155:仮眠から目覚めて みんなの香りのこもった布団
今日中に一千万アクセス達成すると思います。
当初目標の目標の十倍も観てくれる人が居るなんて感激です。
もうちょっと続くので切れ目までは楽しんでもらおうと思います。
あと訂正というか仕様をはっきりさせるために数文追加しました。水魔法からはお湯は出せないって事で一つお願いします。
仮眠から目覚めた。アラームが鳴り、午後九時であることを教えてくれている。寝起きはスッキリしている。枕様様だぜ。隣のテントの様子をうかがうが、どうやら熟睡しているようだ。動いてる気配が無い。
とりあえず起き出して隣に声をかけておこう。
「ぉぅぃ時間だぞぅ」
「んー……おはようございます」
若干寝ぼけてそうだが、すぐにシャキッとなったらしい。はっきり返事が来る。
「午後九時だけどな」
「これ気持ちいいねー。気に入ったー、買うー」
「枕は布教用だから譲るぞ。ただし布団はダメだ。七層共有用だ」
「自力でアレを狩れば作れるのか……頑張って【水魔法】を物にして見せる」
どうやら目標が一つ出来たようだ。多分狩ったとして地上まで運ぶのは俺の仕事だろうな。テントに貼ってある紙皿をはがすと、テントに戻り身支度を始める。寝ている間に少しだけ汗をかいたようだ。一応拭いておこう。
文月さんはもう少し身支度に時間がかかるだろうし、その間に全部脱いでさっと汗を拭いて着直せばそれでいい。
ささっとツナギを脱いでパンツ一枚になると、保管庫からタオルと冷えてない水を取り出し、水で浸して体を拭く。拭いたタオルは保管庫へ。
四十代男の身支度なんてこんなもんである。後は精々目をこすって目やにが残ってるかどうか確認するぐらいが精々だ。
早々と片づけをすると、まだダンジョン内に居るという痕跡を残すためにバーナーとスキレット、椅子をテント内に残していく。
そして「お出かけ中 安村」の札をテントにペタリと貼る。これで出かける準備は一応できた。
暫くストレッチして体をほぐしていると、敷き布団と共に文月さんが出てきた。
「それそんなに気にいったの? 」
「いや、洗濯して返そうと思って。他人に自分の臭いが付くのはちょっと……」
あぁ、なるほどね。それは確かに必要だな。それはそれで需要があるとは思うが。
「じゃぁもう暫く体を動かして待ってるわ。コーヒーか何か飲む? 」
「じゃぁ私の分もついでにお願い」
「よしきた」
再度布団を洗濯するために【水魔法】で水を作り出し始めた。その間に片づけたはずのバーナーを再度持ち出し、水を温め始める。
お湯が適度に沸いたところでインスタントコーヒーを二杯分作る。残りは文月さんの分だ。コーヒーを一口飲む。苦味が口の中を覆い、頭の中でキュッという音がしたような気がする。カフェインが徐々に体を侵食し始めている音かな。
わざわざこんなところで豆から挽く手間をかけるつもりも無いのでインスタントだが、場所が場所だけに満足な気分を味わえている。目も冴えてきたな。これでこれから一杯探索できるぞ。
洗濯のほうは順調に進んでいるようで、まず全部を濡らした後一旦全部出してカバーを乾燥、その後でちょっとずつ中身の羽根を乾かしていくという手間のかかるが確実な手段で順調に中身を詰め始めている。もうすぐ終わるだろう、お湯を火から下しておくかな。
この後は八層を通過して九層でいきなり狩りに入るか、それとも八層のダーククロウ相手に文月さんの仕上がり具合を見るかどっちかだな。あまり数が溜まっていなければ試しに打ってもらうほうが本人も上達の具合が解って良いのではないか。
九層ではおそらくまだ通じるほどの威力は出せないだろうし、牽制で遠間の相手に向かって打ってもらうぐらいになるだろうな。
あれでジャイアントアントを一撃できるようになれば俺の保管庫アタックとも威力バランスが取れる、中近距離両用のアタッカーとしていいポジションを掴めるはずだ。
何処まで遠くを攻撃できるかは今のところ分からないが、これもその内ダーククロウを遠距離狙撃してもらって試し打ちしてもらうか。ダーククロウの耐久力の無さが威力テストになっているのは少しかわいそうだが、その装甲の薄さが悪いのだよ。
どうやら洗濯が終わったようだ。無言で戻ってきてお湯をコーヒーにそそぐと一口飲む。
「ちょうど飲み頃の温度でした」
「それはなにより。気が済むまで洗濯できたかい? 」
「洗剤があればより良かったですね」
そこまで拘るか。まぁ洗剤ぐらいなら問題ないだろう。
