92:自爆検証
五百万PVありがとうございます。段々胃が痛くなってきました。
あと、既存個所において表記の揺れを統一しました。
焼き肉→焼肉
無事、第一目的は達成されたが早速窃盗罪を犯してしまった。再び放置しなければならない。今ならまだ見られてないよな? 即時その場で自動車を取り出す。
地面に置きなおすときにゴトンと言う大きめの音がしたが、どうやら気づかれてないようだ。
周りから見れば「いきなり放置車両から音がしてビビったオッサン」として主張できるかもしれない。
そのまま、一体何が起こったんだ? という体で放置自動車を調べてみる。どうやらガソリンが漏れていたりハンドルが取れていたり、テールランプが壊れていたりはしてないようだ。交通安全のお守りもどうやらぶら下がっているままらしい。
タイヤがパンクしていたが、これは前からなのだろうか。もっと確かめる時間が必要だったな。
とりあえず、ほぼ無事な形で? 自動車が格納できたことだけは確認できた。少なくとも全損ということはないようだ。放り込んでおくことに大きな価値が出てきた。
ここまで無事ならもう自分の車で試すか……高い勉強代になる可能性は一気に低くなった。壊れたところが出てきたらディーラーに渡して修復してもらう事で、どこまでが自動車と認められるかをある程度までは推察できる。家に帰ったらまず自分の車で試して、それから何か考えよう。
もし出したショックでパンクしたとして、パンク修理代だけで済めば安いものだ。
◇◆◇◆◇◆◇
家に帰って早速ガレージに向かう。閉鎖型のガレージなので他人に見られる可能性はゼロだ。
まず、車の中のクッションやらなんやらを入れたままそのまま保管庫に放り込むことを試みる。正直ドキドキしている。これが上手くいくかどうかで俺の財布の事情が変わるのだ。
「収納」 自動車が保管庫に入る。
自動車 x一
入れたままのクッションやらうさぎちゃん人形は自動車のパーツとして自動車に一くくりとして認められたようだ。
「自動車の中に入っていたものは自動車として認識される」
一つの知見を得た。保管庫の中身を覗いてみるが、クッションやうさぎちゃん人形が別として入っている様子はない。ふと考える。今の状態なら、本棚を「本棚」というオブジェクトとして認識させることが可能なんじゃないか?
部屋に急いで戻ると、早速こち亀が全巻揃っているほうの本棚に収納を使う。
本棚 x一(こち亀一巻、二巻……以下略)
どうやら、前にできなかったことが出来たらしい。そのまま同じ位置に本棚を置いてみる。
本棚は、前の通りの位置、前の通りの本の順番で取り出すことが出来た。
これは以前起こった保管庫スキルのレベルアップと何か関係があるんだろうか。逆に言えば、もっと早くに自動車を入れようと試した場合パーツがばらばらの状態で保管庫に格納されていたのかもしれない。俺はぞっとした。今やって本当に良かった……
ガレージに戻ると、落ち着いて収納から自動車を取り出す。地面スレスレに置くように慎重に、とても慎重に位置を指定すると、覚悟を決めて「取り出し」とあえて口にして自動車を取り出した。
床にでた自動車は少しだけ沈み込むと、自分の力で元の位置に戻った。サスペンションに異常はないようだな。しかしこれ、縦列駐車に便利だな。
車について色々と確かめる。
カギ、壊れてない。
タイヤ、パンクした様子はない。
ガソリンが漏れている様子はない。
クッション、いい気持ち。
うさぎちゃん人形、無事。
エンジンをかけてみる。無事にかかった。
ちょっと軽く乗り回してみるか。近所のコンビニまで車で向かう。
道中異常は見受けられない。ウィンカーもワイパーもウォッシュ液もちゃんと動く。
後は……クラクションを鳴らしてみるが無事に鳴る。
どうやら、車に異常はないらしい。車の内部も異常はないらしい。つまり、今の俺は自動車を自動車として安全に保管庫に出し入れできる状態らしい。それと同時に購入した定期券が少し無駄になった。
もっと大きい車だとどうなるんだろう。大きいサイズの車に興味がわいてきた。しかし、大型車こそ買って収納するわけにはいかない。またどこかでコッソリ試してみるしかないな。
そういえば夕食がまだだった。コンビニでパスタさんを買い、ついでに朝食用にサンドイッチとおにぎり、コーヒーを準備する。たまには朝食全てが出来合い物でも良いだろう。保管庫に放り込んでおけば賞味期限も気にする必要は無いからな。
やれることが大幅に増えた。これだけでも晴れやかな気持ちになれる。一日休んだ甲斐もあったというものだ。ルンルン気分で家へ帰る。
この車で五層や六層を走り回るのは気分が良いだろう。他人に見られなければ、だが。
