1263:自己鍛錬 3
さらに時間は過ぎ、だんだん雷槌と雷龍の発動も早くなってきた。流石に使い慣れた全力雷撃ほどの発動の速さには及ばないが、実戦で使える形にはなった。後は雷槌の発動の速さか。シュッと伸ばしてシュッとハンマーの形をだせるようになってきたがまだまだ汎用的であるとは言い難い。ハンマー用意してよっこいしょ、という形ではあるので溜めの時間は出来るだけ短くは出来たとは思うのだが、使いまわしを考えるとまだまだスピードアップの努力は必要だろう。
雷龍に関してはイメージングの効果がかなり出てきて、二、三秒で用意が出来るようになった。一秒かからず発動できる全力雷撃に比べればまだまだ遅いとは言えるし発動即着弾ではないため多少の偏差射撃が必要な点もまだまだ気になる。
しかし、のんびりとはいえ六十九層まで回れるとなったらひとりで行ける先がかなり広がったことになる。流石に六十八層へ行くことは難しいだろうが、六十五層程度ならなんとかなるということにもなりそうだ。
ドロップ品によってその日の行く先をある程度決めるという気分屋テンションでの探索が出来る。フカヒレが欲しければここに、醤油差しが欲しければ六十五層に、ただひたすら大量に敵と戦いたかったら六十四層を走って駆け巡る。
今はワニと亀、前はカニうま、その前はゴブリン……と、ダッシュ大会の会場が変わってきている。大会は走りやすくて一発で倒せてそこそこのうまみのある階層として成果を出し続けてきた。ダッシュ大会と言えば今のダーククロウ狩りもダッシュ大会と言えばダッシュ大会か。歩いても走っても時間とモンスターを倒す数が変わらないので大会目録に入れていいものかどうかは悩むが、ダッシュしてる場所であることには間違いない。
ここでもその内ダッシュで走り回ることがあるんだろうかと考えると、そのためにも技の完成も急がなければならない。同時に、走り回るだけの魔力的にも体力的にも持久力を鍛えていかないといけない。技が出来上がって撃ち続けることができるまでの魔力総量を得る。その為にもきっちりスキルを鍛えていこう。
エイもサメも敵にならないと言えばならないが、ここはダッシュ大会を迂闊に行うと複数のモンスターが一気に襲ってくる危険ゾーンでもある。エイとサメは、ここまでのモンスターに比べて探知範囲が広い。おそらく高度の都合もあるだろうが、こっちの索敵の範囲とほぼ同等の探知範囲を持っている。索敵を多重化している芽生さんなら問題なく戦えるのだろうが、索敵だけではちょっと物足りなくあてにならない以上、ここでは目視確認も必要だ。
その目視確認だが、正直言って難しい、と言うところもある。サメが反射してほのかに光ることに対して背中の黒い面を向けていた場合、こちらからの視認度合は低下する。エイは全体的に白いので良く光を反射して目で見えるのだが、サメのほうはまだまだ難しい。索敵を二重化するかどうか、悩みどころではある。かといって前も言ったが他の階層で必須スキルとされている【索敵】を一つ分自分一人のわがままのために使うことに遠慮があるので金に物を言わせて……という行動は出来るだけ防ぐ方向性で行こう。
雷龍と雷槌の訓練を続ける。手早く雷切から雷槌への切り替えができるようになってきた。ポーションも思ったよりは落ちた。今日は二億行けばいいほうかなと思っていたが、既に落ちているポーションの金額だけで二億を超えているのでそこの心配はしなくていいようだ。後は気楽にモンスターを倒していけば時間までにはそこそこの雷魔法の経験値を積み上げられたことにはなるだろう。後は時間まで油断せずに戦い続けるだけだ。ちょっと休憩してから続きを楽しもう。
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帰りの時間が来た。結局途中で二回ほどの休憩を挟んだが、ほぼ一日六十九層で過ごすことができたのでここでゆっくりだとしても戦い続けることができるという証明にはなったと思う。途中で身体強化も一段階上がった。身体強化が上がったことで魔力総量が上がっているかどうかは解らないが、体の動きが機敏になり、エイとサメの動きがちょっとだけゆっくりに見えてきたのは確か。このまま無理せずしばらくここで戦っていけばまた身体強化も上がるだろう。
