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パワー・オブ・ワールド  作者: ふくあき
―データ争奪内乱編 後編―
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第九話 俺のものだ

 鋼鉄VS機械――純粋な硬度を持つ物質対、加工された兵器。

 右腕や背中の変形を重ね、目の前の『鋼鉄の男』を叩きのめす武装を模索する騎西だったが――


「金属の扱いで俺に敵うとでも思ってんのか? それは甘いんじゃね?」

「うるせぇよ! 諦めろと言われて諦めるほどこの騎西善人様は人間できてねぇんでなァ!!」


 徹甲弾。相手の堅固な装甲を撃ち抜くことを想定された弾丸を、騎西善人は機械の身体の中で精製する。


「まーた徹甲弾か。そんなものこっちの壁を分厚くすれば無駄だっての」

「そりゃただの徹甲弾ならなァ!!」


 ――騎西が砲弾として右腕に装填したのはただの徹甲弾では無かった。


「くたばれッ!!」

「なっ!? あっぶねぇ!?」


 ジャスティンが足元からせり上がらせた鋼鉄の壁は、それまでの二倍以上の分厚さを誇る強固な鉄壁だった。しかし騎西が放った砲弾は壁の表面で炸裂し、内部に仕込んでいた鋼鉄を上回る硬度を誇る金属の槍がジャスティンの頬の僅か数センチ横を通り過ぎていく。