「車入った」嬉しくて早速文月さんにレインしておく。
「見られなければサバンナ走り放題」考えることは同じだったらしい。
「小西ならワンチャンあるかも」
「移動が楽になるのはいいですね。自転車二台ぐらい入れておいてください」
とりあえず自転車一台は自分のをそのまま使えばいいだろう。二台目は何処かで買おう。それまではちょっと我慢してもらうか。
この辺の出費があまり気にならなくなってきたな。金がある分そこそこ使っても問題ないと思っているらしい。そろそろ出費を厳しくしてもいいかもしれん。また三層四層でゴブリン狩りつつ金を貯めよう。ゴブリン産のヒールポーションは数が狩れる限り美味しい。
五層へ行ってワイルドボアでも良いんだが、移動時間が惜しい。現状の稼ぎだとやはり三層四層でゴブリン相手に無双出来ればこのぐらいの出費は一日で取り戻せるはずだ。
もっと深くへ行きたいところではあるが、初めてのキャンプ体験はおそらく清州の七層で行う事になるだろう。なんせ人が多い分安心してキャンプできる。小西で一人キャンプするのは俺にはまだ難易度が高すぎる。
◇◆◇◆◇◆◇
さて、すっかり遅くなってしまったが夕食を食べよう。コンビニの出来合い物でも腹が膨れれば今日は満足だ。解ったことや出来ることが一気に増えて、探索の選択肢が広がった。
実際はまだ広がってはいないわけなんだが、車一台一トンと考えて、一トンの物質を入れてもまだ余裕があるほどに保管庫の容量は大きいという事が解った。これならダンジョンで何泊でもできそうだな。
軽トラック三台分の容量を持ち込んで何が出来るんだろう。パーティー何人分の何泊分の荷物になるのか。そしてどれほどの量のドロップを持ち帰ることが出来るのか。ワクワクするな。
また清州へ行こう。そんでもってキャンプ体験だ。キャンプに必要なものは一通り前に買いそろえたから、飯の準備さえ怠らなければいいな。
食パンを丸ごと放り込んで、スキレットで適当に焼いて……後はその場で肉も焼けるし、当日になって面倒くさくなったらカロリーバーでもいいや。インスタントコーヒーとチャイは入れておこう。後は最悪の状況を考えてカレールーだ。
肉は現地調達の予定だが、何も取れなかった時用の予備の肉を一つ持っておこう。次にダンジョン潜るときに確保しておこうかな。
後は暇になった時用に本でも放り込んでおくか。枕はダーククロウの羽根を包んだものを枕元においておけばいいか。少量でも効果があるらしいし。
後は……後は……なんか修学旅行の前日を思い出すな。面白そうなものを持ち込もうとして色々悪戦苦闘したな。もう二十年以上前か、懐かしいな。
慌てずに必要そうなものだけをピックアップしていくか。明日急に旅行するわけで無し、適当でいいか。トイレットペーパーとティッシュと……うん、大体必要そうなものは入れてあるな。
後はいつ出発するか、だな。明日でもいいし明後日でもいい。急ぐことは無いからゆっくりできる。
暇だからネットニュースでも見るか。
ダンジョン関連のニュースサイトは、どこもスライムのドロップの話題で持ちきりのようだ。各スーパーはカロリーバーが軒並み売り切れ。次の入荷はいつになるのかと店員に詰め寄る探索者が問題になっているようだ。想定内だな。
製造元である三勢食品はさっそく自社ホームページで「現状他の商品の供給を止めてでも全力でぶん回して生産してるんでどうかお待ちください」というような内容を発表している。
大変そうだなー。一体どうしてこんなことにー。
清州七層の情報を集める。どうやら常時二十以上のパーティーが設営を行っているらしい。そこにうまく紛れ込めるような装備にしなければいけないな。
そういえば清州の地図は六層以降は別売りだったな。また買いに行かないといけない。まとめて十層ぐらいまで地図を買っておこうか。どのくらい深くまで潜れるか試してみたい部分もある。
モンスターと探索者の密度から考えて、安全に潜っていける深さを考えると人口の多い清州ダンジョンのほうが難易度は易しいのではないかという事はさっきも考えた。キャンプを清州で行おうというのもその流れからの事だ。助けられることもあるだろうし、助ける事だってあるかもしれない。それに他人の装備を見て自分の装備を見直すという事もできる。
何事もやってみなければ解らない、だな。清州は二十四時間営業だからなんなら今すぐ出立するのもでも良い。が、今日はもう眠るとしよう。ダーククロウの羽根で出来た枕は、俺にまた気持ちのいい眠りを提供してくれるに違いない。
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