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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第四章:中年三日通わざれば腹肉も増える

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292:十層も慣れてきた


 充分に休憩した後十層へ向かおう。帰り道でそれなりに体を酷使しては来たが行きより気分が楽に感じる。ここで朽ち果ててはダンジョン潜った苦労が無駄になってしまうし、帰り道だから消耗の事をそれほど考えなくても良い、という気合の入り具合のせいかもしれない。


 いくら保管庫やバッグに高額なドロップ品が入っていても、無事に家に帰るまでは収入はゼロ円と同じだ。ここで朽ち果てればスライムの餌として消化され消滅しダンジョンに吸収されていき、小西ダンジョン初の死者としてカウントされるんだろう。


 ん、ちょっとネガティブになっているな。気楽に行こう気楽に。何度も十層を突破しているんだ、今回もうまくいく。十三層を探索するより十層を突破できるか不安になるっていうのは心配性なだけなのか。


 文月さんを横目で見る。タオルで軽く体を拭きながら水分とカロリーをゆっくり摂取している。時刻は午前三時半。確か十層に潜りだす前が午後九時ぐらいだったから、六時間近く十層から下に潜っていたことになる。これは収入は期待できるな。いつものペースなら帰り道四層か三層まで上がっている時間帯だが今日はまだ探索をしている。


 真っ直ぐ七層まで戻って少し仮眠して戻ったら昼すぎになるだろうか。中華屋が空いてれば飯食って解散かなこれは。先の事を考える余裕が出てきたぞ。良い傾向だ。


 地上に戻ったら雨もやんでいるだろうか。天気予報では今日……いや昨日は雨で翌朝には晴れるとあった覚えがある。気持ちよく晴れてると良いな。


 ……よし、体の疲れは取れた。カロリーも水分もとった。深呼吸を二つする。覚悟は決まった。後は行くだけだな。


「こっちの準備はできた。そっちは? 」

「んー……よし、こっちもオッケー。さぁ帰り道の難関を突破して無事にお給料を稼ぎましょう」


 軽く伸びをして関節をグルグルと回し、文月さんから休憩終了の合図を受け取る。準備は良いらしい。


 さぁ、お待ちかねの十層だ。今日も無事に脱出するぞ。覚悟を決めて階段を上ると早速のジャイアントアントのグループだ。まるで待っていてくれたかのようだ。やぁさっきぶりだね。


 親指、八、四。もうお互い半分ずつ担当しても問題ないだろう。奥の敵を引き付けるためにわざと時間をかけて一匹と相対し、十分寄ってきたところで順番に撃破する。そうしたほうが酸が飛んでくる可能性を下げられる上にドロップを拾いに行く手間が省ける。ここでの時間は貴重だ、出来るだけシンプルに戦いたい。


 同時に二匹相手にしても立ち回れるようになったのも大きい。ステータスブーストのおかげでジャイアントアントの移動や攻撃のタイミングが更にゆっくりに見える。攻撃モーションを見てからの回避でも全然間に合う。むしろ攻撃モーションをキャンセルするかのように弱パンいれて刺さるぐらいのことは出来るようになった。


 こうなるとジャイアントアントも十匹来なければスキルの出番も少ない。今のところ警戒するべきは九匹以上。その数が来たらスキルで対処しながらになる。もう頭数減らしが射出頼りだったちょっと前までの俺達とは違うぞ。


 人さし指、八、四。人差し指、六、三。親指、七、四。出てくる端から殴り倒してはドロップを拾い、そして黒い粒子に還していく。文月さんも余裕を持って対処できている。酸だ。酸だけに集中すればいける。そう考えれば俺も気持ちが楽になってきた。ようやく十層を攻略できているという自信がついてきた。


 こうなれば十層から感じていた重苦しい空気もただの森エリアとして認識されてくる。なんなら九層の中央に向かってやろうという気も起きそうな……まて、それはさすがにマズイな。ちょっとハイになっている。十層を抜けたら休憩時にスイッチのON/OFFをしよう。それで元に戻るはずだ。それまでは今のテンションと狩りの呼吸を維持していこう。


 人さし指、六、三。思考が何処かへぶっ飛んだまま探索を続けるのは、自覚してる範囲で気持ちいい。脳内物質が過剰分泌しているかのような、いや実際そうなっているんだろうな。いくらでも向かって来いという気分にさせられている。


