

「問答をしている暇はないようですよ、緋山君」

 『人形(ドール)』の能力を活用して、小さな人形を操って攻撃を防いでいたのは、緋山と同じ方向ではなく、全くの真逆。


「先に聞いていた通り、アラミド繊維で織った人形を用意しておいてよかった――と言いたいところですが……どうやら、包囲されたようですね」

「ああ。それも気持ちの悪ぃ数の穂村バカ共にな」


 前方から更に三体、そして引き返そうにも後ろからも二体。そして屋根の上にはずらりと並ぶ穂村正太郎クローンの姿。


「なんだよ、あいつまさか分身の術でも使えたのか?」

「それは冗談で言っているという認識でいいのかい?」

「へっ、冗談の一つでも言わねぇと、笑えねぇだろこの状況」


 いくら何でも多勢に無勢。あの魔人から、ほんの数パーセントとはいえ力を引き出させた実力者が、今も数を増やしている。


「くっ……一対一タイマンなら訳ねぇかもしれねぇが……」

「どうします? 例の魔人に助太刀して貰いますか?」

「馬鹿野郎、その後のしごきを考えたら今の状況の方が万倍マシだ」

「クスッ、でしょうね」


 緋山とは違って、魔人にとって之喜原はあくまで緋山の友人その一。興味の対象とはなっていない。


「とにかく、この場を切り抜けるしかねぇか!」

「ええ、そうしましょうか」


 何もしなければただの燃えない小さな人形。しかし之喜原がそれを操れば、立派に人一人分以上の戦力と化す。


「おい! 人形何体用意してきたッ!?」

「ニ十体ほど! まあ、一人あたり二体で対応するとしても、残りの数を考えれば――」

「ああもうそれ以上聞きたくねぇ! もう増えやがってるよ!」


 あたりからぽつぽつと灯り始める赤い焔。右の拳が一斉に炎に包まれてゆき、その場は一瞬にして熱気に包まれる。


「ちっ! しょうがねぇ! 伏せてろ之喜原!」

「っ、先輩に対してなんて口をきくんですか、全く!」


 そう言いつつも之喜原はその場に丸くなるようにして伏せ、自身の体を更に人形によってガードさせていく。

 ――今からやろうとしていることなど、長年積み上がった関係で分かりきっている。だからこそ之喜原は、砂嵐に巻き込まれないように身を伏せている。


「研究所ごとイカれちまったら面倒だが、ここまでやらせたてめぇ等が悪い」


 緋山の体は徐々に砂と化してゆき、そして風に乗って渦を巻いていく――


「すべて砂でかき消えろ――D(デザート).D(デストラクション)ッ!!」


 炎を消すのに、何も水を使う必要などない。

 全ては砂嵐によって、かき消されていくだけなのだから――

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