347:茂君スパイラル 1/3
芽生さんの食欲をサイレント修正しました。
朝だ。今日も汗ばむ。目覚めは気持ちいい、今日もダーククロウありがとう。が、目覚めた次の瞬間自分の汗で嫌になってくる。湿度は梅雨の時期に比べたらマシになったがやはり寝起きの暑さは早くどうにかしたい。その為の羽根、その為の茂君。
ご機嫌な朝食を取り終わると着替えて寝巻を洗濯機に入れ、回している間に一泊分の食料……コンビニ飯で良いや。それと暇つぶしになりそうな何かを適当に保管庫に収納する。前に買った月刊探索ライフや探索・オブ・ジ・イヤーでも読みながら時間を潰そうと思っている。
今日は今までにやったことが無い変則的な狩りをする予定である。七層まで下りたら一時間休憩して六層に向かい、茂君まで歩いたら茂君を討伐して七層に戻り、一時間ぐらい休憩したらまた六層に戻り……という作業をひたすら繰り返す。
まだ働いていたころに工場の労働環境調査のために毎時間気温と湿度と照度を測って記入する、という仕事があったが、それに近い。つまり一度やったことがある気がする作業だ。七層が歩きになるならいっその事七層の中の階段の脇に椅子を置いてそこで時間を潰すのでもいい。自転車があるならテントに戻って休憩する。
人に見られていた場合エコバッグに収納して七層に戻ることになるので、その場合はかなり面倒くさいことになるが……まぁ平日だし大丈夫だろう。田中君ぐらいしか居ない可能性が高いので、田中君がいた場合はお互いワイルドボアと茂君を狩り合って肉は渡してそれ以外をこっちが、という風に分担できるだろうし、色々と人と出会った時のパターンを考えておこう。
収入としてはそんなに美味しい仕事ではない。二時間一セットと考えて、六層半周でおよそ五万。十二時に七層に着いたとして、そこから午前六時ぐらいまでひたすら繰り返すとして……九回ほどチャレンジする事が可能だろうか。
ダーククロウの羽根の卸価格を収入として計算しても、四十万そこそこ、羽根を抜けば二十万ちょいぐらいの収入だ。少ないとはいえないが、かといって多くも無い。だが、七層までしかいかない稼ぎとして考えればかなりのものにはなる。ソロで潜るなら金額を目指さず、やりたい範囲で手に入れたい分の確保をする。それでいいだろう。
皮算用を色々してる間に洗濯が終わったので寝巻を干しておき、探索準備を終えた。そして……
万能熊手二つ、ヨシ!
直刀、ヨシ!
ヘルメット、ヨシ!
防刃ツナギ、ヨシ!
安全靴、ヨシ!
手袋、ヨシ!
枕、ヨシ!
嗜好品、ヨシ!
お泊まりセット、ヨシ!
冷えた水、コーラ、ヨシ!
飯の準備、コンビニで買うからヨシ!
保管庫の中身……ヨシ!
その他いろいろ、ヨシ!
指さし確認は大事である。後はコンビニで忘れずに二食分、食料を調達する事を忘れない。今日は何喰おうかな。
家から出てコンビニへ早速赴くと、カロリーが低めで腹に溜まって満足感があるものを探し始める。そうなるとサラダチキンは外せないな。後は手ごろなところでチャーハン。これで一食分は決まった。もう一食は……ウルフ肉を焼いて食うか。焼肉のたれ味付けで良いだろう。パックライスもまだ余裕がある。
中途半端に足りないといけないのでおにぎりを一つ予備で抱え込むと会計へ。ついでにお菓子のじゃが太郎も買っていく。スティック状のポテトスナックだ。小腹を満たすにはちょうどいい。
コンビニでいつも通りアチアチに温めるとコンビニを出てから保管庫にポイ。これで飯の準備は整った。電車に乗りバスへ乗り換え、開場前の小西ダンジョンへ到着する。俺より先に来ていた六、七人の探索者と共に受付待ちの列に並ぶ。何時も俺より早く来ているこの人たちは徒歩か自転車なんだろうか。近いのはまぁ良い事だよな。
やがて時間が来た。受付嬢に探索者証を片方渡し、宿泊申請をする。
「宿泊でーす。今日は深くは潜らないのであんまり荷物は多くはならないと思います」
「わかりました。ご安全に」
そのまま真っ直ぐダンジョンへ入る。今日は六層だけと決めているのだ。途中のモンスターはたとえスライムちゃんであってもスルーして駆けていく。今日はちゃんと我慢できてるぞ、えらい!エレベーターを使うかどうかは悩んだが、とりあえずちゃんと歩いて向かう事にした。
共有資産扱いになっているスケルトンの魔結晶から使うのだから、俺の個人的なダンジョン巡りに使うのは止めておく、使う場合は事前に了解を取る事にする。そう自分の中で決めた。
一層二層三層を駆け抜けながら道中のアクティブモンスターはちゃんと処理し、わずかばかりの収入を得ていく。本当にわずかだ。一時間ランニングしてグレイウルフの魔結晶が二個、ゴブリンの魔結晶が三つ。時給千五百円というところか。実際にはわずかとは言いにくい金額だが、これから稼ぐことを考えたらわずかである。いいね?
