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パワー・オブ・ワールド  作者: ふくあき
―データ争奪内乱編 後編―
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第三話 Royals

 ――その戦いは、最初に一つの人影がレストランの壁をぶち抜いて外へと出てきたことが皮切りとなった。


「いってぇ……『アイツ』と戦った時の万倍の威力込めてんだろ……」

「当たり前でしょ? だってアンタ、関門じゃなくなったってことはアタシと同じAランクの土台に少なくとも立っている筈なんですもの。それなりに本気でやらせて貰うわ」


 それは今までにない時田マキナの本気宣言だった。穂村を一撃で外に追いやったのも、時間を極限まで留めてからの一撃で、その破壊力は今まで穂村に放ってきたものの乗数倍の威力を秘めている。


「ケッ、楽しませてくれるじゃねぇか――ガハァッ!?」


 起き上がりに重ねるようにもう一発。それは時田が初めて穂村に対して追撃をした瞬間だった。穂村の身体は更に十メートル程吹き飛ばされ、青の信号が点った横断歩道を派手に転がっていく。


「…………やるじゃねぇか」


 静かに上半身を起こした穂村が放ったひと言は、殺意というものでは無いにしろ、本物の闘争心が宿っていた。

 それと同時にもはや穂村にとってもお馴染みといえる防護壁が、区画一帯を隔離するかのようにせり上がってくる。


「ったく、壁なんて作らなくてもアタシが即刻終わらせてあげるのに」

「壁が要らねぇってのは同意見だ。もっとも、勝つのは――」


 ――俺だがなァ!!


「ッ!?」


 相手につけいる暇など与えない。時間を止めようが、何をしようが、触れられなければ意味が無い。


「――蒼蓮拍動ブルードライブ!!」


 最初から一切の手心を加えるつもりはない。『アイツ』の時には勝てなかった存在に、真っ向から勝ってみせる。その気持ちが穗村の全身を包む蒼となって顕現する。


「消し飛びなァ!!」


 それまでくつろいでいたはずのレストランごと、全てを炎に包み込んで消し飛ばす。

 火炎放射器などという生温い表現では到底言い表せない破壊力。そこら一帯だけがナパーム弾によって焼き払われたかのような惨状を仕立て上げておきながら、穗村は手応えのなさに顔をしかめたまま真っ正面を睨みつけ続けていた。


「……時田の能力じゃ精々十秒程度が精一杯のはず。だから――」


 ――相手の成長を考えることなく、時田が側頭部に拳を打ち込むまでに移動が可能というところまでを、穗村は計算していなかった。


「残念だけど、アタシもあれからちょっとだけ時間を止める練習重ねてもう少し長く止めれるようになったのよ!」


 しかし穗村は時間を止められることよりも、自身に万が一再び打撃が打ち込まれる可能性の方を考慮していた。


「なっ!?」


 時田は確実に穗村のこめかみを拳で殴っていた。殴っていたはずだった。

 しかし物理的に掴むことが出来ない炎に対して、殴るという行為は意味を成さない。


「雲を掴むような――ってか?」

「ッ!? 熱ッ!?」


 再び時間停止。試合中の一方的なタイムアウトを取れるのは、時田だけ。

 すぐに体勢を立て直すべく、時田は急いで穗村の元から離れていく。


「チッ……こうなったらどこに行ったか分からなくなるから面倒くせぇんだよな」

「――何なのよそれ、ズルすぎでしょ……!」


 物陰に隠れながら、時田は先程目の前で起こった事象を改めて確認した。

 確実に自分の拳は穗村の頭を捉えていた。しかしその結果は……炎の一部と化した穗村の頭を拳は通り抜け、停止解除の際には無意味だと片目で笑う穗村の姿を目にすることができた。


