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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十五章:ダンジョンマスターさん、いらっしゃい

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1240:フカヒレの昼 3

 七十一層探索は続く。グリフォンを全力でなぎ倒す以外にも気を向けなければいけないのが地図作り担当の役目でもあり、毎回グリフォンが出るたびに全力で雷撃で殴り飛ばしてスッキリする必要があるのは仕方ないとはいえ、出来るだけ詳細な地図を作っておいて七十二層ではより密度の高いグリフォンが出てくることを考えると、気を抜いてはいけない。


 もしかしたら二匹出てくる可能性だってある。その際に芽生さんに一匹完全に任せて、戦ってもらってる間にこっちで手早く終わらせて援護に向かう、という形になる可能性だってあるんだ。出来るだけシンプルに勝負を決める方法を早い所見つける必要がある。


「私もグリフォンと全力戦闘してみたいんですが」

「危険と見たら雷撃ぶち込むからそれだけは覚えておいてね」

「はい、ちょっと狙いたいネタがあるんでそれを試してみます」


 次のグリフォンは芽生さんに任せるということになった。さあ、次の迷惑モンスターを探すべく行動の続きだ。


 クレーターの中心を時計と見立てることでいうところの三時辺りの位置まで来た。周辺のエイとサメは掃除済なので安心してドローンを飛ばせる。ドローンを飛ばしたところ、ドローンから見て五時方向、すなわち階段から見て真東の方角のクレーターの先に何かがあることがわかる。解像度の関係でそれが何かをはっきり区別することは出来ないが、これも岩石系オブジェクトの一種だろう。東にも何かがある。北東にも何かがある。これは一日で回り切るのはちょっと難しそうだな。


「結構色々あるな、どれを目標にしていいか悩むが、明確な目標物みたいなものは階段から真東にもあるらしい」

「どれどれ……なるほど、次の目標はこれにしましょう。ついでにグリフォンにも会えそうですし」


 ドローンの視界にはグリフォンが二匹、離れた場所で映っている。同時に戦う心配はなさそうだ。ちょうど行く道すがらでもあるし、芽生さんの試してみたいことというのを実践してもらおうではないか。


 グリフォンにたどり着くまでエイとサメを処理しているとまたポーション。これで三本目かな。今は午後二時。この時間で三本落ちるということはもう三本落ちる可能性が高い。今日の収入はなかなか期待できるな。


 グリフォンに近づいて、グリフォンの索敵範囲ギリギリのところで足を止めて、芽生さんが準備行動。


「……よし、イメージできました。後は実戦でなんとかしてみます」

「じゃあ、どうぞ。声かけてくれたらすぐ雷撃入れるから」


 芽生さんが数歩前に進み、グリフォンの索敵範囲に入る。グリフォンはすぐさま芽生さんのほうへとびかかっていく。芽生さんはすぐにスキルを、翼を狙わず首の付け根に当てた。そこから【水魔法】がスプラッシュ、何枚ものウォーターカッターが飛び出る。


 グリフォンは頭をウォーターカッターで斬りおとされそのまま地面に落下、黒い粒子に還った。


 ……そんな手段で簡単に倒せたのか。


「変な耐久力はないと洋一さんが言っていたので、刃系なら簡単に通るのかなって。思ったよりもあっさり倒せましたね。もう二、三発かかるかもとは思いましたがラッキーストライクでした」

「俺の情熱は一体……いや、違うな、これも相性問題だな。そういうことにしておこう」

「というわけで、私でも比較的楽に狩れるグリフォン講座でした。良ければチャンネル登録と高評価よろしくお願いします」


 どっちもするしかないな。芽生チャンネルに登録しよう。今回は魔結晶と肉を落としてくれた。肉のドロップ率はどのぐらいなのか、この後も何回か戦って回数とドロップ率を調査する必要があるな。サメのフカヒレは四十%ぐらいの確率で落としてくれているが、こいつとは五回戦って二個。さすがに四十%とフカヒレと同じ割合で出てきてくれてはいるものの、爪のほうはまだ一つしか出ていない。とりあえず十匹。十匹倒して様子を見ることにしよう。十匹で確率が収束するはずはないのでもっと多くのサンプルが必要だが、出現率を考えると二十匹ほど相手にしたところで今日は時間切れになりそうだ。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 戦闘を続けつつ、そのままクレーターから離れて東のクレーターを渡り切る。北のクレーターほどの大きさはないが、こちらには岩石というよりは細かい岩が複数連なっている、まるで大きめの石像が砕かれた跡のようなものが残っていた。周辺掃除を済ませた後で再びドローン。ここからだと南のクレーターの向こう側もかろうじて見ることができる。間には数匹のグリフォンを含めてそこそこ濃い密度のモンスターが見える。本来想定されるルートはこっちなのかもしれないな。