七十層に下りて今日の魔結晶とポーションの出来高をリヤカーに積んでエレベーターで七層まで上がる。帰り道も暇なので、柄を持ったまま雷切と雷槌の切り替えを繰り返し、いつでも使えるように調節。雷槌の威力がどうなっているかまでは殴ってみるまで解らないが、雷槌のイメージがちゃんとできているならこの切り替えで出来上がった雷槌も同じだけの威力が保証されていると言えるだろう。
雷槌、雷切、雷槌、雷槌、雷切、雷槌、雷切……うむ、うまく出来ているな。イメージングは今日一日で充分出来たと言えるだろう。後は明日明後日明々後日と、同じことがちゃんとできているようになっているかのチェックだな。
七層に到着していつもの目隠しをしてダッシュ。三十分で帰ってきて目隠しを外して一層に上がっていつも通り退ダン手続き。リヤカーを査定カウンターまで持っていくと、査定待ちの列がなくスムーズに査定を開始してもらうことが出来た。更に今日は魔結晶とポーションだけが査定物のため、短い時間で査定が終わった。
今日のお賃金、二億二千四百六十六万七千円。ゆっくり回っていた割にはポーション一本分ぐらい予想金額が多いので俺的には満足な出来である。
リヤカーを返すと、支払いカウンターで振り込み。いつものぬるま湯をもらってゆっくりする。バスの時間まではそこそこゆっくりできるところだ。今日は買い出しにもいくし、雑誌もついでに覗いて来よう、そろそろ探索・オブ・ザ・イヤーと月刊探索ライフの最新号が並んでいるかもしれない。
バスの時間五分前にきっちり並ぶと、そのまま家まで何事もなく帰り、買い出しに出かける。自分の食費の買い出しなので社用車ではなくセダンの自家用車でのおでかけだ。なんだかんだ最近乗ってやれてないな、すまない。バックミラーにぶら下がっているうさぎちゃん人形も少し寂しそうに見える。
いつものショッピングモール内のパン屋へ行くと、いつもの量の食パンと、今日は菓子パンや総菜パンも買い込む。カレーパンは……二個残っていた。二個とももらっていこう。今日の夕食はパンにするかな。ちょっと食事は偏るが、プロテインドリンクとサラダセットを買っていくことでバランスを取ることにしよう。
食パンをいつも通り四斤分、一斤はサンドイッチ用に薄く、残りは朝食用に六枚切りでお願いをして、全部で四千円ほどになった。やはり菓子パンとか総菜パンはそこそこお値段が張るな。まあ問題ない、その分今日しっかり稼いできたし何なら店ごと買い取ることもできるだけの貯蓄はある。もしパン屋の経営が傾くようなことを耳にした場合は出資してでもここにはパン屋を開いていて貰いたいぐらいだ。
一旦食パンを車に置きに行くふりをして保管庫に収納。手荷物を綺麗にしてパンの日持ちを良くした後、生鮮食品の買い出しに再び店の中へ入る。いつものお高い卵とお高いバターを買い足した後、キャベツを二玉と夕食用のプロテインドリンク、そして野菜ジュースのパックを二つ買っておく。一つは明日、一つは今日飲んで、一日の必須栄養素を満たしていくよう心がけよう。普段自分で飯を作っていると栄養素が偏りがちだ。栄養を摂れる所ではちゃんと考えて摂るように心がけていく。
今日はパンを食べるので弁当コーナーに用事はないのだが、念のため見回っているとパンのおかずになりそうな量り売りの数品を見つけたのでそれも買っておく。
今日の夕飯は色々試せるな。専門店売りのパンを何種類か買い込んだのでレンチンして温めてから味のほどを見ることにしよう。後は雑誌だな。本屋へ行くと今日発売だったようで、平積みにされた月刊探索ライフと、最後の一冊だった探索・オブ・ザ・イヤーを手にすると会計を済ませ、家に帰ることにしよう。たい焼きやお好み焼きは今日は必要ないな。菓子パンもいくつかあるし最悪メロンパンとカレーパンさえリーンの手元にたどり着ければそれでいいと思う。