 親指、八、四。そうなれば多少モンスターがまとめて襲ってきても臆することなく立ち向かっていける。そもそも一発殴れば勝てる相手なんだから順番に殴り飛ばせば終わってるじゃないか。奥へ視線を送ってジャイアントアントが尻を向けてなければそれでいい。尻を向けていたとしても雷撃すればそれで止まる。なんだ、楽勝だな。


 親指、七、四。順番にしかけつつ奥のジャイアントアントに警戒する。酸が飛んでこないかだけを見ればいい。一番手前の蟻が噛みついてくるが、避けられるし噛みつかれても腕が引き裂かれるほどの威力がない。おそらくステータスブーストのおかげだ。耐久力も上がっているということだな。酸にビビり散らして倒している間に強化されていたらしい。鍛錬の成果だな。


 更にジャイアントアントが怖くなくなってきた。ワイルドボアほどではないが段々かわいく見えてきたぞ。ほらほら怖がらなくても良いぞー。みんな一列に並んでねー。順番に頭をかちわっていくからねー。


 文月さんが俺の思考パターンの変化を敏感に察知し、変顔で真面目にやれとアピールをしてくる。真面目にモンスターを狩っているぞ。ただちょっとばかしテンションがおかしいことを自覚しているだけだ。


 文月さんのアピールを尻目にかけつつもどんどん次へ向かう。テンションとか立ち直りとかその辺の苦情は十層を抜けた後にまとめて聞こう。今はまず十層を無事に抜ける事を最優先だ。ドロップはきっちり拾っていくけどね。


 八割ほど先へ進んで残り二割といったところ。ここからあと四回ほど戦闘すれば九層に戻れる。つまり一番大事な局面だ。ここでうっかり怪我でもすると全てが台無しになってしまうところだ。


 人さし指、八、四。ワイルドボアは癒し。そして重量の敵だ。革がね。主に革がね。すごく嵩張るのよ。今まではバッグに差し込んでいたが、最近は保管庫に入れて帰りまでバッグを空にしておくことが増え始めた。一回で二十枚ぐらい査定にかけたこともある。


 その分金額もそれなりのものにはなるがやはり体積対利益で考えるとあまり美味しくは無い。コスパ最強は真珠かヒールポーションランク2。ここは譲れない。次にキュアポーションだ。


 親指、八、四。体積対コストで言えばスケルトンの骨も体積のわりにうま味は小さく感じられる。大腿骨って結構大きいからね。家のポチが喜ぶぐらいか。犬飼ってないけど。魔結晶もかなり重たい量になってきた。今いくらぐらい稼いでるんだろ。休憩入ったら数えよう。


 親指、六、三。階段はもう見えている。後は駆け込むだけだ。ここでジャイアントアントがギリギリ避けれるラインで酸を放ってきたのでイラっとして雷撃したため、ドロップを取りに駆け寄るハメになり、そのせいで更に四匹余分についてくることになった。


 まぁこのぐらいのお代わりならしょうがないだろう。ドロップを拾った後十分離れて酸が届きそうにない範囲まで移動すると、そのままこっちに走り込んでくる。そうそう、それでいいんだよ。


 十分引き付けて正面に一匹迎えながら正面以外の三匹と戦う。これで酸は飛んでこない。その間に近寄ってくるジャイアントアントを雷撃で処理してから最後に目の前のを倒し、足元に転がるドロップを拾う。


 後二回の戦闘を覚悟していたがさっきの戦闘を最後にモンスターは近寄ってこなかった。二人焦らず落ち着いて九層へ上がる。


 前回より更に余裕を持って通過できた。次は緊張無しで更に気楽にいけるはずだ。さぁ休憩してから九層八層を巡って七層に帰ろう。この休憩もその内要らなくなるのかな。だとしたらいいな。



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― 新着の感想 ―
長いなしかも毎回大体同じ文章の探索後は毎回毎層探索スマホアラーム使っているのに何で毎回地図探索ドローンを使わないの?飛べる敵限定層なのに……
[気になる点] スケルトンの剣は略すのに ジャイアントアントはそのままなのね?
[気になる点] 3年の間、死者0って物凄くおかしい。 1層は高齢者も居るんだから心臓麻痺とか起こるだろうし、命のやり取りしてて全員負け無しなど有り得なさすぎる。
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