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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第三章:日進月歩

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161:かえりみち2

今日こそは誤字が無いぞという気持ちを持ったまま継続0日で一週間が経過しました。


 

 五層に上がると人が居た。階段を上ったところで休憩している人が居る。あの風貌は多分田中君だ。


「おはよう、休憩中? 」

「あ、安村さん。おはようございます。ちょっと六層で頑張ったんで休憩中です」

「道理で。おかげで楽できましたよ」

「ははは、取り分取ったみたいで悪いですね」


 あまり悪そうにはしていないし、こっちも悪いと思っていない。ビジネス定型文みたいなものだ。探索の機会を失わせて悪いね。いやいや、ちょうど移動していただけだから問題ないですよ、という奴だ。


「じゃ、お先に。これ差し入れ。じゃぁお気をつけて」

「お気をつけて」


 挨拶代わりにちょっと冷えた水を渡すと四層へそのまま向かう。道中ワイルドボアがチラホラとこちらへ向かい突進してくる。


 突進してくる相手には突進で返そう。こちらからお出迎えして突進し返す。手首を痛めないようにしっかりと固定して突進にグラディウスで立ち向かう。


 相手の脳天に叩き込んで黒い粒子に還す。何十何百と繰り返してきた行動だ。今更失敗することも無い。落ち着いて対処する。


 ドロップは出なかった。出るか出ないかで言えば出たほうが嬉しい。しかし荷物が一杯の今はちょっとだけ嬉しくない所がある。できればさっさと上層へ上りたいのが本音だ。


「何も出なかったですね」

「まぁ毎回出てもそれはそれで……殴る個所によってドロップする部位が変わったりはしないよな」

「綺麗な形で殴ったほうが革が落ちやすいとか?」

「そんな感じ。毎回同じ殴り方しかしてないけど変えてみるのも一興かもしれないな」


 ワイルドボアのドロップ確定作業か。結構遠くからこっちを見つけては突進してくるあたり、食い物で釣ることは出来ないだろうな。倒し方か……暇があったら考えてみるのもありかもしれないな。


 道中の木にダーククロウは五、六羽止まっていた。全部狩っていっても問題は無いが、無視する。


「あれ、狩らないんですか? 」

「田中君が見る可能性がある。【水魔法】を大っぴらに使いたいなら見せ場としてはアリだと思うがどうする?」

「じゃぁ一本だけやります」

「だったらここでやってしまおう」


 文月さんの【水魔法】を他人に見られるのは悪い選択肢ではない。二人で通った後はダーククロウが残っていないとみられた場合、文月さんが防波堤になってくれるし。


 ん、だとすると無視する理由が範囲収納見られたくないぐらいしかないな。


「よし、全部やってしまうか。ただし収納は使えないから手で拾う事になるぞ」

「面倒ですがそれが最適みたいですね……よし」


 文月さんが目の前のダーククロウに意識を集中しだした。


「その集中する時間も短くできればより効果的に使えるようになるな」

「そうですね、でも安村さんも結構タメ時間かかってますよ」

「早くできるよう努力する」


 やがて、文月さんの手元から水の刃が幾筋も飛び出す。水の刃はすべてのダーククロウを真っ二つに切り裂き、黒い粒子に還す。いつも通り羽根がはらはらと舞い散り、魔結晶がボトボトと落ちる。


 面倒くさいが一つずつ収納だ。魔結晶と羽根を拾いきると、念のため範囲収納を一回使っておく。これで拾い忘れは無くなるはずだ。


 ササっと拾い終わったふりをしてまた四層に向かっていく。後ろを振り返ると田中君がしっかり目撃していたようだ。これでスキルがバレるな。田中君一人でどこまで話が広まるかは解らないが、一人知ってればその内三人四人、五人十人にやがてなるだろう。


 二本目の木にもダーククロウは居る。八羽というところかな。


「今度は俺がやるよ」

「お、いいんですか?多分後ろで見てますよ」

「まぁ、いいんじゃないかな。バレたらそういうスキルだとごまかしておくよ」


 止まっているダーククロウをターゲッティングするとすぐさまバードショット弾を発射する。文月さんよりは早く打てたはずだ。またはらはらと羽根が舞い落ちる。拾うのが面倒だな。


「よし、ターゲットの速さではまだ負けてないな」

「すぐ追いついて見せます」

「期待してる」


 さぁ次だ。次の木に向かう前にワイルドボアが三匹ほど襲ってきた。人差し指、三、一。確認。試しに、正面から受け止める以外の戦い方もやってみる。


 正面から突進を止めた後、持ち上げてそのまま地面に落下させる。プロレスで言うパワーボムみたいな感じだ。その後尻から真っ直ぐに刃を立てて前まで一直線に背中を掻っ捌いていく。


