185:久々の清州
あけましておめでとうございます。本年もゆるーくよろしくお願いします。
朝だ。今日も気持ちが良い。ありがとうダーククロウ。ありがとうみんな。そしていま一生懸命布団を作ってくれている人にもついでにありがとう。
いつもの朝食を作って食べる。味に違いはない、いつも通りでよろしい。さっさと片づけをし、出かける準備を調えるといつもは保管庫に入れている物資をバッグに詰める。今日は清州へ行くのだ。
新浜さんたちにステータスブーストの話を託してある程度時間がたった。噂のほどがどのくらい広まっているのかを実地で見学したいのである。小西ダンジョンでの布教は小寺パーティーに任せた。今日一日ぐらい、清州ダンジョンの変わり様を見ながらゆっくりモンスター退治を楽しんでも良いだろう。
今日は車で行かず電車で行く。そのほうが早くて何より命の安全を守る最大限の行動だ。俺の運転スキルではNAGOYAを走り切ることに自信を持つことが出来ない。前回がたまたま幸運だっただけかもしれないからな。
今日の清州行きの行程では贅沢な食事を取ろうとは思わない。人の目がありすぎてスキルの使用が制限されるせいもあるのだが、行き帰りの荷物を少なくしたいためだ。最低限の装備で行く。行ければ九層にも行ってみる。まずは行ってみて、それから決めよう。
バッグの中には小さいほうのテントとエアマットと枕と水と食料と装備。最低限の物だけを入れていく。食料はカロリーバーで一応全種類だ。「もうキャンプ飯じゃないと我慢できない! 」と言っていたのは誰だったか。俺だったか。
準備は出来た。後は電車が動いてる内は行き放題帰り放題だ。バスを待つ時間も無ければ開場を待つ必要もない、いつでも行けて、いつでも帰れる。それが二十四時間営業の売りの一つだ。早速出かけよう。いつもと違ってまだ早朝と言っても良い時間だ。
日は昇っているが角度は浅く、気温も涼しい。始発はとうに過ぎているので電車の本数はある、慌てる必要はない。ダンジョンは逃げない。いつもの調子で駅に向かい、そのまま真っ直ぐ電車だけ乗り継いで行けば清州駅には着く。
道中狩場をどこにするべきかを考える。四層にするか九層にするか。四層は人の通り道として結構な人の出入りはあったが、巡ったことのない場所を巡っていけば美味しい狩場にありつけそうな気がする。が、小西のほうが濃密な狩りが出来るのは間違いないので今日は止めておこう。
そのまま七層に降りると考える。七層では、テントさえ立ててしまえば多少保管庫のスキルを使ってても怪しまれない程度にはできるだろう。だとすると七層で小休止してから更に下層に出かける事にするかな。
出来るだけ嵩のあるドロップ品は拾いたくない。つまり清州の茂君は今日はスルーだ、羽根は大きな荷物になるからな。それに人目があるだろうからいつもの方法でダーククロウ狩りとしゃれこむのは無理があるだろう。
八層もダーククロウはそれなりの数が湧いているがスルー。頭上警戒だけして基本的にワイルドボアだけを狩る。九層では思いっきり狩りが楽しめそうだ。九層の階段付近で軽く体を慣らしつつ進めば無理のない探索になるかな。
考え事をしている間に清州駅に着いた。駅から徒歩数分、清州ダンジョンギルドの建物が見えてくる。建物とダンジョン入口は三百メートルほど距離が離れているが、ほぼ現地到着と言っていいだろう。一応建物のほうに入り、手持ちの清州九層以下の地図を見比べて違いが無いかどうかを確認する。
やはり清州でも九層から十二層にかけての中央部は空白のままか。む~ん、何が有るかますます気になるな。もやもやを抱えつつダンジョンのほうへ向かう。ともかく潜ってみよう。後のことは潜ってから悩めばいい。
時間的にもう起きているであろう文月さんに「清州潜ってくる」とだけ伝えておく。
入ダン手続きを済ませ、久しぶりの清州ダンジョンを楽しむことにしよう。相変わらず防空壕みたいな入口だな。信長と濃姫像というランドマークをぶち壊して出現した清州ダンジョンではあるが、見た目に反して中は広い。さすがに清州ダンジョンの構造までは暗記することは叶わず、順路に沿って下層へ降りていく。
清州ダンジョンの一層は広い。広いが、それでもスライムの居るような気配はしない。おそらくバニラバー片手にうろつく探索者がまだまだいるのだろう。三勢食品が頑張っている証拠だ。