「今度無香料の洗剤を入れてくるよ。なんならそこそこの大きさのたらいでも持ち込むか? 」
「無香料にこだわりでもあるんですか? 」
「あの羽根の香りに誘眠成分が含まれると思うんだよ。香料付きのだと効果が薄れそうでさ」
「なるほど、たしかに安らぐ香りがするような気がしますね。香りは大事ですね」
「そういえば【水魔法】ってお湯は出ないの? 」
「試してみましたが、水を加熱したりするのはまた別なスキルみたいです。ほら、カップラーメンの外国の探索者さんもわざわざ加熱してましたし。多分、温度調整は【水魔法】の範疇に入ってないみたいです」
文月さんは一気にグイッと飲み干すと紙コップをくしゃくしゃにして立ち上がる。
「さぁ行きますか九層」
「気合入ってんねぇ」
「早く試したいんですよ。この二回の洗濯でどれだけ技量が上がったかを」
「そこまで洗濯に気合入れてたの」
まぁやる気になってくれたに越したことは無い。バーナーを今度こそテントに戻すと椅子を片付け、テントに「外出中 安村」と貼り紙をしておく。
「テントどうする? 片づけるならこっちにまとめて入れとくけど」
「じゃぁそうしましょう。このテント片づけ楽でいいですね」
「唯一の問題点はきっちり両手足を延ばして眠れない事かな。さすがに俺にはちょっと小さい」
「大き目のテントを張ってしまって、そこに張りっぱなしにするのは?」
「選択肢としちゃありだな。今使ってるテントは清州へ行く時用にしといて、こっちに常時自分用のテントを置きっぱなしにしてしまう、と」
なるほど、今のままの小西ダンジョンなら十分にありだな。今のこれ、軽いしキャパ取らないし持ち歩きには便利すぎる。
「今度自転車と一緒に大きいのを探すか……」
「自転車は諦めないんですね」
「実際便利だし、楽だし、鈴鳴らせるし」
「鈴鳴らせるところにメリットが見出せませんが、まぁお好きにどうぞとしか」
「さぁ、やる気が満ちているうちに出発すんべや」
「行きましょう、ダンジョンが私たちを待っています」
「既にダンジョンの中なんだけどね」
他の人の様子を見つつ、シェルターの中を見て回る。すると、紙皿が散乱していた。
「めちゃ気持ちよかったです。何処で売ってますか 田中」
「極上の睡眠でした。誰か解りませんがありがとうございます 大木」
「ここまで来た疲れが吹き飛びました 小寺」
感想文が紙皿で添えられていた。無いであろう分も考えると色々な人が利用していたようだ。
「洗濯しておきました」という紙皿を一番上に置くと、布団を軽く畳みなおして改めて八層に向かって歩き出す。
「なるほど、洗濯したくなるわけだ」
「男の人ってあまり気にしないんですかね」
「まぁ、気になるかどうかと言われたら気になるが、場所が場所だからなぁ。洗濯風景見られることになるけどそれはいいの? 」
「その時はその時で素直にスキルで洗ってますって言えますから」
文月さんは胸を張る。いいなぁ、人に堂々と言えるスキル。
「そういえば試したいことがあるんだった。ちょっと紙コップに水出して」
「はい、どうぞ」
コップに並々と注いで来る。いやそこまで一杯は要らないんですけど。とりあえず舐めてみる。味がしないな。少し口に含んですすぐと、残りは捨ててしまう。
「うん、水しか入ってないな。味が無い。もしかしたら純水かもしれない」
「それって高かったりします? 」
「残念ながら一リッター百三十円ぐらい」
「量産して儲けることは……あまり期待できないですね」
「毎日水を出すだけの機械になりたいなら止めないけど」
多分ライン工より早く飽きるぞ? 俺はお薦めしない。
「工業用途で大量に使うものだから価格も安い。たとえばフォークリフトのバッテリー液だとか、半導体の洗浄だとか使い道も幅広い。食いっぱぐれはないかもしれないが、信頼ある搬入先を見つけるだけで一苦労だろうな」
「人生そう上手くは行きませんね」
そうだよ、だから今から頑張って稼ごうな。さて、八層の階段に着いたぞ。
「どうする?八層のダーククロウが少なければ狙ってみるのはアリだと思うけど」
「やりましょう。腕前の上達を感じるためにも」
「一朝一夕でそこまで上がる……いや、上がるかもな」
そういえばステータスブーストを使った時もすぐモノにしてたものな。見て想像して学ぶという点では優秀な生徒なのかもしれんな、文月さんは。
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