 どうやらこの倒し方ではドロップが確定しないようだ。何も出なかった。もうちょっと色々やってみるか。肉が高確率でドロップするようなやり方が見つかれば、それを狙う稼ぎ方もできるはずだ。


 ……と、ドロップ確定はしないんだったな。いかんな、興味が湧くとついついそっちに意識をもっていかれてしまう。それにそのぐらいの努力は他人がしているだろう。「そうじゃない」という作業を再び行って「そうじゃない」ことを確定させても意味はない。


「また何か良からぬことを考えていましたね」


 外付けの制御装置に感知されていたらしい。最近精度が上がっているな。


「今回はすぐに正気に戻った、これは一種の癖だな。ワイルドボアの倒し方でドロップがある程度収束しないかと思って」

「肉が多めに残る様に倒すとか、革を綺麗に剥いでから倒すとか? 」

「大体そんなことを考えていたが、やめた。もう誰かがやってそうだし」

「そうですね、やるにしても誰もやってないことを確認して、それからリストアップしていったほうが効率的ですね」


 仰る通りだ。もっとスライムの時みたいに何かこう、閃きみたいなものを感じるのを待とう。それまでは退屈だがいつもの倒し方に終始するほうが効率が良い。


 五層最後の木までやってきた。文月さんは早速狙いをつけると、さっきより早いタイミングで水の刃を射出する。見事すべてに命中させることが出来た。


「後は空中飛んでるのに当てられれば命中精度は百点。威力は……まだ及第点だな。初日としては二百点ぐらいあげてもいい」

「わーい高評価」


 実際、一日でここまで出来れば秀才であると言っていいと思う。普段俺が使い方を口に出して説明しているからか、呑み込みが早すぎる。これはボーっとしてると追いていかれるかもわからんね。


 気を新たにすると、四層の階段を上る。時刻は七時。真っ直ぐ帰って朝一番の探索者とすれ違う時間ってところか。


「一時間ほど時間潰す? それともまっすぐ行ってスライム潰す? それともゆっくりいってスライム潰す? 」

「安村さんがスライムをすり潰したいのはよく伝わりました。とりあえず三層階段手前で荷物整理しましょう。その後で考えましょ」

「わーい」


 やった、潮干狩りだ。三十分ぐらいできるといいなぁ。ワクワク気分で四層を走り抜ける。出合い頭にゴブリンをなぎ倒してはドロップを拾い、磨り潰してはドロップを拾い、切り倒してはドロップを拾い、ものの三十分ほどで階段にたどり着いた。


「スライム狩りになると元気になりますね」

「だってスライムだよ? 最近はバニラバーねだりに寄ってくるんだよ? 可愛いよね? 思わず潮干狩りたいよね? 」

「ウェイト、ウェイト、圧が凄い。とりあえず保管庫の中身出してください。はい、その場でジャンプしてー」


 ジャンプすると保管庫から魔結晶が飛び散る……わけでもなく、チャリンチャリンと小銭を鳴らすわけでもなく、背中で革がガサガサ音が鳴っている。


「じゃ、出すからエコバッグの準備お願い」

「はいよ」


 保管庫から重さが均等になる様にエコバッグに荷物を詰め始める。背中のバッグにはポーション系を詰めていこう。割れると困る。羽根は……羽根はいつか纏め売りするか。さすがに手に持てる量ではない。いつか売ろういつか売ろう……と言いつつどんどん増えていく可能性も高いのだが。


 肉で二袋、牙と魔結晶で一袋、魔結晶だけで一袋を消費した。さすがに重さを感じる。いつもの遊園地帰りのパパスタイルで三層から一層までまっすぐ歩く。露払いは文月さん任せだ。


「……しまったな」

「どうしました」

「まだ七時半だ。別に今やる必要なかった。それに七層で詰めてこっちへ持ってくればよかった」


 どうして今日は思いつかなかったのか。早速保管庫にエコバッグごと収納する。


「次回に活かそう。というか俺が寝ぼけていただけか」

「そういう日もあります。次回からはちゃんとしましょう」


 改めて三層へ上がる。文月さんはここぞとばかりに【水魔法】だけでゴブリンを殲滅していく。後先構わず使える階層なのですこぶる楽しそうだ。俺も最初はそんな感じだったっけかなぁ。


 真っ直ぐ三層を上がり二層へ。二層でも文月さん無双は続いた。俺は後に続いてドロップを拾う役目だ。もう彼女一人で良いんじゃないかな。


 さすがに開場前だからなのか、リポップしているグレイウルフの数はそれなりに多い。あまり狩りすぎても朝一探索者に悪い。ここは通り道だけにしておこう。


 一層へ上がる。さぁ俺の出番だ。早速側道に向かい、いつもスライムが溜まっている現場に急ぐ。時刻は八時半。三十分はスライムを相手に潮干狩りできる。


 早速例の部屋その一へ急いだ。やはり予想通りというべきか、スライムが大量にポップしている。この壁一面のスライムを俺は待ちわびていたんだ。腰の熊手を片手に早速スライムの潮干狩りを始める。