四層に入り、ここからがウォーミングアップだとばかりに張り切っていく。ゴブリンとソードゴブリンを肩ポン爆破しながら五層へと急ぐ。ここで急げば急いだだけ一回分の茂君が葉を枯らすことになる。その一回で五万円ぐらいの差が出てくるのでここは急ぎたい。ドロップの確認だけ確実にすると、四層も二十分で駆け抜けた。
最後のランニングゾーン五層に突入する。ワイルドボアが勝手についてくるが、ある程度引き連れたところで処理。一匹ずつ相対するのはここでは効率が悪すぎる。今日は気分よりも効率を重視する日なんだ。だからハグ会も無しだ、ごめんなみんな。
四体ずつ、三回目標物であるサバンナの木を挟んで四回の戦闘をこなし十六頭。それと少量のダーククロウを【雷魔法】で焼き、ここまでの収入およそ一万五千円なり。二時間かからず六層までたどり着いたのは最短記録か。ずっと駆け足できたのでさすがにお腹もすいてきた。全力ダッシュだったらここで昼食だったが、六層で活動するための体力分の余裕をもって移動してきたのでこの後も問題なく活動は出来る。
さて、六層である。今日も俺のファンが一杯だ。しかし今日の俺は塩対応。近寄って来る奴から足蹴にして【雷魔法】でひたすらに焼く。焼き終わったらドロップを回収して木の近くまで軽く走る。木に止まっている一本目のダーククロウにチェインライトニングをかけてまとめて焼き殺すと、後ろと前を確認し誰も居ない事を確認して保管庫にまとめて収納。
今日はひたすらこれを繰り返す。戦闘時間より走っている時間のほうが長くなるだろうな。まぁそういう日もあるさ。今日の目的を忘れない事が重要だ。
次の茂君までの間も塩対応アンドランニング。茂君に到着すると満開の葉が俺を出迎えてくれた。二日ぶりだねぇ……
サンダーウェブで一掃すると木の根元に駆け寄り範囲回収。変なものは……混じってないな、よし。まず一回目の投網漁を終えたところで茂らない君のほうへ走りながら塩対応でワイルドボアを焼いていく。ふと振り返ると、茂君はもうリポップを始めている。満開とはいかないが、数匹湧いているような節は見える。
これは結構な回数通えそうだな。きっちり何分で満開になるかまでは計測したことは無い。しかし湧き事情からみて二時間に一回は狩れるような気がする。やはり当初予定通りの経過確認で様子を見るべきだろうな。
茂らない君にライダーキック。そして最後の塩対応を終えると七層へ着いた。とりあえず一回分は無事入手。手持ちの羽根の量からして、夏布団二枚分ぐらいの量は十分確保できていると考える。
自転車は……あるな。よし、これで十五分は自由時間が増える。自転車で早速シェルターまで戻り、ノートを確認する。他のダンジョンから小西ダンジョンまでわざわざ潜りに来てる人がちらほら居るようだ。
「清州から出張記念」偶に居るんだなこういう人たち。
「十津川からきました」よく来たな、いらっしゃい。
「ダンジョン巡り十二個目記念」すごいひともいるもんだな。
「タイヤ交換しておきました。走破性アップ」ありがとう。
「しばし旅に出ます。その内戻ってきますのでご心配なく 田中」
田中君何かあったんだろうか。日付はつい昨日だ。しばらく居ないから用事があっても何もできないよ、という確認らしい。ということは少なくとも今日狩場が被る心配がないな。
一通りノートを見終わったので自分のテントに戻ると、早めの昼食と行こう。まだ熱々のチャーハンとサラダチキンでたんぱく質多めの食事だ。野菜? 多分昨日食べた。そして気づく。宿泊するならもう一食必要ではなかったかと。今昼食を食べ、後で夕食を食べ、そして朝食を食べる。朝食分を考えるのを忘れていた。
ダンジョン宿泊時は普段は夕食と朝食がワンセットだからすっぽりと抜けていた。いかんなぁ……とりあえず朝食はトーストと卵のいつものメニューでいいか。気分が乗ったらウルフ肉も焼いて食べて、帰りに数個補充して帰ろう。脂がそう多くなくシンプルに食べれるウルフ肉は査定価格の安さもあってお手軽感が高い。
ボア肉やオーク肉だと如何にして美味く食うかをつい考えてしまうが、安い肉ならまぁ何でもいいや……みたいなところはある。夕食と朝食のサイドメニューが被ってしまう事になるがそれは仕方ない事として見送ろう。
さて、コーヒーを入れて三十分ほど休憩したらまた六層に戻ろう。そして茂君にまた会うのだ。ゲームで言う所のボス湧き待ちみたいなものだな。三十分とりあえず、腹をしっかり稼働させるために横になるか。しっかりと走り込んだこともあって足にも気づかない疲れがたまっているかもしれない。軽くマッサージした後テントに戻って枕を取り出し横になる。アラームはきっちり三十分後に設定した。しばしおやすみ。
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