362:どんとこい十六層 5/5
日々の誤字報告ありがとうございます。
ちゃんと見直してるはずなんだけどな……おかしいな……
十六層の例の三叉路まで来た。道中かなりの戦闘があったが、何とか乗り切ってこれた。多分初回の戦闘回数よりは少ないが、そこそこの収入……と言っても今までの戦績からすれば十分多い部類には入るのだが、とにかく収穫は充分ある。これなら探索に重きをおいても問題あるまい。ここから先はボーナスステージみたいなもんだと思って進もう。
三回目のトライ、経過時間は三十分。残り一時間ほどでこの三叉路から北側に進めばまた未知のゾーンだ。方眼紙はマップの広さの都合で二枚目に突入している。全部回り切ればもっとシンプルに地図を描きなおすことができるだろう。今はまだ仮描き込みの状態だ。
ここまでの地図を一枚として確保しておき、ここからは新しい方眼紙を用意した。南側と北側で解りやすく分けたことになる。これで新しく気持ちいいマップ埋めが出来ると思うと心が躍る。
「早速新しい迷路ですよ。楽しいですか」
「楽しい。ワクワクする。何処に階段があるかも含めてとても楽しみだ」
ここで三叉路を進んでいく前に少し休憩を取る。気分を一新する意味でも休憩をして一時的に落ち着いて探索に挑むのは大事なことだ。いつものカロリーバーを摂取しながら水分を取り、次からのモンスターとの戦いに備える。
「そういえばカロリーバーの在庫は大丈夫ですか。いくら買い占めたとはいえさすがにそろそろ心許ないんじゃ」
「バニラ以外は徐々に減ってる。最近ダンジョン飯がそこそこ豪華なおかげであんまり出番ないんだよね」
「そういえばそうですね。カロリーバーでストイックにダンジョン探索していたのはいつの話だったでしょう? 」
何時からだろう? カロリーバーに頼らなくなってきたのは。休憩時に一、二本胃袋に納めてはいるが、とてもじゃないがそうそう消費できるものでもない。
「さぁ、覚えがないな。とりあえず賞味期限は半年だから、保管庫効果で五十年ぐらいは放っておいて大丈夫じゃないか」
「寿命が先か賞味期限が先か、ですか。お年寄りが買うLEDライトみたいになってますね」
「さすがにそこまで長い間放置する事もないだろうし、これから徐々に海外製のカロリーバーも並び始めるんじゃないか? 海外工場で生産するって話だし」
「たかだかカロリー補給用のバニラバーで世界規模の現象になってしまいましたね。まぁ経済が回るのは良い事です」
海外大手食品メーカーによるコピー品がちゃんとスライムに影響しているかどうかまでは調べてないが、俺としては食品を供給されて行きスライム狩りにも、骨を使ったグレイウルフ狩りにもどんどん人が参加してくれるほうを願う立場だ。そのほうがみんな儲かってより経済が回る。
ダンジョン商売なんて社会全体から見れば微々たるものだろうが、それでもこれからダンジョンに対して真剣に向き合う時に、ある程度のチュートリアル的なものが存在しているほうが探索者も増えやすいだろう。
最初にスライムにバニラバーを食わせたのは一体誰だったのか。気になる所ではあるが、もしかしたら先行者利益としてそれなりの収入を得ていたかもしれないし、たまたまだろうと放置していたかもしれない。俺が気づいて広めてみんなが儲かる様になってくれているなら俺としては万々歳なのでそのままの流れで行って欲しいな。
「さて、カロリーも水分も補充したところで行きますか」
「二回半のトライで半分埋めたんですから後二回半かかるんでしょうか」
「階段が見つかるまでの辛抱だ。不本意ながら小西ダンジョンの最先端を走っているんだから勇気をもって進もうじゃないの。早速、スケルトンも前方に居てくれるんだからこっちもありがとうという綺麗な言葉をかけながら進めばきっと綺麗な魔結晶を落としてくれるに違いない」
「エセ科学がダンジョンでも通用する事は無いと思いますし、そもそも保管庫に入れれば一緒でしょう? 」
綺麗な魔結晶ができるかもしれませんね! とのってこなくてよかった。もしそうならここでパーティーに亀裂が入る所だった。
「でも、我々の賃金になってくれるんだから一定の敬意は払いたいものだ」
「それもそうですね。供養塔でも建てておきますか」
「スライムが食べ終わるまでに四十九日かかりそうだなぁ」
そもそもこのスケルトンに生前のなんとかが関連するとは思えない訳だが、黒い粒子で出来ていて黒い粒子に還っていくのだから生命の輪廻転生の枠とはまた違うカテゴリの存在である可能性のほうが高い。