 ここから見る分に、北の岩以外に目視できるオブジェクトはない。ここは南へ行くか、何もない西へ行くかの二択にまで絞られた。何もない西ギリギリまで来てドローンで撮影するのは今日は難易度が高い。今日は南へ見に行って、その先を撮影することで一旦探索活動は終了ということにしよう。方角を絞るだけでも充分な地図作りにはなった。


「このまま階段を中心にして南へ行く。間にはそこそこモンスターが居るから暇になることはないはずだ」

「それが一番楽に稼げる方法ならそうしましょう。でも、一応ここでドライフルーツタイムにしませんか。結構連続した戦闘をしてますし、モンスター目の前にして眩暈はちょっとここでは危ないです」


 芽生さんの提案に乗り、ドライフルーツを一気に二枚口に含む。二枚分の爽快感を味わったが、このマップだと少し肌寒く感じてしまうな。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 芽生さん式グリフォン退治法は活躍したが、時々避けられてしまうところが今のところネックらしい。なので【魔法矢】を加速させるイメージを練り込んでより素早くスプラッシュハンマーが届くように色々と調整をしている様子。


 こっちもこっちで、全力雷撃二発からの切り裂きで仕留める以外の方法を色々考えて見てはいたが、危険を承知で前足をよけて首元まで近寄り、そこから圧切で切断するのが最も省エネな戦い方であることは確認できた。ただし、前足を確実に避ける方法がないため、翼ではなく前足に向けて雷撃をすることで足を使えなくする方法が考案されることになり、前両足を失ったグリフォンが首元まで俺に接近されるも翼でかろうじて逃げようとするところを雷撃で撃ち落として首を切り落とす。こういうパターンも散見できたのでこれが確実! という手段としては芽生さんのほうに分がある現状である。


 探索のほうは南のクレーターを探索し終わり、更に南西方向へ続く岩と、その先にクレーターがあることまでは確認できた。念のため南西方向の岩までは実際に歩いて確認して、そのクレーターの先に大岩らしき物体があることまではドローンで調査した。今日のところは探索はここまでかな。次回は南から南西方向へ向かってそっちに階段があるかを確かめに行くことになった。


 なおここまでの戦闘で戦ったグリフォンは二十四匹で爪が八個、肉が十個落ちたことをここに確認しておく。肉はどんな味なのか……これも中華屋の爺さんに渡してみるのも面白いかもしれないな。


 そのまま探索を切り上げて帰る。いつもよりは三十分ほど早いが、まあエレベーターまでの移動時間もあるし、少し早めに中華屋に赴いて待ちきれなくて早めに来ちゃった、というのも有りだろう。


 七十層へ戻り、車を出して六十九層側の階段へ向かう。エレベーターの横にキュッと車を停めると保管庫に入れなおして、ノートに注意書き、「スペースグリフォン、強し」としておく。


「さて、後は上がって茂君を回収したらフカヒレが私たちを待ってますね」

「楽しみだな。どんな味がするんだろう? 」


 倍速分の燃料を入れて二十分強、七層に着いたので本日最後の仕事として茂くんを刈って走って戻ってくる。もう心はフカヒレだ。後十数分で温かいであろうフカヒレが俺達を待ってくれている。それだけでももうダンジョンからとっとと出てしまいたい欲求に駆られる。


 急いでエレベーターに戻って一層からの退ダン手続き。リヤカーを査定カウンターにキュッと乗り付けると、査定開始の前にちょっと一言相談。


「ちょっと相談なんですけど、これ一つでいくらの査定になるんですか? 」


 サメの魔結晶を一つだけ渡して査定嬢に聞いてみる。


「ちょっと待ってくださいね……えーと、一つでおよそ三十万円ほどになりますね。今日の査定は一つだけってことですか? 」

「ああいえ、一応モンスター倒した際の収入の基準として知っておきたくて。リヤカーに乗ってる分、全部お願いします」

「わかりました。確かに気になるかもしれませんね、基準」

「重さでいくら、で、これ一つあたりいくらになるのかって、こうして聞いてみないとわかんないからね」


 査定嬢と二、三言葉を交わし、サメとエイの魔結晶が三十万円であることを確認。そうすると一匹当たりの期待金額は……ちーん、百九十万円ほどになることが導き出された。その内百六十万円はポーションが出た時の見込み価格である。サメは更にフカヒレの買い取り金額と、グリフォンは爪と肉の価格がどうなるかが解らないが、その分だけ多くなることは間違いないだろう。


