117:ガチ休日……のはずだったのに
朝が来た。相変わらずの快眠。ベッドに羽根を敷き詰めて羽毛布団のベッドで朝まで眠りたい。休日二日目であるが、やることは本当に何も思いつかない。
何時もの朝食をとると完全に目が覚めた。おそらくまた昼まで惰眠をむさぼることは出来ず、ゴロゴロしているのが関の山だろう。
体のほうは絶好調なのでダンジョンに潜りたいという気力が満ち溢れている。こんなに仕事に熱意を感じたことはあっただろうか。
かといって何もすることがなくボーっとすることはやはり俺には耐えられない様で、今日開店しているのを確認したうえで鬼ころしへ向かう事にした。
結局俺は休日は一日までにしないと心が持たないらしい。なんともダンジョンに魅入られている。ついでに清州ダンジョンにも寄って軽く流してくるか。バードショット弾の在庫を確認する。
最近棒手裏剣と中玉の出番がないな。それだけモンスター狩りに慣れてきている証拠でもあるか。中玉、大玉についてはジャイアントアント相手にぶっ放して威力のほどを確認したい。多分、この辺までなら一発で相手を粉砕できるだろう。
これもここのところ四層でしか活動してないのと、五層のワイルドボアの突撃に対して余裕が出てきたおかげである。日々強くなっている気はするが数値的に比較できるわけでもないので、一度ダンジョン内で握力とか計ってみるのもいいかもしれないな。機械を壊す気がするが、数値化できる確実なものではあるだろう。
握力計ではなくても、ニギニギする握力を鍛える奴で思い切り握りつぶしてしまう事も今なら出来るような気がする。おそらく中身の詰まったスチール缶なんかでもできそうだが中身がもったいないからやらないことにしよう。
暫くニュース見たりスレを覗いたりして時間を潰す。バニラバーの市場在庫はちょくちょく入荷してるようで、三勢食品の頑張りを感じるな。買えたという報告が上がっている。
だが、バニラバーの需要過多に供給が追い付いていないのは明らかなところで、三層のゴブリンまで巡ってスライムを狩る人が若干減ってきているようだ。一時的な収入の増加で落ち着き始めた人が出てきたのだろう。もしくは、買い貯めて買い貯めて一気に使おうという人も出てきたのかもしれない。
いずれにせよ一、二層は大繁盛してるようで、ダンジョン庁職員の頑張りに頭が下がる思いだ。情勢が落ち着くまで頑張ってもらいたい。
っと、メールを整理していると商品発送のお知らせが来ていた。明日の午前中に到着するらしい。なら明日の朝までに帰ればいい事になるな。昨日寝だめしておいてよかった。
早速車を出して鬼ころしへ向かう事にするが、駐車場が空いてなければ最悪清州ダンジョンの駐車場にとめたまま鬼ころしへ向かえばいい。なんならそのまま清州に潜っても……そういえば休みという事にしてあるんだったな。まぁ、体のメンテナンスも休みの内で、休めたという事を確認するために清州ダンジョンに潜る。つまりこれも休日の内だ。そういう事にしておこう。
さて、清州ダンジョンへいく荷造りを始めるか。ペットボトルの水と……今日はココアバーにしよう。そういう気分だ。後念のためバニラバーも三本ほど準備しておく。それにヒールポーションといつもの装備さえ詰めておけば問題はないだろう。最少荷物で潜るぞ。
電車で行くより五時間ほど余分に時間を使える計算になるので、それなりの利益は出せるだろう。明日いざ睡眠不足になったら七層で仮眠すればいい。期限は明日の朝……多分九時だ。そのぐらいに荷物が届いてくれると嬉しい。
「明日、朝荷物届くから小西に行くの多分遅れる」 レインで連絡をしておく。
清州と言えば、今度新浜さんたちに会ったら可能なら連絡先を手に入れておこう。横のつながりを拡げておくことは今後の活動に幅を持たせることになるだろうからだ。
