34:前衛だけでもパーティーバトルと呼べるのか否か
五十万PVありがとうごじあます
ダンジョンで潮干狩りを
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第一ゴブリンとの戦いも無難に終わり、三層の道を歩いていく。
「ゴブリンって集団で出てくるんですか?」
「下層だと徒党組んで歩いてるのは確からしいですが、三層だとそういう話は聞かないですね」
「じゃぁ目の前のアレは偶然ってことですかね」
目の前にはゴブリン三匹。
「三匹ぐらいなら徒党に当たらないんじゃないですか?」
「五、六匹出てきたら徒党と判断したほうが良さそうですね」
「ゴブリンはそれなりに知能ありますから、複数出てくると二人だと厳しいかもしれません」
「どういう戦い方します?」
二人して悩む。なんせ二人とも前衛タイプだ。後ろから支援するというタイプではない。
「一匹目は私が引き受けますので、次に来た奴を対処していただくって形でどうでしょう?」
文月さんの提案に乗ってみることにする。一応彼女のほうが先輩だ。先輩の意見は参考になる。
「じゃぁ前にずずいっとどうぞ」
「レディ・ファーストって女性を盾にするために先に行かせるって話本当なんですかね」
「どっちでもいいでしょうこの場合。合理的なほうで行きましょう」
「合理的と言えば、この際ですから一つ提案があります」
ちょっと前から気になっていた。文月さん、どんな状況でも丁寧語を使ってくれる。おそらく俺が年上だから気を利かせてくれているのだろう。
「もうちょっとお互い砕けた話し方で行きません?言葉選んでる余裕が無くなるかも知れませんし」
文月さんは少し考えた後、返答してくれる。
「マジで、いいの? 」
「あ、そっちが素なのね」
「安村さん明らかに年上だし、年長者には敬意を払うべきかなって」
「ダンジョンに関してはそっちが先輩だから一応俺も丁寧語で話してたんだけど」
「正直助かります。指示するにも砕けた口調のほうがお互い理解が早いし」
「では、そうしますか」
「じゃぁ、これからよろしくね安村さん」
「こっちこそ、文月さん」
ゲームならここで好感度が上がるところだが、現実は非情である。そんなことは無いだろう。
「じゃぁ、ゴブリンの釣りよろしく」
「女の子を危険にさらすなんて男性としてどうかと思います」
「合理的に行こうって言ったろう?」
「それはそうですけど……」
さて、二人の意見がまとまったところでゴブリン三匹との戦闘だ。一匹二匹なら一対一でお互いに相手できるが、三匹目がどう動くか。やってみないとわからないな。
「来る順番からABCと仮定して、最後に来るCの動きにだけ注意していこうか」
「予想だと安村さんのほうに行きますよカシオミニを賭けてもいいです」
「なんでそんなもん持ってんの? 」
「いや持ってないけど」
「じゃあなんで言ったし」
冗談を言い合ってるうちにゴブリンがこちらに気づいたらしい。相変わらず文月さんに釘付けらしい。これはBのほうは何とか対処できるかな。
彼女にヘイトを集中させるため少し離れて近くの物陰で様子を見る。どうやらゴブリンにも体力の差があるらしく、ばらばらの速さで彼女に向かっていった。
ゴブリンBはこちらを見ていない。ゴブリンAが俺の目の前を通過するとゴブリンBに横槍を入れる。マチェットだけど。ゴブリンBは俺が近づいたところで気づいたらしく、隙だらけだ。これなら一発で仕留められるかもしれない。
ゴブリンBに向かってマチェットを脳天に向かって振りかぶる。まだ治りきってない筋肉痛が動きを阻害するが、それでも重さを利用して頭部に無理やり差し込む。硬い。真っ二つにできるほど強くはないが、とりあえずゴブリンBに致命打とも言えるダメージを与えることが出来た。
ゴブリンBが棍棒を振りかざす。胴体ががら空きだぜ。おれはそのままマチェットを腹に向かって突き刺した。ゴブリンBはそのまま粒子となって消えた。まず一匹。
文月さんのほうを振り返る。彼女は槍のリーチを生かしてゴブリンを近づけさせないで徐々にダメージを蓄積させているようだ。俺はその間にもう一匹のほうを相手にしよう。
