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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十八章:新ダンジョンラッシュ

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1324:雷魔法六重化

 おはようございます、安村です。今日は長野県の松本市に来ています。


 芽生さんとのデートから三日後、【雷魔法】の引き合いを受けた。しかし、スキルオーブの出所先が新潟のダンジョンだったため、お互いの中間距離をとって長野の松本ダンジョンでの取引ということになった。久々の遠征である。最近はスキルオーブを買い求めるためにちょっと遠出をする機会が増えた気がするな。


 今回のお土産は信州蕎麦だと思っているが、他にも種類を探して人気の物を買って帰ることにしよう。人気とはいえわざわざ店を探しに行って買い物をするというのも面倒なので、駅やダンジョンで買える範囲でお土産を見繕う話にはなるだろうな。松本に来たからと松本城に観光に行く趣味はない。


 車で中央道を走って行くというのも選択肢だったが、神経を使うしあっちの交通ルールが解らないので素直に公共交通機関で移動した。そのほうが経費にいくらかかったかもわかりやすいしな。


 最寄駅から二時間半ほどで松本には到着できた。商談は昼頃ということになっているので、ちょっと早めに到着してダンジョン付近をふらつくのも有りだと考えて、十一時ほどに松本駅に到着するようにスケジュールを組んでやってきた。


 早速スマホで松本駅周辺のお土産屋さんをチェック。人気ランキングを見ると、そばよりも和菓子や洋菓子のほうが人気があることが分かった。どうやら長野と言えば蕎麦、というのは安直すぎるらしい。


 とりあえず松本ダンジョンへ先に向かっておくかな。タクシーを呼び止めて松本ダンジョンまで案内してもらうことに。


「お客さんも探索者? 見えないね」

「今日は商談に来たんだ。だからこうして身軽な恰好で来てる。ダンジョンには潜らない予定だよ」

「なるほどね。ダンジョンが出来てからちょくちょくこうやってお客さん拾うんだけども、おかげで商売がそれなりにうまくいってくれていてうれしいところだね」


 今日のタクシー運転手は結構おしゃべりだ。到着まで無言というのも寂しいし、気がまぎれるのでありがたい。


「松本ダンジョンはそれなりに流行ってるのかな。あんまり他のダンジョンに出向く機会がないから解んないんだよね」

「そうですねえ。遠方からくるお客さんは時々は居ますね。場所が解らないとかバスの本数が少ないとかで、ちょくちょくタクシーで向かってくれる人が居るからかなりうれしい所ではあるかなあ。バス停は最近移築されて近くを通る路線も出来たんだけどね。いかんせん本数が少ないからね。もし帰りも使ってくれるなら名刺渡すけどどうします? 」

「そうだね。お世話になることにしようかな。そんなに時間もかからないだろうし、取引して終わり……ってなら近くで休憩してもらってて、その間に商談終わらせてもう一回帰りに駅まで送ってもらうってのが時間に無駄がなくてうれしいかな」


 じゃあ……ということで信号待ちの間に名刺を受け取って、名刺に書かれている電話番号をスマホにあらかじめ登録しておく。これで足は確保できたな。


「しかし、探索者ってのは儲かるもんなんですかね。みんな金払いが良くてニコニコ支払いをしてくれるんでこちらとしては有り難いんですがね、ちゃんと稼げてるのかなって疑問に思う時があるんですよ」

「少なくとも専業できっちりやってる範囲で言えば、かなり儲かる職業だとは思いますよ。ただ、そこまで到達するのにどれだけ時間とやる気をつぎ込めるかと、良いパーティーメンバーを見繕えるか、あたりが肝になりますかね。一人で探索者やる、ってんじゃちょっと厳しいものがあるんじゃないですかね」


 俺は上澄みの中でも更に上澄みの探索者の自覚があるので、仲間と時間と努力と連携の四つが揃えばある程度達成できることを理解している。ただ、それ以上はどうか、と聞かれると割と運頼みな所はある。スキルについてもそうだし、お互いのパーティーメンバーの仲の良さや相性、そろって同じことが出来るか、そしてメンバー間でそれぞれの役割を完遂できるのか、それらにかかっていると言ってもいいだろう。