念のためにメモを見返し、買うものリストを探して他に必要なものがなかったかどうかを探す。トイレットペーパーやティッシュなんかも潤沢に在庫はあるし、今のところ……ダンジョン用のトイレもまだあるけど……あぁ、念のため買っておくか。多分災害用品コーナーに行けばまとめて安く売っているはずだ。
早速災害用備蓄品コーナーに行くと、ちょっと専門店よりはお高いがかなりの数が有ったのでまとめて購入しておく。これはいくらあっても困らないからな。店も在庫が回って助かるだろう。
それ以上に必要なものはないよな……と、保管庫の中身と見比べながら判断するが、今のところ問題はないな。しいて言うならコーラとお菓子をどうするか、だな。これも今のうちに買って保管しておくか、家に箱で置いてあっても困らないしな。
もう一度荷物を車に置きに行くと、コーラを箱買いしてお菓子を何品か付け足す。結局五回ほど会計を繰り返すことになって面倒になったが、どうせ全部経費では……あ、トイレ用品は経費になるか。このレシートだけ別に保管しておこう。
お菓子を買い込んで会計をして今度こそもう買うものはないな。家に着くと、荷物を整理するために一旦保管庫にしまい込んでからそれぞれの場所に荷物を放り込んでいく。
整理が終わったところで風呂を沸かしながらご飯の時間。今日は惣菜パン祭りだ。パイ生地で包んだグラタンパンやコロッケを挟んでソースをかけただけのコロッケパン、フランス産岩塩を使っているという触れ込みの塩チョコパン、そして牛肉ゴロゴロのカレーパンをチョイス。後はプロテインドリンクと、謎ドレッシングをかけた出来合い物のサラダと野菜ジュースでお腹を満たしていく。
この岩塩チョコパンは良いな。甘いのと塩味でいくらでも食べられそうな味わいだ。もう一つ買ってくれば良かったな。これは食も進むしカロリーも一杯、塩分も一杯取れそうだな。
コロッケパンは……うん、ちゃんとコロッケしてるな。無駄な肉やコーンなども入っていない、純粋にジャガイモだけのコロッケだ。ソースの酸味がいい感じにコロッケの味を引き立たせてくれている。そしてコロッケを包み込むようなパンの柔らかさがまたそれぞれの食感の違いを出してくれていい。コロッケがカリッとなってないのはこの場合アクセントなのかどうなのかはちょっと考える所だ。
コロッケカリッ、パンフワッ、みたいなのもすきなんだが、それには揚げたてのコロッケである必要がある。そしてパンに包まれている以上、パンの持っている水分との兼ね合いが関わってくるので、出来上がってから何分経っているか、というのが気になる点ではある。これも定点観測しなければ美味しいコロッケパンを味わうということは難しいんだろうか。オーブントースターで焼いてみれば変わるのかもしれない、次はやってみるか。
グラタンパンはレンジでチンするよりもオーブントースターでブンしたほうが水分が抜けきらずに温まるだろうからそうしてから食べることにする。あまり加熱しすぎると表面が焦げてしまうので、ちょうどいい感じに温めてから食べた。感想は、もうちょっと中のソースが欲しかったな、と言うところ。パイ生地はいい具合に出来ていただけにちょっと残念ではある。
カレーパンは……うむ、四角くてゴロッとした肉の感触がいい。カレーは普通の市販のカレーっぽいものだが、お肉の感触が売りなだけあって悪くない。揚げたてでないことが残念だが、アルミホイルを敷いてこっちもオーブンでブン。出来るだけ出来たてに近づくような感じで作ってみたが、やはり揚げたてと焼き立ての定義が違う以上、オーブンでブンしてカリカリにしたカレーパンを再度口にしたが、やはり何か違うな? という感じは残る。だが、これはこれで美味しいのでヨシとしておこう。
一通り口にしたところでサラダと野菜ジュース、プロテインドリンクでしっかり栄養を摂ったところで満腹。残りは明日の朝リーンと一緒に食べようと思う。今日は風呂に入って、ゆっくりして寝るか。
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