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パワー・オブ・ワールド  作者: ふくあき
―罪滅ぼし編―
139/166

第九話 魔人との契約

「――っつぅことがあったんだが」

「えぇーっ!? Bランクの女の子相手にひどい! 火傷の跡でも残っちゃったらどうする気なの!?」


 第九区画――ここは多くの一般人(Dランク)が住まう、一般居住区画。第四区画のような第三区画(中心区近く)そばの能力者が住まう第四区画(場所)とは違って、電柱から何から都心部の最新のものとは異なり、少し古びたような、ここだけ少しだけ昔に戻っているような雰囲気が漂っていた。

 その中でも特別に戦闘を禁じられた区画――日中であろうが関係なしに規定によって戦闘禁止とされている区画に建つ一軒のボロアパートが存在する。

 ひなた荘と名前の付いた、見るからに年数経過の激しいアパート。そこがSランクの能力者、緋山励二が住んでいる場所だった。

 そして今回、住人全員が揃って夕食を食べることが多い大部屋にて、緋山は自分の彼女である澄田すみた詩乃しのに説教をくらっていた。


「でっ、でもよ!? 向こうから喧嘩をふっかけてきた上に、全然諦める気配がなかったんだぜ!?」

「だからって、もっと他に方法があったと思うんだけど!」

「そもそも会話も成り立たねぇからどうしようもなかったんだって……」


 彼を知る者からはよく「リア充死ね」といったような言葉が飛んでくるが、それも納得できるほどに、澄田詩乃はしっかり者で女子力の高い、理想の彼女といえるものだった。

 そしてそんな彼女と緋山の深い関係を語るにはあまりにも横道にそれてしまう為、ここで話を仕切り直しとする。


「つーか、なーんかあの雰囲気どこかで覚えがあるんだよなぁ……」

「えっ!? 何それ励二!? もしかして浮気!?」

「バッ、俺は詩乃一筋だっての!」

「ほっ……良かったぁ」

(そもそも浮気なんてしてみろ、あの魔人から千回ブチ殺されても文句は言えねぇぞ……)

「その通りだ緋山励二ぃ。ちょっとでも浮気してみろ、テメェが砂粒になろうが一つ一つ丁寧にブッ潰してやるからよぉ」


 それまでその場にいなかった筈の存在が、緋山励二に話しかける。残暑厳しい時期であるというのに黒のロングコートに袖を通した、白髪の男が大部屋の真ん中に置かれたちゃぶ台の上に座り込んでいた。


「あっ! 魔人さんってば、ちゃぶ台の上であぐらをかいちゃダメだよ!」

「どうせこの後緋山励二が拭くからいいだろ」

「はいはい、どうせ俺が後始末をしますよ」

「オイ、誰がテメェに稽古をつけてやってると思ってんだ? 「畏れ多くもやらせていただきます」ぐらい言えゴラァ」

「へいへい……」


 Sランク、つまりこの力帝都市において測定不能を意味する最強ランクの肩書を持つ緋山であるが、その緋山ですら魔人の前では大きく後れを取ることになる。

 市長とも皮肉を言いながらまともに殴り合える仲であり、なおかつそれもまだ本気ではないと自負する最強の『魔人』、それがシャビー=トゥルースという存在を現時点でもっとも適切に説明できる言葉であろう。

 そしてそんな魔人に対して平然と対等に言葉を交わす澄田であるが、彼女は魔人にとって、ある意味では特別な存在であった。


「澄田詩乃」

「ん?」

「何か緋山に不満があればすぐにオレに言えよ。コイツの反抗心なんざバキバキにへし折ってやるからよ」

「べ、別にそんなんじゃないってば! ちょっと心配しただけ!」

「……そうか、ならいい」


 緋山に対しては雑な振る舞いをする反面、澄田に対してはまるで保護者のような態度をとる。しかし緋山はこの扱いの差自体には文句を言うことはなかった。


「それで話を聞いていたんだが、そいつはどうやら別の病院に引き取られたみてぇだぞ」

「は? おかしいだろ。俺が見る限りだと別に大きな病院に行かなきゃいけねぇってくらい重傷って訳でもなかったし――」

「逆だ。更に小規模の病院に連れていかれた」

「……どういうことだ?」


 いくら重症ではないとはいえ、そしていくら力帝都市の医療技術が発達しているとはいえ、緋山は相手取った少女が一日二日程度入院することくらいは想定していた。しかし魔人の言い分によれば、入院すらできないような、町医者レベルの小さな病院に連れていかれたのだという。


「ってか、そこまで追跡したのならどうなってるのか教えてくれよ」

「教えてやってもいいが……オレとしては伏せておいた方が面白そうだから伏せておく」

「なっ!? だったら何でわざわざ気になること言ったんだよ!?」

「気になるか? 気になるよな? だったらテメェで足を動かせボケ」


 ケタケタと笑う魔人だったが、ある意味ここまでが毎回セットのやり取りだった。

 緋山励二に問題事を焚きつけ、解決できるかどうかの力をはかる。難易度はまちまちだが、場合によっては緋山(Sランク)ですら解決が困難な無理難題がふっかけられることもあった。


「一応区画だけ教えてやる。第十二区画だ」

「第十二区画……確か――」

「研究所が多い区画だよね? それってもしかして、研究所付属の病院だったりするんじゃない?」

「流石は澄田詩乃、賢いな」


 少ないヒントで正解にたどり着いた澄田に対して、魔人は素直な誉め言葉を送る。


「えっへへ……」

「流石に詩乃に甘すぎだろあんた……」

「その分テメェをきりきり舞いにするレベルで厳しくしてやってんだろうがブチのめすぞコラ」

「バランス感覚おかしいだろ……」


 保護者(魔人)に褒められたことで照れ照れとする澄田と、直後にまったくの手のひら返しで厳しい言葉を投げかけられてへこむ緋山。両名を見やったところで魔人は別の用事を思い出したのか、黒い霧のように姿を消していく。


「悪いが別件だ。また遊びに来てやっからな」

「魔人さん、またねー」

「ああ、それまで元気でいろ、澄田詩乃…………緋山励二」

「あぁ?」


 魔人は半分消えかかった顔に残された目で緋山を睨みながら、こう一言最後に告げた。


「俺は何時いつでも見ているからな……約束を違えるんじゃねぇぞ」

「……言われなくても、分かってるよ」


 それは保護者として、そして魔人として緋山励二に課した約束。これだけは、死んだとしても守らって貰わなければならない。

 それは澄田詩乃にとっての大切な人として、彼女の前では誰にも負けない、仮に魔人を相手取ったとしても負けることが許されない、『最強』であり続けること。これこそが緋山励二に課された、唯一にして絶対の約束だった。

 ここまでで書き溜め分投下完了ですが、不定期で週二更新頑張ります(`・ω・´)。

 ちなみに緋山励二と澄田詩乃の関係性ですが、こちらを本格的に知りたくなった方は同じ作品シリーズの「一般人の男の子でも反転すれば最強の女の子に!『チェンジ・オブ・ワールド』」(https://book1.adouzi.eu.org/n5921dm/)より血の繋がり編のEX1話から4話までをご覧になって頂けたらおおよそ把握できるかと思います。

 本格的に彼らの活躍などを知りたくなりましたら、更新を待っている間の暇つぶしとして、同作品を頭から見て頂けると幸いです(´;ω;`)。

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