「そんなに儲かるなら私も若ければダンジョン探索者になってたかもしれませんね」

「そうなると、ダンジョンまで運んでくれる人が居なくなってしまいますからね。こうして遠方から来た身としては気軽に連れてってくれるタクシーのありがたみのほうが嬉しいですよ」

「そう言われると嬉しい所だねえ。もう五分ぐらいで到着しますよ」


 松本駅からダンジョンまではそこそこ近い。街はずれではあるものの、人口がそれほど少ないわけでもない良い感じの公園の一角に松本ダンジョンはある。これが人口密集地や駅前に突然現れたのならまた話は変わってくるのだろうが、ダンジョン付近はダンジョンがある、という需要にこたえるために新しめの店舗が徐々に増えてきたようにも見える。


「このあたり、ダンジョンが出来てからちょっと発展したのかな? 新しい店が増えたようにも見えるけど」

「そうですね、コンビニやお土産屋さんなんかは増えましたね。後は近所の民宿も泊り客が増えて良い感じに経済が回っているって感じはしますね。これもダンジョン効果って奴なんでしょうか」


 ふむ、小西だけじゃなく松本でも似たような現象は起こっているらしい、と。このダンジョンは何層まで出来ているんだろう。気になるが、今日は商談だけしに来たわけだし、いつものようにでかいバッグを背負ってきてるわけでもないので着の身着のままでダンジョンに入ってゴブリンキングを倒して、何層まで潜れるかを確かめてから帰る、なんてこともできない。


 民宿の泊り客が増えているってことはダンジョン内で宿泊する探索者は少ないのだからエレベーターは設置されているんだろうということは窺える。誰でも柔らかくて暖かい布団で眠るほうが気持ちいいし仕事の能率も上がるのは解っているからな。


「お客さん、着きましたよ」


 料金を支払い、運転手さんにお礼を言う。


「じゃ、帰りまたよろしく。連絡するので」

「解りました。その辺で休憩してることにしますよ」


 しかし、松本、寒いな。自宅周辺よりも数度低い。スーツだからまだいいものの、私服だったら寒さで耐え切れなかったかもしれない。流石に標高が違うとこうも変わるものなのか、それともこれでもまだ暖かいほうなのか。いずれにせよギルドの建物の中は暖房が効いてるはずだ、早めに入って温まりつつ、時間を待とう。


 ギルドに入ると温風が出迎えてくれた。さすがに寒さ対策はしっかりしてある様子。カウンターも小西とは違って支払い、査定、総合カウンターと三種類用意されている。おそらくスキルオーブの取引は総合カウンターのほうへ言いに行けばいいのだろう。早速聞きに行ってみよう。


「すいません、スキルオーブの取引に関する手続きはこちらでよろしいのですか? 」

「はい、こちらで承っております。本日はオファーですか、それとも取引ですか? 」


 合っていたらしい。


「本日正午に四十六番会議室で取引を行う予定の安村と言います」

「確認しますので少々お待ちください」


 どこのギルドもそうだが、取引担当と受付は別の職員が割り当てられているらしい。小西ダンジョンの規模ではまだ難しいところだが、来年あたりに増員を受ければ、もしくはギルドの建物がもう少し広くなるならこれも改善されていくんだろうか。


 奥から別の職員が出てきて対応をしてくれることになった。


「お待たせしました。安村洋一様でお間違いありませんね」

「はい、安村洋一です」

「会議室に既に取引相手がお待ちですので、早速取引と行かせていただいてもよろしいですか? 」


 もう向こうは待っていてくれたらしい。もうちょっと早めに行動するべきだったかな。一応寄り道はせずにここまで来たんだが、向こうは電車ではなく車で来ているのかもしれない。だとすると早めに到着する可能性も充分あるだろう。何にせよ、すぐに取引に取り掛かれるのは悪い話ではない。


「はい、案内のほうを宜しくお願いします」


 職員の後ろに続いて会議室へ向かう。ここもそこそこの広さを誇る……とはいえ清州ほどの規模ではなく、会議室は三つほど。多分このダンジョンの規模なら三つあれば充分回り切るんだろう。その中の四十六番の札が掲げられている部屋に通される。取引相手は四人パーティーのようだった。