同じ方向へ向かう探索者もいる。これは一匹にも会うことなく二層へ行きそうな気がする。スライムが現れたら同時にバニラバーの袋を開けてスライムを呼び寄せようとする探索者が群がる。餌をやれる動物園の感覚だ。
スライム狩りをしたいのは山々だが、これは諦めたほうがいいだろう。俺の周りでは五人ほどが同じ方向へ向けて歩いていく。二層三層四層を目指しているのだろう、ただまっすぐスライムに目もくれずにまっすぐ歩いていく。
この人たちについていけば地図を確認しながら行かずに済みそうだ。安心して先導を任せられる。そのまま速足気味に四十分ほどかけて一層をただひたすら歩く。二層への階段が近づいてきた。ここまでの収入はゼロ円だ。どこかで稼いで帰らないとな。
二層へ降りたが、一層とあまり変わらない雰囲気を感じる。グレイウルフとスライムを相手にできる探索者は肉を集めつつスライムでも稼いでいくんだろう。一緒に階段を下りた人たちはそのまま三層へ向かうらしい。地図を見ながら方向を確かめる。
グレイウルフが横道から現れるが近い人が順番に狩っていくような形になっている。狩りがしたければ道の端を歩いていくような形だ。後ろを振り返るが、人が途切れるような感じはしない。これは二層もダメだな。まぁ小西ダンジョンでも最近はウルフ狩りもご無沙汰ではある。気にすることではないだろう。
三層までそのまま歩くだけの行程となった。まるで富士登山の五合目から六合目までの間だ。ぞろぞろと歩いては、途中で休憩したりしている人が居る。これが清州ダンジョンだったな。階段前は特に混む。
三層への階段へたどり着いたが、やはり休んでいる人は居る。休んでいる人を囲むようにモンスターがこないか構えている人も居て、安全策は万全のようだ。しかしここでまだ休むほど疲れてはいない。そのまま三層へ潜ろう。
三層になるとちょっとずつ人が減っていく。ゴブリンとグレイウルフを狩るのが初心者探索者であり、ちょっと前までの俺もそうだった。ゴブリンは十分に美味しいモンスターである。安定して狩れるなら一時間に一万円ぐらいは稼ぐことが出来るだろう。でも清州の人口密度ではそこまではいかないか。
そのまま四層へ向かう。四層へ向かう人はおそらくそのまま七層まで行くのだろう。そこで、三層の階段で一旦休憩をはさむはずだ。四層ではソードゴブリンが出るし、五層から六層にかけてはサバンナマップで全方位に注意を向けないと真後ろでポップする事も有る。
休むのにベターなポジションが三層の四層側の階段という事になる。おそらく周りの人もそこで休むだろう。しばらくは楽に行けそうだ。
そう思っていたが気が付くと自分が先頭を歩いている。どうやら俺の前に居た人たちは三層で散っていったようだ。ここで俺が道を間違えたらどうなるんだろう。みんな付いてくるのかな。一応地図を見ながら方向を確認する。
すると、前方からゴブリンが三匹現れた。やっと戦闘か、待ちかねた。グラディウスを片手にステータスブーストをかけて十秒ほどでゴブリンを三匹とも片づけてしまう。ドロップは魔結晶。今日初めての収穫だ。
後ろを見ると、俺の動きに驚く人は居ない。つまり、ステータスブーストをかける人はその辺にいっぱいいるという事だ。一つ確認できた。それなりに広まっている、もしくは使える人はそもそも少なくなかったということか。
一つ確認事項をクリアできたところで落ち着いて前へ向かう。五分ほど経つとまたゴブリンが二匹出てきた。同じように十秒かからず処理を終える。今度も魔結晶が出た。今のところこの二つしか稼ぎはない。
このペースで果たして今日は稼ぎを持ち帰ることが出来るだろうか。九層でゆっくり狩りを満喫できればワンチャンあるな、ぐらいの気持ちで進もう。ここは純粋に移動するための時間だ、途中でドロップ出ればラッキーぐらいの気持ちで進もう。俺は足を速める。
四層の階段に着いたので水を一口二口。ふぅ……と深呼吸をし、すぐさま五層へ降りる。この人口密度ならモンスターリポップに襲われる可能性も低いだろう。にしても今日は前に来た時よりも人が多いな? 何かの日なのだろうか。
スマホのカレンダーを確認すると今日は金曜日だった。俺はどうやら曜日の感覚を捨て去ることに成功していたらしい。ますます社会復帰が遠のいた気がする。そうか……金土日で一泊二泊して帰る探索者の群れなのかこれは。
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