なら供養も必要ないんじゃないか? と思う訳だが、そこは気分的な物だろう。お念仏を唱えて自分が納得するならそれでいいんじゃないか。とりあえずこれから殴り倒す予定のスケルトン達に向かって手を合わせておこう。
気が済んだところで前に進む。前方に見えるスケルトン四体がこちらに反応すれば戦闘開始だ。奇襲をするには道のど真ん中過ぎるので諦めた。スケルトン二体の頭をパチンコ玉で弾き飛ばし、隙を作ってからの一対一だ。王道パターンを構築できた。これなら仮に六体来ても何とかなりそうな気がするぞ。
無駄な動き無くスケルトンを倒したところで次は曲がり角の前に骨グループ。こっちもスケルトンの頭を飛ばしてから骨弓・骨ネクロを優先排除する事で毎回確実に倒せるパターンを確立した。他人の目がない時にだけ使えるパターンだが、他人の目がある時は他人の手が借りれるという事でもある。その時はまた別の事を考えれば良いだろう。
さて……どっちに行っても道ばかりだ。道なりに真っ直ぐ行くといきなりの三叉路。予想通りの地図なら回廊に当たる部分がここになるはずだが……ぐるっと道なりに行ってみるか。それで本当に回廊になっているかどうかはっきりするはずだ。
「とりあえず、時計回りに回ってみるかあ。ぐるっと回れればその間に時間も経つだろ」
「まず外環からですか。まぁなんでもいいですけど」
「全貌解明にはあと三回は必要そうだな。今日は……後一時間ぐらいか。それを過ぎたら途中でも帰ろう」
「あんまり簡単な道を行きすぎると後で穴埋めするのが面倒になるのでは? それこそ続きが気になるって奴です」
「確かに。じゃあ手近なところで曲がってくねっていくか」
とりあえず時計回りに回って、横道があったらそっちにいくことにした。予想通りなら回廊部分であるだろう道筋には十五層のボス部屋前のように所々にスケルトンが配置されている。
手前から順番にスケルトンを……この道すがらはスケルトンだけの区域みたいだな。目視確認できるだけで四グループ十四体……そういえばステータスブーストしていると視力も良くなっている気がする。逆にモンスターのほうが目が悪いのかもしれないが……とにかく奥までよく見通せる。
スケルトンの反応距離はおおよそ判別できている。パチンコ玉で吹き飛ばしても気づかれない距離というのもある。まとめて来られても面倒だから向こうがあえて気づく距離でパチンコ玉を飛ばして、無事な奴が順番にこっちに来るように仕向ければ頭をはめ直している間にそれぞれ一体ずつ相手が出来る。
そして頭を探してはめなおして、改めて来る次の二体を一体ずつ倒す。少々手間がかかるが安全で確実で疲れがこない。これ、いいな楽で。
最初の曲がり角を曲がったら行き止まりだったが、これはこれで良し。次の曲がり角は小部屋だった。小部屋には骨グループか骨ネクロと骨弓が配置されている傾向が高い気がする。今回は骨ネクロ二体だった。
相変わらずカタカタと会話をしている。ここまでカタカタしてると俺も話す内容が気になってきた。どういうコミュニケーションをしているのか。もしかしたらモールス信号的な何かで会話をしているのかもしれない、専門家の解説が必要だろう。
専門家がここに居ない以上解明のしようも無いので会話に剣で割り込む。会話に気を取られて召喚が遅れたおかげで手早く処理。
「会話に夢中になるスケルトンも居るもんですねえ」
「一つモンスターに対する理解が進んだな。今更スケルトンの行動原理を解明したところで……いやこれはこれで論文の一つでも書けるようになるんだろうか」
「試しに録音して解析してみればいいんじゃないですか? 伝手があればの話ですか」
「そっちに伝手は? 」
「そこまで賢そうな人は思い当りませんね」
「じゃあこの話は無しだな」
小部屋に何もない事を確認すると元の道に戻り、再びスケルトンを骨折させながらわき道を探し始める。骨はもう四十本ぐらい集まっているし剣もそれなりの本数……もう一日潜ればゴブリンソードと同じぐらいの本数が溜まりつつある。ゴブリンソードからの置き換えはそろそろできるだろう。大量運用する機会は……多分次のボス戦ぐらいまではないんじゃないかな。
次のボス戦、ということは三十層なのかもしれないし、十五層再戦する時に実力が足りないなと感じた時に投入するかの主に二択だ。何せ明らかなオーバーキルでゴブリンキングを倒したため、実際どのくらい強かったのかさっぱりわからない。
やはり二手三手戦ってみてから行うべきだった。反省点は多い。次に活かそう。
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