俺はすぐさまゴブリンCのほうに狙いを定める。ちょうどこっちに走って向かっている姿が見える。ゴブリンCは一直線に俺に向かってくると棍棒を上段から振りかぶる。俺は小盾をうまく使って攻撃を往なす。小盾を斜めに構えたうえで、棍棒が当たった瞬間に小盾で弾いて攻撃をそらす。
小盾に弾かれたゴブリンCはバランスを崩す。胴体ががら空きだぜ。俺はそのまま胴体を切ろうとしたが、ゴブリンCのとっさの判断か、あっちの盾で攻撃を防がれる。なるほど、ゴブリンはこういった防御も使えるのか。俺はバックステップで一旦距離を取る。
ゴブリンCはふらついているがダメージは入っていないようだ。対峙してどっちが攻撃を始めようかとお互いをけん制しあってると後ろから声がした。
「伏せて!」
とっさに伏せたら俺の頭の上を槍が飛んでいく。どうやら文月さんが槍をぶん投げたようだ。意外と力あるな。怒らせないようにしよう。
彼女が投げた槍はゴブリンCの虚をつけたのか、そのまま胴体に槍が刺さる。すぐさま起き上がった俺はとどめとばかりに槍の石突きに蹴りを入れる。より深く刺さった槍はそのままゴブリンCの胴体を貫通し、ゴブリンCは無事黒い粒子となって消えた。
「三匹でもなんとかなったな」
槍を拾った俺は彼女に渡す。
「初めての共闘にしてはまぁまぁ上手くいったでしょ」
「伏せてなかったらあれは俺の頭を貫通してたんですけどね」
「そこはほら、安村さん意外と反応早いから」
「事前にコンセンサスは取りたかった」
ともかく、ゴブリン狩りをうまくやっていくために少しお話が必要なようだ。
しばらくグレイウルフの集団とゴブリンの交互の戦いが続いた。今のところ二人のコンビネーションは上手く回っており、ゴブリンの動き方もだいぶわかってきた。こいつら、一対一なら割と単純だが一対二になるとちょっとした連携を見せ始めている。
こっちが回避行動をとると、その避けた先をさらにもう片方が攻撃を続けてくるという、こちらの連携パターンによく似た行動をしてくる。その場合、一匹目の突撃してきたゴブリンを往なした後、もう一匹を狙って倒すことで安全を確保できるらしいこともわかってきた。
一人で一対三の状況になった場合どうなるかは解らないが、そろそろ飛び道具が欲しくなってきた。奥にいるゴブリンを投げナイフなんかでけん制して、その間に一匹に集中できる。
今は文月さんのサポートがあってこその安全な狩りが出来ているが、もし一人で三層に潜ることになった場合、やはり装備の新調が必要になってくるだろうな。いつまでもツナギにヘルメットでは心もとない。頭がい骨割られて「何を見てヨシと言ったんですか」となってしまったらそれまでである。
そしてゴブリンのドロップだが、魔結晶が一番よく落ちるらしい。そしてレアドロップにはなんとヒールポーションランク1が落ちることが確認できた。数をこなしてないのでドロップ率は解らないが、ほかのモンスターと同じ割合であれば二十匹倒すあたりに一万円もらえると思うと俄然やる気が出てくるな。
魔結晶はグレイウルフのものと同じぐらいの大きさだが、仄かに重く感じた。おそらく魔結晶としての密度が違うんだろう。大きさでなく重さで査定をしているのはその辺が関係しているのか。
「慣れて余裕がでてきた?」
「えぇ、数がこなけりゃソロでも行けそうなぐらいには」
「四層になると数増えるからね。あと、棍棒じゃなくて剣持ったゴブリンも出てきます」
戦いながら文月さんとの会話を楽しむ。話しながらも出てくるモンスターを次々灰燼に帰していく。
「そうなったらその自転車ヘルメットも卒業じゃない?」
「フルフェイスが必要そうだな。あぁ、また出費が嵩むなぁ」
「それでなんとかなればいいけど、矢が刺さったときポーション持ってないと動けなくなるかも」
「え、アレってそんなすぐ効くもんなんですか?」
「飲んだら十秒かからず擦り傷切り傷刺し傷ぐらいなら」
周囲の敵を殲滅し終わって一息つく。今のうちにドロップ拾わないと。
ポーションは出なかったが魔結晶はそれなりの数が出た。後で取り分をちゃんと話付けよう。
「しまったなぁ、この間売らずにとっときゃ良かった」
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