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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第三章:日進月歩

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157:九層RTA再び


 

 タイムアタックが始まった。二人、戦闘状態に入り完全に聴覚を周囲のモンスターの息遣いに集中させ、発見したらハンドサインで合図を送る。敵が出た方向に指先を向けて、親指を立てたらジャイアントアント、人差し指を立てたらワイルドボア。


 その後に匹数を知らせ、更にその後自分が何匹対応するかを指示する。理解したら手をあげて了解する。伝わらなかった場合に声を上げる。


 そういう仕組みを二人で作っておいた。理由は文月さんが戦闘行動中に新しいグループを発見した時に声をあげて舌を噛み、悶絶したからである。


 いくつか案を出して試し、試行錯誤を繰り返した結果この形になった。


 視界内全てを把握できるように移動しながらパチンコ玉を緩く当てて、それを避ける練習とか、色々したなぁ。最初は食らいっぱなしだった文月さんも最終的に勘で弾き飛ばすようになってきたし、どんどんダンジョン内での活動が人間離れしてきた感がある。


 親指、三本、二本。 ジャイアントアント三、二対応する。 というハンドサインを受け、手をあげて対応する。考えながらでも視界内は全部見えてるので後はこっちに近い一体を処理するだけだ。これによりおよそ三十パーセントぐらい狩りの成果が上がった。


 狩る時間が短くなればその分探す時間が増え、探す時間が短くなれば歩く時間が増え、歩く時間を短くすれば狩る時間が長くなる。そうやって数日掛けて積み重ねていった成果だった。


 十五分経過する。ここまでのドロップがジャイアントアント魔結晶が二十、ワイルドボア肉が八なのでおよそ四十体と二十五体倒した計算になる。このペースで行けば一時間に二百五十ほど狩れる計算になる。


 これだけ密度が高い戦闘を楽しめるのは小西ダンジョンならではだろう。この層まで潜ってくる探索者は七層のテントの数からして四パーティーほどだ。その中にはよく顔を合わせる小寺さんたち四人も含まれている。


 清州ダンジョンならCランク探索者もテントの数も多い事からそこまで空いている階層とは言えない。だが常時一パーティー未満という探索者密度の低さから、狩りの時間効率と周回効率、そして自分たちの実力を高めるためにも打ってつけの道場みたいな位置になっている。


 もしかしたら今他のパーティーが巡っているかもしれないが、来るとすれば前からだろう。あらかじめ耳で敵の方向を察知し、敵の密度が濃そうなほうから巡ってきているので、十層の階段辺りでばったり出会うかもしれない。そうなったらRTAは中断だな。


 ジャイアントアントもどこに上手く刃を滑らせれば正面から打ち倒せるかもわかってきた。酸が飛んでくる予備動作も読み切った。ジャイアントアントについては、もう何が来ても驚かないように体も心も慣れた。だとしたら後ここでやることは一方的な狩りだけだ。


 ワイルドボアは得意の突進で突っ込んでこない以上ゴブリンより安心できる相手だ。もうここでやる事と言えばドロップの拾い忘れをしないことぐらいだろう。


 以前ジャイアントアント六千匹倒せば次のステップに行けるんじゃないか? みたいなことを二人話していたことを思い出す。既に六分の一ほどは達成できている。文月さんの借金を返し終えるのが先か、六千匹倒すのが先か、みたいなところまできている。


 三十分経過した。ここまでのドロップがジャイアントアント魔結晶が四十二、ワイルドボア肉が十八なのでおよそ八十四体と五十九体倒した計算になる。さっきより更にペースが上がったな。これはもしかしてサブミッションを選択する時期が来たかもしれんな。ちょっと後で提案してみるか。


 親指、三、二。手を振る。狩る。ドロップ拾う。


 ひたすら無言で、お互い舌を噛まないように努力する。文月さんは遠間の牽制に【水魔法】を加え始めた。後ろからの酸はほぼ飛んでこない。どうやら打ち出される前に尻を切ってるのか、同等の圧力の水流を押し当てて相殺しているのか。俺より牽制が上手いかもしれない。


 人差し指、三、一。手を振る。ワイルドボア二頭担当だ。担当のワイルドボアは……居た。文月さんに向かおうとしているが此方のほうがより近い。相手の頭に回り込んで一閃。次、もう一頭を横から滑り込んで貫く。ドロップ肉拾う。


 親指、三、二。手を振る。狩る。ドロップ拾う。

 人差し指、三、二。手を振る。狩る。ドロップ拾う。

 親指、二、一。手を振る。狩る。ドロップ拾う。



 やがて階段が見えてきた。どうやら半周したらしいな。手を後ろに送るハンドサインを送る。少し休憩のサインだ。


「あー、狩った狩った。ここまでで何匹?」

「合計百七十ぐらいかな。時間に直すと……二百五十ぐらいはいける」

「じゃあ、あと二時間続ければ七百匹は堅いね」


 まだ冷えたコーラを受け取りながら一息つく。こっちも冷えた水を一口飲んで水分を補給する。ここは蒸し暑いからな。適度に水分を取らないと汗として出て行ってしまう。


「なんか食べる? 」

「今はいいや。ちょくちょく魔法挟んでるけど今のところ問題なし」


 使い方を節約し始めたんだろう。使いすぎてここでへばるのは不味いと思っているらしい。


「さて、残り時間も行くか。それとも別のことをするか」

「別のこと? もしかして十層行くの? 」

「それも考えとしてはありだが、森の中心に向かってみるのもアリかなと」

「なるほど。チャレンジする価値はありますね」

「とりあえず足を踏み入れてみて、十層よりきつそうなら急いで退却するというのでどうだろう」


 俺も実際不安なところがある。視線の通りづらい森の中で相手のリポップとエンカウントに対処しきれるかどうか。判断に迷うところだ。その判断を鍛えるためにも一度入ろうと試みてみるのもアリだ。