「発火能力じゃなくて、自分自身の身体を焔にできるなんて……これじゃあ直接攻撃は期待できないわね……炎なら酸素を奪うか、火種を潰すかの二択!」


 即座に戦闘パターンを再構築し、対策を即座に打ち出す。それが本来の時田の戦い方であり、Sランクへの関門たる実力の持ち主である。


「ケッ、何時まで隠れてるつもりだ……」


 対する穗村は力に自信があるのか、両足のジェットで空中に浮かび上がると、辺り一面を火の海に沈めるべく両手の指先に蒼い炎を灯し始める。


「「(フィンガー)(フレア)(ファイブ)……」


 炎は凝縮され、今にも炸裂しようとチリチリと音を立てている。


「まずは一振り、消し飛びなァ――ッ!?」


 突然、目の前のビルが跳ねるかのように地盤からもぎ取られ、中空へと浮かぶ。

 それに続いて二つ、三つ――次々と高層階のビルだけが剪定されるように中空へと打ち上げられ、辺りには異様な光景が出来上がる。


「――同時刻に複数箇所を蹴り上げれば、あとは力の関係でこうなることは明らか……でしょ?」


 そのビルのうちの一つ――空中で斜めに傾くビルの斜面の一つに時田マキナは立っていた。


「そして消火活動の一つとして……空気を遮断するために土で埋めたりとかって聞いたことない?」

「……なッ!? てめぇ! まさか――」


 ――次の瞬間、一斉に空中に打ち上げられたビルが全て穗村の方へと動き出す。


「それじゃ、押しつぶされて終わりってことで」


 時を止めてさえいれば、時田にとってはいくらでもやりようがある。ビルの破片を適当に蹴り出して空中で時間停止で留めれば、空中に浮かぶ足場が出来上がる。そうして時田は素早く何度も何度も時間停止を繰り返しながら地上へと降り立つと、ビル同士が空中で激しくぶつかりあう様を目にするべく上を向く。

 そして穗村の様子をうかがった後に、時間を止めて再びその場から一瞬にして姿を消していく――

 その最中、穗村は少しずつコマ送りのように近づいてくるビルを前に、僅かに与えられた隙間の時間で攻略法を考えていた。


「こうなったら自爆して一帯を消し飛ばすか……それしかねぇ!!」


 空でまばゆく輝き始める一つの蒼き焔。辺りから熱を奪い取るように、全ての焔が穗村へと収束していく――


「ッガァッ!!」


 ――刹那、蒼い衝撃波がリング状に広がり、それまで向かってきていたビルを全て弾き返す。


「……ハッ! この程度か、甘ぇんだよ!!」

「――甘いのはアンタの方だっての!!」


 爆風に乗って散らばっていく破片のその先――更に多くのビルが打ち上げられる光景が穂村の目に映る。


「何ッ!?」

「さっきのを見て、アンタの爆発の規模を“観察”させて貰ったわ! その調子だとこの建物の数なら難しくなってくるんじゃない!?」


 先程の倍、否、それ以上のビルが時田の蹴りによって再び打ち上げられる。


「更にオマケ!」


 ビルと違って軽々と蹴り上げられたのは、水が満タンに入った防火水槽――焼け石に水かもしれないが、それでもこの状況ではダメ押しとして十分。


「自爆チャージの前に防火水槽ぶつけられたらどうしようもないでしょ!」

「くっ……!」


 今までの輩とは違う、搦め手を使いこなす能力者。とっさに機転を効かせる知恵と、それを実現できるだけの力――時田マキナにはその両方が備わっていた。


「……やっぱてめぇは凄ぇよ。時田」

「何? まさか降参? まっ、今なら止めることも――」

「だがなァ、俺はそれを上回るくらい強くならねぇといけねぇんだよぉッ!!」


 先程とは段違いの収束速度。そして威力も更に桁違いのものだと理解できる程の光の筋が、瓦礫やビルの隙間から垣間見える。


「騎西をぶっ潰すためにも! あのクソッたれな市長をもう一度ぶん殴るためにも! 子乃坂も、ガキ二人も、てめぇ等も!……『アイツ』みてぇに守る為に!! 俺は誰よりも強くなきゃいけねぇんだよッ!!」


 自分の我が儘を通すために。自分の思い通りにするために。穗村らしい『高慢』さをもって強くなろうとしている。

 それが今の、穂村正太郎としての一つの答えだった――

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