「俺様特製の徹甲榴弾ってやつだ! 気に入ってくれたか!?」 

「くっ! 余計な知恵をつけやがって……!」


 相手は想像力次第でいくらでも攻め手を打つことができる。だからこそジャスティンとしては戦いの先読みをした上で早期決着を望んでいた。


「相手は機械、こっちは鋼鉄一筋。そろそろマジにやるか……!」


 ジャスティンは自分で作り上げていた地面の鉄棘をへし折ると、そのまま形状を変形させてある形を作っていく。


「ジャパニーズ・シュリケーン!!」

「……ふざけてんのか?」

「ふざけてるかどうか、その身で試してみな!!」


 極限までペラペラに仕上げたジャスティンお手製の手裏剣は、横から見る限りでの視認は困難なものとなっている。


「うおっ!?」


 僅かに聞こえる風切り音で反射的に回避には成功したものの、頬をかすめたそれの切れ味は凄まじいものだった。


「くっ、ざっくりいってんな……!」

「更に……ジャパニーズ・クナイッ!!」


 針状に尖らせた鉄芯をまばらに投げられるも、今度は右腕を大楯へと変形させることで防いでみせる。


「無駄だ無駄ァ!! そんなしけたモン飛ばしているくらいでこの俺が――」

「そりゃそうだろ。そんなもの時間稼ぎでしかねぇからな」

「ンだと……!?」


 大楯で自らの視界を遮った騎西は、この瞬間に対策をビットによる迎撃で選択しておけば良かったと後悔した。

 しかし後悔先に立たず、既に相手は僅かに与えられた時間を存分に利用して更なる戦闘形態を作り出していた。


「この俺が、本国でどんな異名で呼ばれているか知ってるか?」

「アァ!? んなモン知るかよ!」

「だったら今からみる姿がその通りの異名だ。俺は――」




 ――『鉄人スティーラー』だ。


 全身を鋼鉄に変え、更に周囲から鉄分を全て集めきる。

 周囲の鉄筋ビル全てを取り込んで出来上がったのが、周囲のビルの数倍の大きさを誇る巨大な鉄の像だった。


「……図体だけはデカくなったみてぇじゃねぇか」

「それだけじゃないぜ」


 巨大化したジャスティンの右腕は、まるで騎西を模倣するかのように変形し、巨大なキャノン砲を模っていく。


「俺の第二の力(セカンダリ)……敵の技は盗むことできるんだよ!!」

「何だとォッ!?」


 これまでのお返しが、巨大な砲口から放たれる砲弾となって返ってくる。


「くっ!!」


 とっさにそのまま出しておいた大楯で防いでみたものの、騎西を中心として巨大な爆発が巻き起こり、辺りに硝煙と血の臭いを漂わせ始める。


「……グハァッ!!」

「“ちょっと!? 貴方腹部に大ダメージを受けてるじゃない!! そのままだとナノマシンで修復されてしまうわ! この場は下がりなさい!”」

「うるせぇ、指示出してんじゃねぇよ……」


 出会ってかなりの日が経つが、数藤真夜はまだ騎西善人のことの理解が進んでいなかった。

 ――騎西善人という男の、『底知らずの執念深さ』を。


「尻尾巻いて逃げるだと……そんなもの、今の騎西善人様の辞書には載ってないんでなァ!!」


 今までのDランクとして地べたを這いずり回るような人生など、もう戻りたくはない。勝てない相手だからといって逃げ惑うような人生などまっぴらゴメンだ。


「――完全装甲形態フルアーマー!」


 大楯をそのまま変形させ、生身の肉体ヲ含めて全身を覆うフルプレート装甲を精製。

 更に――


蠍の尾(スコーピオンテイル)……!」

「おっ? それは確か俺を鎮圧させる時にアメリカの軍が使った兵器に似ているじゃねぇか」

「そうかい、だったらそれと今からもう一戦やれるぜェ!?」


 蠍の尾(スコーピオンテイル)から放たれる熱線の温度は三千度。鉄の融点どころか沸点すらも超える熱線を携えて、騎西善人は鋼鉄の翼で再び宙を舞う。


「チッ、あの熱線はまともに喰らいたくねぇなぁ!!」

「ひゃはッ! 消し飛びやがれェッ!!」


 まずは相手の武装をそぎ落とすべく、騎西は巨大化したジャスティンの右腕に向けて熱線を放つ。


「まずは右腕!!」

「ぐおぉっ!!」


 熱線によって切り飛ばされた右腕が、派手に吹き飛んでいく。

 それを見て騎西は戦法の有用性に確信を持ったのか、更に突貫するようにジャスティンの懐へと飛び込んでいこうとした。

 ――しかしジャスティンは、それを敢えて誘っていた。


「……そういえば真似する時に気がついたんだが、お前の身体って鉄でできてんだな」

「ッ!? まずいッ!!」


 気づいた時には遅かった。ジャスティンの身体はまるで騎西の突貫を受け入れるように、腹部に大きな口を開けている。


「取り込んで鉄を奪い取ってやるよ!!」

「っ!! クソォオオ!!」


 急ブレーキをかけようにも、既に尾と右腕がジャスティンの身体にめり込んでしまっている。

 自分の身体が、失われていく感触――騎西の右腕は、あの時のように失われようとしている。


「……嫌だ……俺の、手に入れた力が……」


 そしてそれはそのまま騎西の肉体の欠損へと繋がっていく。現時点で右腕、そして尾を通じて脊髄の機能が失われようとしている。


「あ、が……」


 脊髄の機能も失われ言語化も難しくなった騎西は、それでもパクパクと口を一定の規則にのっとって何度も何度も聞こえるはずのないある言葉を繰り返す。


 ――嫌だ。嫌だ。いやだ。

 俺のだ。俺のものだ。俺の右腕だ。俺の――


「――全部、俺のだッ!!」


 その時だった。

 騎西は自分のものを自分の意思で全てを逆に奪い返さんと、あるはずのない右腕に力を込めると――


「――なっ!? 引きずり込まれ!? うおぉおおおおおおおおおおおお!?」


 それまで鉄分だけを取り込んでいた筈のジャスティンは、逆に自分自身の力を奪われるかのような、何かに肉体の奥底になる中身のようなものを引き抜かれるような錯覚に陥る。


「くっそぉ!!」


 弾き飛ばすように取り込もうとしていた尾と右腕を吐き出すと、ジャスティンは巨大化した像の顔でもって苦々しいという表情を作り出す。


「何だってんだよお前はよぉ! さっきからバカげた変形もしやがるし、ただの改造人間サイボーグじゃねぇな!? お前も能力者か!?」

「俺は別に能力者じゃねぇよ……俺は能力者が嫌いな、ただの――」


 ――人間だッ!!

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