 相変わらずスライムは人を見かけるとぐにょーんと体を伸ばし、バニラバーをねだるような仕草を見せる。誰だろうな、スライムにこんな動作を覚えさせたのは。


 おかげで核の位置がとても狩りやすい位置に来てくれている。


 グップツッコロンパン。グップツッコロンパン。

 グップツッコロンパン。グップツッコロンパン。


 何時もの音が響き渡る。テンポのいい音が部屋に響く。文月さんも暇なのか、俺から熊手を一つ奪い取るとスライムを潮干狩りし始めた。二人でやると処理も早い。百匹近く居たスライムはあっという間に居なくなっていた。


「ふー、満足した」

「さいですか」

「さて、エコバッグを出して改めて出口に向かうか」


 エコバッグをそのまま取り出すと、両手に持つ。後は出口に向かうだけだ。時間的に丁度開場時間ぐらいだろう。


 道中のスライムは無視していく。さすがに満足した、無益な殺生はしないのだ。


「いいんですか、結構数居ますけど」

「いいんだ。開場すぐに来る探索者の分は残しておかないと不満が出てこっちにヘイトが向いても困る」

「なるほど。ちゃんと考えてるんですね」


 納得したのか、これ以上スライムを狩るのに飽きたのか、それ以上追及されなかった。出入り口に着いたのは開場五分前だ。多分出入口の反対側には俺たちとは逆の理由で待ってる探索者が居るんだろう。


「今日の実入りはどんなもんですかね」

「売らない分を含めない計算だけど、税抜きで七十万ぐらいじゃないかな」

「これはまた一杯稼ぎましたね。金額が金額なので振り込みでしょうけど」

「札束持ち歩く勇気は俺にも無いぞ」

「保管庫に放り込んでおいたらどうなんです? 」

「どうせ銀行に預けに行くんだから振り込みで十分でしょ」


 半分で割って三十五万だ。芸能人でもないのにそんな金額を持ち歩く理由は無いだろう。


 雑談をしているとダンジョンが開く。ダンジョン反対側で俺たちが待っていることに驚く、今入ダンしてきた探索者達が居る。見知った顔も居るが、今帰ったという感じでさっそうと両手に荷物を抱えながらすれ違う。


 俺は今夜頑張った。みんなは今から頑張ってほしい。そんな思いを後にダンジョンを出た瞬間両手に重みを感じ始める。これは結構きついな。指先の苦しみに耐えながら退ダン手続きをする。


「昨夜もお楽しみでしたね? 」

「えぇ、大分楽しめましたよ」


 何時もの受付嬢の軽口を躱すと、退ダン手続きを済ませギルド建物へ向かった。


 そのままギルドの査定カウンターへ向かう。


「朝帰りお疲れ様です。今日も大量ですか」

「えぇ、覚悟しておいてください」

「十分ほど時間くださいね。多分この量は再確認が必要そうですから」


 やはり多いらしい。大人しく待つ間に、ウォータークーラーで冷えた水を飲む。やはりキンキンに冷えた水は美味しい。涼しさが体に染み渡る。ちょっと頭がキーンとなるが。


 査定が終わりエコバッグを返してもらう。そして二分割してもらったレシートには三十六万八百二十八円の金額が記されていた。ここ最近で一番多い金額じゃないかな。


 大人しく待合室の椅子で待っていた文月さんにレシートを片方渡す。


「おー今回も大漁大漁」

「俺はこの金で自転車を三台ほど見繕ってくる」

「七層設置用ですか。そこまで小西七層に固執する理由が?」

「楽できることは楽したい。それに面白いじゃん、突然自転車が生えたら」


 突然増えた自転車。元あった場所に返してねの文字。一体だれがこんなことを。反応を想像するだけで楽しみだ。


「このペースで狩ればCランクも近づくんですかね」

「どうだろうね。いくら稼いだらCランクになるかは解らないけど、近づきつつあるのは確かだと思う」

「Cランクになればお待ちかねのオーク肉ですよ、オーク肉」


 待ちに待ったオーク肉か。いったいどれほどの味わいと感動を提供してくれるのか楽しみだ。


「その前に十層突破の方法を考えないといけないな」

「手数は増えたと思います。そこでどこまで通用するかはいつか試さないといけないですね」

「そうだな。とりあえず今日はここで解散だ。お疲れさまでした」

「お疲れさまでした。また次宜しく~」



何時もは駅でお別れだが、今日はギルド建物内で解散することにする。次はいつ潜るかな。



作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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