「両者ともご到着のようなので、取引のほうを始めさせていただきます。今回はわたくし松本ダンジョンの中川が立会人として参加させていただきます。それではよろしくお願いします」


 お互いに礼。そして向こうからスキルオーブが提供される。


「まずはスキルオーブの確認からお願いします」


 向こうの四人が「ノー」と言いながら次々にスキルオーブを手渡していく。続いて仲介人が手を触れて「ノー」と発言し、俺の番が来た。


「【雷魔法】を習得しますか? Y/N 残り九百三十五」


 残り十六時間半というところか。結構頑張って取って帰ってきたんだな。それとも、ここまで運ぶのに時間がかかったか、新潟でも北のほうのダンジョンで産出されたものなら、時間がそれだけかかっていても不思議はないという所だろう。


「ノー、たしかに雷魔法です」


 確認をしたところでテーブルの上にスキルオーブを戻す。これで全員スキルオーブについては問題なし、ということになった。


「では、振り込みのほうを宜しくお願いします」


 振り込み端末に六千五百万円の振り込みを確かに行い、確認してもらう。


「振り込みを……確認できました。では、どうぞお使いください」


 さあ、緊張の一瞬だ。これでまたキャンセル、ということになったら目も当てられん。貴重な雷魔法のスキルオーブを二個も無駄遣いしてしまったことになる。あの時感じた気持ちよさというか爽快感というか、突き抜けるような感覚は本当に雷魔法の段階を次にあげるきっかけの予兆だったのかどうかはこの後このスキルオーブを使えばわかることだ。


 恐る恐るスキルオーブを持ち上げ、いつもの音声さんの声に耳を傾ける。


「【雷魔法】を習得しますか? Y/N 残り九百三十二」

「イエス」

「あなたは既に【雷魔法】を習得しています。それでも習得しますか? Y/N」

「イエスだ! 」


 スキルオーブが体内に沈み込み、発光を始める。前回はこの発光が途中で止まり、キャンセルされたんだったな。同じことが二度繰り返される可能性はゼロではない。実はもっと高い位置に雷魔法の次へのステップが存在していて、あの時俺が感じていたものはもしかしたら雷撃衝を生み出した時の感覚だけだったかもしれない。


 ああ、このまま光り続けてくれていればいいのに。また途中で止まったらどうしよう。そんな不安が頭をよぎり続ける。もしまた途中で止まったら、ここにいる人たちにも説明をしなくてはいけないのかもしれない。


 俺を覆う光は止まらず。前回はこの辺りで止まったんだったな。普段はこの倍の長さで光り続けるんだが、そこまで光が持ってくれるかが問題だ。心配だ、ああ心配だ、心配だ。また六千五百万円をドブに捨てることになるのか。


 もしこのまま二回ともドブに捨てることになったらそれだけで家ぐらいは買えたぞ。そんなお金を自分につぎ込んでしまって無駄にするのはさすがに気が引ける。一億二千五百万円。税込みでも半日で稼げる金額とはいえ、今回成功するかどうかで自分の実験の結果が出ることになる。


 自分の中ではとても長い時間にも思えた発光が終わり始めたのか、ゆっくりと光が弱まっていく。これは……成功か? 失敗か? どっちとも受け取れる感じだが、周りの反応を見る限り、どうやらおかしいところはないらしい。今のところ成功している、と受け取っていいのかな。立会人からも何も言ってこないし、通常のスキル取引と同じ長さでスキルの習得が出来たような感じがする。


「では、スキルは無事覚えられたということで、ギルド側からの振り込みの作業に入らせてもらいます」


 立会人が普通に取引を進めようとしている。つまり問題はなかった、ということらしい。これで、六重化は無事達成できたということかな。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
地元だからなんとなくダンジョンの場所分かった
無理だったらその場で保管庫にしまえたら良かったんだが…(立会人に保管庫バレするから無理かなぁ。)
> 松本」 レポーターのおじさん > 互いの中間距離をとって長野の松本」 誰の得にもならない中間地点 高輪ゲートウェイ官民総合ダンジョンでいいのよ > ダンジョンで買える範囲でお土産」 ダンジョン…
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