 しばらくして、本日の戦果が二等分で出力されてきた。本日のお賃金、二億千八十五万二千円。二人で四億。これはかなり稼いだな。更に今朝の指輪の代金があるので、今日だけで五億近くの収入があったことになる。これはかなり大きい金額が動いたという話になる。


 芽生さんにレシートを渡す。芽生さんはレシートの金額に喜んでいる様子。


「苦労した分だけの金額は稼げたってところですね。よかったですねえスーツ代ちゃんと返してもらえて」

「全くだな。これ一番古いスーツ……最初に買った奴だから思い入れもあるんだけど、どうしようね。一旦テーラー橘へもっていって相談するべきなのかな」

「お、安村さんお疲れー」


 小寺さんが通りがかったので挨拶をお互いに返しておく。


「お疲れー。そっちは順調? 」

「花園マップだっけ? 中々迷ってて。後、スライムに行動を邪魔されてて真っ直ぐ帰れなかったり、色々と苦戦してる最中だよ。そっちは順調……スーツ破れてるじゃない。苦戦した? 」


 どうやらあっちは四十五層辺りを探索している最中らしい。こっちは必殺のリニア式射出があるからそれほど苦労はしなかった。結衣さん達も【爆破】のおかげで突破できたみたいだし、やはり何かしらの起爆剤になるような攻撃方法が必要なんだろうな。


「まあ、新しい敵にちょっとやられたよ。このスーツをどうするか悩んでる最中だ。当て布でなんとかなるなら、多少格好悪くてもそれで済ませられたらいいなって思ってるところだ」

「ははっ、それだけの高級装備でやられるってことは相当なんだろうな。まあ、怪我が無さそうなのが何よりだ、お互い気を付けていこう」


 小寺さんと話している間に芽生さんは振り込みを済ませたらしい。俺も振り込みを依頼して、そして中華屋へ行かないと爺さんが待ちわびているだろうからな。


 いつも通り支払いレシートを振り込み扱いで口座に入金してもらうと、休憩室でいつもの冷たい水を飲む。体の中を冷たい水が潜り抜けていく感覚が毎度毎度気持ちいい。このために探索やってると言っても過言ではあるが、それだけの心地よさがある。


「今からご飯食べに行くのに冷たい水は必要なんですか? 」

「これはあれだ、仕事のオンオフを切り替える儀式みたいなもんだ。これを飲んだら今日の探索者稼業は終わりってことで。だからこれで今からは好きなだけ食べて好きなだけ飲んで美味しいフカヒレを食べに行く準備が今整ったという証でもある」

「なるほど。では行きますか」


 芽生さんと連れ立ってバス停を通り過ぎ、いつもの中華屋へ。すると、小寺さんとバッタリ。


「あれ、安村さん達も今日は夕食はここ? 」

「今日は予約入れてたんだよね。美味しいフカヒレ料理を喰わせてくれって頼んでさ」

「へー。フカヒレか、店には似つかわしくないな」

「悪かったな、似つかわしくない店の風体でよ」


 爺さんが表に出てきていた。会話を全力で聞いていたらしい。


「兄ちゃん、待ってたぜ。準備はバッチリ済ませてある。俺の腕を存分に振るったフカヒレ料理をぜひ味わってもらおうじゃねえの」


作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
フカヒレなんて食ったこと無いけどさくしゃさんは食ったことあるのかな? 取材のために食いに行ったのかもしれないなw 旨かった?w
> 密度の高いグリフォ」 高密度グリフォン > 私もグリフォンと全力戦闘してみたい」 こんな相方は少しだけ嫌だw > …そんな手段で」 絶句するおじさん > どっちもするしかないな」 乗るけど突…
グリフォン肉か 胴体は獅子なんだっけか、何肉がいちばん近い味になるんだろ そしてお待ちかねのフカヒレだー!!
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