31:六日目、休暇気分でつい本気出す事ってよくあるよね。
三十万PVありがとうございます。
ちょこちょこミスしてたり表記ゆれがあったり、トラックボールが死にかけてたりしますが私は元気です。
ダンジョンで潮干狩りを
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朝だ。予想通りいろんなところが筋肉痛で起き上がるのも一苦労だ。これは一日寝てようかな……それとも痛くない筋肉使ってスライム狩りに行くかな。
やるのかい? やらないのかい? どっちなんだい? とでも続きそうな感じだが、スライムぐらいならまぁなんとかなるかと思う。幸い腰は痛くないのでゆっくりスライム狩りをしようと思う。
食パン二枚を電子オーブンにかけると牛乳とプロテインをシェイクし、目玉焼きをささっと作りにかかる。目玉焼きは時間がかからないサニーサイドアップだ。
両面焼くターンオーバーが後の洗い物が楽で済むんだが、今日はゆっくり時間を過ごすと決めたわりにサニーサイドアップ半熟で終えてしまうあたり、ダンジョンにイレこんでいる気がしてならない。
出かける前にダンジョン情報のチェックをする。特に目新しい情報は無かったが、豚インフルエンザが急増しているらしく、畜産農家が悲鳴をあげているという話を目にする。
代替食品としてダンジョン産の肉の需要が増えるのではないか?というコメンテーターの解説が載っていたが、一番楽に手に入れられるグレイウルフの肉すら豚肉ほど安くないのだ。
ダンジョンギルドの査定価格が一パック二百五十円である以上、どんなに安くしても末端価格はそれを超えることになる。
翻って豚肉は激安スーパーへいけば百グラム九十八円以下でも買えてしまう。これでは値段に対する需要と供給がかみ合わない。しばらくは豚肉が高くなるかもしれない。
◇◆◇◆◇◆◇
そろそろ定期券でも買おうか考える段階になってきたが、毎度の電車バス通勤だ。
一応自分も田舎住まい、一人一台自動車ぐらいは当たり前の世間なのだから自家用車通勤をしたいところではあるが、そのためにはあと一時間は早起きして数少ない自動車駐車場の取り合いに参加しなくてはならない。
九時に開くからといって九時ちょうどにダンジョンに着くころには、もう一般駐車場は満員になっている。小西さんは駐車場商売でも始めてくれればいいのに。俺はまだ見ぬ小西さんにちょっとだけ恨みじみた感想を述べた。
いつもの【小西ダンジョン】バス停を降りると、珍しく文月さんと鉢合わせすることになった。
「おはようございます、文月さん」
「おはようございます、安村さん。朝からダンジョンとは今日はバッチリ稼ぎに来たんですか?」
「いえ、今日はそんなに乗り気ではないですし、昨日昼から二層で頑張ってたおかげで筋肉痛が残っててですね、あまり万全とは言えないんですよ」
実際、上半身を中心に絶賛筋肉痛中だ。特に振りまくった両腕が痛い。
「二層……まさか熊手で?」
「いえ、これです。新しくしたので」
と、バッグからマチェットを少しのぞかせる。もちろん保管庫経由だ。
「新しい武器用意したんですね。お金があって羨ましいです」
「これも必要経費かと思いまして。文月さんは何しにダンジョンへ?」
「お金目的もありますが、全身トレーニングと……」
「と?」
すると文月さんは若干恥ずかしそうに
「と……減量に少々興味がありまして」
「なるほど」
察した。OKこれ以上は詮索しないぜ。迂闊なこともしゃべらないぜ。ここで「そんなに太ってるように見えないですよ」とか「ダイエットするほど太っては見えませんよ」なんて言葉はNGだ。この後始まる「見えないように努力してるんです!」とか「女の子のダイエットに限界なんてないんです!」とか、気が付くと俺への説教が始まる流れだ。俺は詳しいんだ。
「そういえば文月さんって槍使ってましたよね。あれはどこでお買いに?」
「えっと、実家の祖父が昔持ってたものらしいのでそれを譲ってもらいました」
「実家に槍……結構いいとこのお嬢さんなのでは?」
「実家はそれなりに大きいですが、両親とも普通の会社員ですよ」
槍、重くないんですか?という質問をしたが、あれ槍って金属なのさきっちょの刃の部分だけなのね。本体は軽く堅い木材で出来ていて、気軽にブンブン振り回せるしなんなら柄の部分でぶんなぐってもそうそう折れたりしないらしい。一つ勉強になった。
そのままの流れで入口へ向かい、一層入った後、二層の入り口まで雑談しながらスライムをジェノサイドしつつ二層への階段のところで別れた。
ここからは俺の時間だ。今日は数をカウントすることなく、ただ腰が痛くなるまでスライムをシバキ続けよう。ここから出会うスライムには幽明境を異にすることになってもらう。
◇◆◇◆◇◆◇
side:文月
二層を一人で巡りながら独りごちる。
「今日はスライムか~、なんならウルフ狩り付き合ってもらおうとしたのに」
文月はどっちかというと気さくな性格である。安村が年上なのもあって丁寧な言葉を使ってはいるが、本来はもっとフランクに話せるほうが肩が軽くていいのに、なんてことも思っている。
それに年上はどっちかというと好みのタイプだ。安村が好みかといえば……今のところそういう感じではない。
だが、背中を預けてともにモンスター狩りに勤しむことが出来ればより楽しくダイエ……質量の減少に貢献できるんではないだろうか。
一人で淡々と作業じみた戦闘を繰り返すよりも、軽口を叩きあいつつ楽しく戦いたい。そう思う。
「ま、今度また誘ってみますか」
そう気を取り直すと目の前のグレイウルフに向けて穂先を向ける。
グレイウルフが肉を落とすたびに食欲と戦っていた。
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