第三章あらすじ
サヤに呼ばれて、カツミは目を覚ます。カツミとサヤは遺跡の奥の部屋におり、ディーは眠ったまま目を覚まさない。
部屋からの脱出方法も分からず、途方にくれていると、スケルトンが襲いかかってくる。残り少ない魔力を駆使しながらサヤと共に戦うカツミだが、ついに致命傷を負ってしまう。
倒れるカツミを見て、サヤは封印していた過去を思い出す。両親をオーク軍に殺されたあの日、サヤは初めて使った水の奇跡は間に合わなかった。両親を救えなかったことに絶望したサヤは、水の力を拒絶し、炎の使い手になったのだ。
だが、今度こそカツミを救わねばならない。サヤの思いは自らにかけた禁呪を解き、水の巫女としての力を解放した。
意識を失ったカツミは、夢で見た自分の部屋にいた。部屋にはフェンと、サヤによく似た少女がいた。
少女は自らを水の宝珠たる水神であると言い、ディーの存在に疑問を示す。曰く、妖精とは本来、エルフが作りだした人型のロボットであり、自我など存在しない。では、自ら思考し動くこのディーは何者なのだ?
そして水神はカツミを「プレイヤー」だという。他のプレイヤーに会えばこの状況がどういうことなのかわかるのではと色めき立つが、水神は百年ほど前からプレイヤーを見ておらず、またこれまでのプレイヤーの連れていた妖精はエルフのものと同じようなただの使役で、ディーのような自我は備えていなかったと言う。
ここで再びサヤに呼ばれて目を覚ます。サヤのおかげで、負ったはずの傷も癒えている。水神と意志を通じ合わせたサヤは、ディーが宝物庫の奥で眠っていると言う。
宝物庫で眠るディーを見つけ、カツミは秘宝を見て回る。十二騎士のひとつ、アルミュスを手にいれる。
ディーは懐かしい匂いがするといい、それを追いかけた三人は、さらに奥の部屋で《七不思議》のひとつ「竜の卵」を見つける。
竜の卵といえば、そもそもこの世界にくる発端となったクエストの報酬だ。竜の卵についてはアイテムの引き継ぎがなかったが、どうなったのだろう、と考え始めたところで、ディーが、この場所は空に浮いていると言い出す。
サヤは水神と意識を通じあわせながら、この神殿はもともとは空に浮いていたのだと語るが。その途中でサヤが突然うろたえはじめた。
動転したサヤの代わりに水神が語る。
ここはもともとウォータの首都があった場所だったが、百年前の戦いの折、時の水の巫女が起こした奇跡によって平野の全部が押し流された。以来、聖地と呼ばれつつも、余力がないため放置されていたこの土地だったが、サヤが覚醒すると同時に、神殿の遺跡が空中に浮上した。
失われた神殿が浮上したということは、そこに真の水の巫女がいるということ。三日たっても現れない巫女に対し、現在のウォータの水の巫女は、真の巫女を救うために《聖戦》を発令した。
《聖戦》とは、国民全てに対して、全てを賭して対象を倒すまで戦い続けることを義務付けること。今回の対象は、聖地を狙うもの全て、つまり、この砂丘にいる帝国軍すべての全滅が目標となる。だがそれは、現在のウォータ国民にとっては、全軍を犠牲にしても叶わないほどのことだ。
奇跡を起こせばと提案するカツミだが、前回の奇跡は当時の巫女と千を超える新刊の命を代償にしてのもの、サヤに使わせるわけにはいかないと水神は退ける。
このままでは、サヤのためにウォータの民が死んでいくのを、手をこまねいて見ているしかない。歯噛みするカツミに、フェンが策を授ける。
サヤにできる範囲で奇蹟を起こさせ、動揺している隙に敵の首領を倒せば、敵軍はそれだけで軍としての体裁を失い潰走するだろうと。そして、敵将の元に向かう足として、サヤに竜を目覚めさせる。
竜の卵から孵ったグリフォンに乗ってサヤとカツミは戦場に向かう。サヤが起こした奇蹟で目論見通り混乱したオーガ軍を、ルサ=ルカの部隊を攻撃する。
その隙に、一人で敵将を倒せとフェンに命じられたカツミは、手に入れたばかりのアルミュスを使って戦い、オーガの将軍を独力で討ち取る。
疲労から気を失ったカツミは、自分の倒した敵将がリゥ=バゥの妹、すなわちフェンの妹であったことを知る。カツミは動揺するが、フェンは嗤う。オーガが力を求めるのは秘宝を集めるため、シャンバラの門の向こうにいる神、自分たちをこの狭い世界に落とした神を弑するため。運命ごときに左右される弱者は足手まといでしかないと。
そして、そのオーガ最強の女、神を越えようとするリゥ=バゥに勝たんとするのであれば、運命の神ごときには負けぬ強さを得るのだと叱咤する。
外伝
リゥ=バゥは苦悶の海の魔女を倒し、次は鳥人を滅ぼすことに決める。




