379:物欲センサー 2/4
休憩を終えて十三層への階段を下りた。マップはガラッと変わって人工ダンジョン。謎の照明に照らされて今日も明るい。ダンジョンマスターは片手が明りでふさがる事が無いようにダンジョンを作ってくれている。どうもありがとう。
今回は十三層をうろつくことも無く、真っ直ぐ十四層へ行く。半分ぐらいはマップは頭に入った。全部はまだまだ通う回数が足りないらしい。とりあえず地図はちゃんと見よう。地図をバッグに仕舞うことなくパっと出してパっと仕舞えるのは保管庫のありがたいところ。さて下りて最初の曲がり角でスケルトンと出会う。
おいっすしばらくぶり、と言わんばかりに肩先から一発お見舞いしてそのまま核まで一気に引き裂く。これが出来るようになったのが進歩だ。おかげでワンテンポでスケルトンを倒せるようになった。芽生さんも同じく一発でスケルトンを破壊するのでこれでようやく十三層での歩調を合わせられた。
若さゆえかそれとも俺の老化か、どっちかは解らないが芽生さんの成長は著しい。もう次の次ぐらいでは追い抜かれるんじゃないだろうか。今のところスキルのおかげでなんとかなっているが、スキルがほぼ利かないこの階層では純粋にステータスブーストの効果がそのまま戦力となる。保管庫からパチンコ玉を弾き飛ばして同時に戦う数を散らすぐらいしか使いどころも無い。
曲がり角ごとにスケルトン、小部屋ごとに骨ネクロ。通り道はきっちり片付けていく。まだ十三層でスキルオーブがドロップしたという報告は耳にしてないし、七層のノートにも記述が無かった。ノートを毎回確認するのはその辺の情報を集めるためでもある。
とすれば十二、十三層ではまだスキルオーブのドロップ報告は無いという事になる。十三層は散々巡ったのでそろそろ出ても良いかもとは思っているが、やはり物欲センサーのせいだろうか。頭生え際の当たりを触って本当にあるのかどうか確かめる。
「……何してるんですか? 」
「この辺から物欲が漏れ出てないかどうか確かめてる」
「物欲センサーってそこから感知するんですか? 聞いたことないですけど」
「解らん。まさか尻から漏れ出ているとか無いだろうな」
尻の当たりをさすってみる。頑張れば屁ぐらいはでそうだが物欲が漏れてはいないらしい。
「そんなところから物欲って漏れるんですか? 」
「わからん。だが試しておいて別に損はない」
尻の周りで手を振って物欲を散らす。これでいつも通りのドロップ率を維持できるような気がしてきた。さぁ続き続き。
小部屋の骨ネクロから真珠を回収して小部屋を出て、十四層への階段へ向かいつつ、曲がり角ごとに出てくる、毎回ドロップをくれる昔人だったであろう骨達……いや、黒い粒子で出来ているんだから昔は人とは言えないのか。まぁ黒い粒子の塊だと解っているなら何も気にする必要はないか。どんどんサクサクとスケルトンを葬っていく。
ちょうど十四層までの半分ぐらいのところへ来た。この辺は小部屋が多く、その分骨ネクロも多い。二匹ワンセットで一万円というとても分かりやすい計算が出来るので色々助かる。こっちのタイミングで攻撃を仕掛けられるのでスケルトンを召喚される可能性もほぼ無いというのも大きい。
ここまで小部屋を十ほど回ってきたのでそれだけで十万円プラス骨が落ちればその分更に収入が増える。とても美味しい。もう小部屋だけの階層とか欲しい。いや、でもそうなるとエレベーターの燃料が無いな。それは困る。やっぱり今のままで良いか。
十三層は今までにそこそこ回ってきて倒したスケルトンの数は二千匹ほどになる。他のパーティーも合わせれば全部で四千匹ぐらいは倒して回っているだろう。だとすると少なくとも五千匹程度の倒し方ではスキルオーブは出ないという事になるか。さらに倍、一万体倒せばどうだろう。
ジャイアントアントも六千匹狩ってきて【雷魔法】が出た。スケルトンも六千匹倒せば出るのだろうか。さすがに昨日今日で二千匹倒し切るのは難しいな。今日はもうスキルオーブは諦めるか。大人しく十四層まで行くか。
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side:文月芽生
【魔法耐性】が十三層で出るなら【物理耐性】もこの辺で出るんでしょうかねえ。だったらオーク辺りが落としてくれるんでしょうか? 十二層で粘ってドロップを狙うのも今更だけど有りだったかもしれません。
どうせ出るなら十三層のスケルトンからもう一つ【魔法耐性】が出てくれたほうが解りやすく二人で同時に使って、早速ボス辺りで【魔法耐性】の効き目を試してみるのも悪くなかったかもしれません。もったいない事をした気がしますが十四層で休憩してお昼寝したら十五層へ行かずに十三層でひたすらスケルトンを狩りまわって【魔法耐性】が出るまで粘ってみるのも一つですねえ。
洋一さんはその辺どう考えているんでしょう? お互い同じスキルを覚えられれば売るわけでもないので金額に関してもめる事も無いでしょうし丁度都合がいいと思うんですが。
あ、もしかしてこれが物欲センサーって奴でしょうか。私もお尻のあたりから物欲が流れ出ているんでしょうか。ちょっと砂を払う感じでぱっぱっと……よしこれで物欲は払ったわ。さぁ気を取り直して戦う事にしますか。
◇◆◇◆◇◆◇
そういえば骨ネクロはどんなスキルをくれるんだろう。スケルトンと全く同じという可能性も無いわけではないが、同じようなスキルをドロップすると考えると【召喚】とかそんなスキルをくれるんだろうか。しかし、スケルトンが召喚できるようになってもありがたみが無いな。肉壁にするにしても十秒ぐらいかかるわけで。
その十秒の間にこっちが何が出来るか考えるとダンジョン内でのみ活躍するスキルってのはあまり有用ではないな。いや保管庫と比べたらそりゃ有用さは天地の差があるが、仮に召喚スキルを手に入れたとして使い道がどこにあるかは非常に疑問が残る。
できれば骨ネクロも同じスキルをドロップしてくれるとありがたいな。今保留にしている【魔法耐性】、もう一つドロップしてくれたら共同戦果で二個手に入ったから一個ずつ使おうということでお互いに貸し借りもわだかまりも残さずに使う事が出来るんだが……まぁ世の中そう上手い事回るわけではないだろうな。
なんだか芽生さんのほうを見ると悶々としているようにも見えるが、尻をパッパッと払うといつも通りに戻った。これは物欲センサーに感ありだな。あっちもあっちで考えている事はどうやら同じらしい。
目が合う。指を一本ピッとたてる。芽生さんが頷く。
「もう一個オーブ頑張ります? とりあえず十四層まで行ってから考える感じで」
「【魔法耐性】もう一つ。それでもって二人とも覚えてボス再戦」
「いいですね、探索者らしくなってきました。この先【魔法耐性】を活かす場面が出て来るかは疑問ですが」
「それは後で考えよう。二つ出て二つとも売りに出すとタイミングとか時間の関係上かなりあり得ない短時間でドロップしたことになってしまうし。骨弓を無力化できるぐらいの耐性が得られるなら十六層をグルグル回るのも悪くなくなる」
「とりあえず今日の目標が見えたところで十四層へ下りましょう。まずは腹ごしらえです」
後三回ほど曲がれば十四層への階段が見える。曲がり角にはスケルトン。リポップ地点は把握しているので油断するわけでもなく、無事に十四層へ下りることができた。
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