「どうする? 危険に無理に踏み入る必要はないが、あくまで手の一つとしてだ」

「う~ん、二人だとやっぱり不安ですね。他のパーティーが通りがかってそこと合同で……みたいな感じでなら何とかなりそうですが、なんというか、やばそうです」

「そうか、じゃあまたの機会に取っておこう。さ、続きやるか」


 五分ほど休憩しての再活動だ。八層側の階段へ向かって外側をぐるりと回る。


 人差し指、二、一。手を振る。狩る。ドロップ拾う。

 親指、三、二。手を振られる。狩る。ドロップ拾う。

 親指、三、一。手を振る。狩る。ドロップ拾う。

 親指、二、二。手を振られる。狩る。ドロップ拾う。

 人差し指、三、二。手を振る。狩る。ドロップ拾う。


 無言でひたすらに槍とグラディウスを振るい続ける二人。時間まであと十五分。親指、三、一。手を振る。ドロップ拾う。う~ん、行かないと決めると途端に中央部に本当に何もないのか、何かあるのか気になるな。


 文月さんから、よそ事を考えてないで集中しろ、という視線を一瞬受けた気がする。すいません、やっぱり中央部が気になります。


 より奥に視線と意識を送ってみる。視界内には現在相手しているモンスター以外の影は見えない。しかし、何かいるような気がする。地図を空白にさせ続けているのはそいつが原因なのか。それとも絶え間なく襲いくるモンスターが探索者を阻むのか。今度清州で情報集めしてみるか。


 そういうことで狩りに集中する。人差し指、三、二。手を振られる。狩る。ドロップ拾う。集中集中。今日はどのくらいの稼ぎになるか楽しみだ。人差し指、三、二。手を振る。狩る。ドロップ拾う。


 途中、一組のパーティーと出会った。どうやらこっちと逆方向に歩いてきたらしい。小寺、大木、中橋、野村さんたちだった。


「やぁ安村さん。こんな所で奇遇ですね」

「どうもこんばんは。順調ですか」

「おかげさまで大分パワーアップしまして。九層巡るのも随分速く巡れるようになりましたよ」

「文月ちゃんもこんばんは。今日も気合入ってるね」

「それ女の人に向けて言う言葉ではないのでは」


 文月さんが口をとがらせて抗議する。が、決して仲が悪い訳ではない。ちょくちょく九層で出会うのでお互い知った仲、という感じである。


「そういえば……皆さん、一つ聞きたいことがありまして」


 俺が意を決して聞く。


「なんでしょう、私の耳に入りきる話なら良いですが」

「このマップの中央、一体何があるんです? 」

「それは私も知らないんですよ」

「さすがに腕に自信も付きましたし、地図を埋めるために行きたいとは思ってはいるんですが」

「何故かこう、人を寄せ付けない雰囲気がありますよね」


 小寺パーティーが口々に行きたくない感覚があると言っている。


「清州ダンジョンで情報収集をしてみたら解りますかねぇ」

「清州ダンジョンなら探せばついてくるパーティーも見つかるかもしれませんね」

「九層道なりを難なく突破できても中央部には誰も入らない……不思議ですね」


 これもダンジョン二十四の不思議に入れておくか。


「とりあえず二人で挑むのは無謀という事が解っただけでも収穫ですかね」

「二人で……あぁ、安村さんたちなら不可能じゃないかもしれませんね」

「でも四人と二人じゃ手数も把握できる範囲も違いますからね」

「それでも二人で我々四人と対戦するとして、私たちに勝ち筋がどうも浮かばない気がします」


 そこまでのものかなぁ。同時に二人にかかってこられたら対応に手間取るのだが。


「ま、大人しく九層をぐるっと回って狩りに勤しむとしますか」

「そうですね。我々は十層にもう一度チャレンジしますよ」


 小寺パーティーは十層へ行くようだ。四人でならなんとかなるか。やはり人数が多いというのはアドバンテージだな。


「ご安全に」

「ご安全に」


 小寺さんたちと別れ、再び狩りに戻る。さすがに人が通った直後なだけあって、モンスターの数は明らかに減っている。


 仕方ないので森側へ少し寄ってモンスターから探知されやすいように歩くことになった。それまで独占できていたのだし、文句は誰にも言えまい。



作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >「文月ちゃんもこんばんは。今日も気合入ってるね」 ちゃん付けって、セクハラになるんですよ?知ってた? 世の中のおっさん達、気をつけてね。
[一言] ドローンは無いのかな?
[良い点] 日常感、女性として意識しなければ対応は普通ですよ。 [気になる点] 性欲無い? 不潔 汗かいた他人が寝具使ってもおkなため ほぼ貯金なしの人が使用料金取らない理由? [一言] 人をけなすコ…
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