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パワー・オブ・ワールド  作者: ふくあき
―罪滅ぼし編―
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序章 第一話 燻ぶる炎

「――被検体は二種類用意しておいた。いずれも既に最終調整段階まで済ませている」


 人一人入れる程の巨大な円柱形の水槽。透き通った青色の培養液に満たされた穗村正太郎――そのクローン体。今やAランクの関門という立ち位置ではなく、その力は未だに測定されていない未知の力を持つ少年と瓜二つの人形クローンが、一糸まとわぬ姿で浮かんでいる。

 その一方――穗村正太郎とは似ても似つかぬ黒の長髪の少女が、身体の至る所に薬液を流し込む為の注射器およびチューブを刺された状態で、椅子に座るような形で繋ぎ止められている。眠っているのかまぶたは閉じられているものの、苦痛か、はたまた悪夢でも見ているのか、その眉間にはしわが寄せられている。


「ふひっ、ふひひひっ! これでようやくち、近づくことができる! 『究極の力』、『究極の力(アルティメット)』にッ!」


 研究を続けてどれだけ寝ていないのか、目の下に深いくまを携えた女性が、病的な笑い声と共に興奮気味に早口で語る。


「なあ阿形!? そうだろう!?」

「うるさい……全く、ここに缶詰にされてから……いや、こいつと関わってからは碌な事が起こっていない……!」


 阿形夢次郎――またの名を、アダム。そう呼ばれる眼鏡の男は、クローン体の大元である穗村正太郎と浅からぬ因縁を持っている故に、水槽に浮かぶ少年を苦々しい思いで睨み付けている。

 かつては力帝都市内にて、二人の幼い少女を用いた『究極の力』に近づく研究を行っていた。しかし穗村の手によってそれが頓挫してからは、力帝都市の外にて別の研究を行っていた。


「挙げ句に『G(ゲット).E(エネミーズ).T(テクノロジー)』計画も、検体ごと数藤に持って行かれる始末……くそっ!!」


 そして力帝都市の外にて研究をしていたところでまたしても穗村から邪魔をくらい、気がついた時にはここでクローン研究を手伝わされている。

 そんな男が怒りをぶつけようにも、これまたその矛先を向けるところがない。なぜならばその憎たらしい元Aランクの少年のクローンを作る研究を主導で行っているのが、隣にいる怪しげな女なのだから。


「この研究さえ終われば、私は解放されるんだな?」

「い、い、い、一応そそそ、そうなるな。完成すれば、だが!」


 穗村正太郎――元は普通の人間として認識され、力帝都市外で生きてきた少年。規格外の堅固な骨格フレームをその身に秘めた、一見するとただの丈夫なだけの中学生。

 人より少しだけ荒々しい性格の、よくある不良少年。それがとあるきっかけにより精神的に大きなショックを受け、第二の力、発火能力パイロキネシス――『フレーム』という力を手に入れた。

 それからも、彼の力は増大し続けている――それは誰の目から見ても明らかなものだった。特に市長を相手に一発殴り抜いたという都市伝説がまことしやかに語られることになってから、その勢いは増すばかり。

 そしてつい先日のこと、阿形が手放した『G.E.T』との戦いにおいて、穗村正太郎は第一区画の限られた観戦者に対して、まさに市長に届きうる力の片鱗を見せつけている。


「ふひっ、ふひひっ……ふひひひひひっ! そそそ、そしてついでに、わわ、私のダーリンとして――」

「他人の趣味に口出しするつもりはないが、造った人間(クローン)に欲情するのはあまり良いとは思えないが」

「っ! じょっ、冗談に決まっているだろう!?」


 冗談とは思えないが――という言葉が喉元まで出かかったが何とか飲み込んだところで、阿形は話題を変えるかのごとく、椅子に座ったままの少女の方に近づいて様子の観察を始める。


「……こちらの方も、順調に統合が進んでいるようだな」

「ふひっ! そっちも結構自信作……何せ完全な無能力である一般的な人間を素体とした――」


 ――変異を加える実験の成果なのだからな。

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