さぁ、出発だ。今回もまた地獄の道路事情を世間にありのままに振りまいている名古屋を通過しつつ清州へ旅立つ。
◇◆◇◆◇◆◇
運のよい事に質の悪い車に巡り合うこともなく、問題なく清州に到着した。奇跡的だ。何かいいことがありそうである。
鬼ころしはまだ開店前なのか、駐車場に空きがあったので停める。開店五分前、ジャストな時間だ。ほんの少しだけ待つと早速開店した。
買うものはパチンコ玉五百発とバードショット二千発。それと、防刃ツナギの予備を用意しておく。複数日宿泊するときに予備があれば多少気分が良い。合わせて六万円。文月さんには内緒だ。でないとまた無駄遣いを怒られかねない。買って入れてしまえば後は中身をみられる事は無いからへそくりみたいなもんである。
それをササっと買い足してしまうと、武器コーナーを見て回る。残念ながらまだ熊手は店には置いてないようだ。残念ながらもダンジョンへ向かう。休日出勤になるがタイムカードを押してないので公的にはセーフだ。
ギルド建物内で、持ってない分の清州の地図を探す。どうやら十四層まではそろっているらしく、完全版としておかれている。とすると十五層のボス部屋の地図は完全版ではないという事か。未攻略なのか、それとも地図を描きまわる余裕が無いのか、あえて提出されてないのか。
謎は深まるが今は十層までしか潜れないので十層の地図まで持っている現状で購入する理由は無い。地図だけ買って予習するのは当日のワクワク感が少なくなるので、直前まで買わずに俺個人の楽しみとして取っておく。
ダンジョンまで歩いて十分、入ダン手続きを済ませるのに十分。帰りは査定時間も見込んで早めに撤収するつもりでいないとな。
一層二層はどうせ人のほうがスライムより多いだろう、速足でスタスタと通り過ぎる。一切のモンスターを無視してきたため一時間で三層へ着いた。三層はゴブリンを狩りながら余裕があればスライムを餌にするエリアだ。当然ここに来る探索者は人型のモンスターを倒しても平気なぐらいの実力は持っている。
三層も速足で抜けるつもりだが、四層の階段へ行く間にどのぐらいモンスターが湧いているかを見ながら移動する。ある程度の間隔で存在する側道からモンスターがのこのこ出てくるぐらいの頻度なら、こちらから側道へ入って倒しに向かうだけのポップ量が見込めるからだ。幸か不幸か、出てくる集団は一つ二つとそう多くなかった。これは落ち着いて四層で狩りが出来るな。
四層の階段まで三十分ほど要した。実際はほとんどが早歩きする時間だったが、それでもここまで一切出会えないという訳でもなかった。ドロップこそなかったものの、準備運動ぐらいにはなったはずだ。三層から四層へ降りる階段にはいつも通り人が休んでいる。何処のダンジョンでも三層のここは休憩所みたいな扱いなんだろうか。
四層からは難易度こそ上がるものの、今更ソードゴブリンが団体で出てきても問題は無い。階段と階段の中間あたりから側道に入ればポップ量が多そうだ、とあたりをつける。
四層と五層の中間地点あたりに差し掛かると、ちょうど良さそうな側道をみつける。この辺から脇に入るか。すると入って一分もしないうちにソードゴブリン一ゴブリン五の団体様とのエンカウントがあった。これは初っ端からついているな。
手早くソードゴブリンに切りかかる。相手はまだこちらに気づいていない。相手がこちらに気づいたとき、もうこちらの射程圏内だ。ソードゴブリンをズンバラリと縦に一直線に割り裂く。残りのゴブリンはソードゴブリンが命を失ってからこちらに気づいたようだがもう遅い。その時には二匹目の犠牲者はもう決まってしまっていた。
二匹目の犠牲者が眉間を貫かれる。その間に残りの四匹が一斉にこちらにかかってくるが、その瞬間ステータスブーストを使い剣と小盾で全部弾く。攻撃を弾かれてよろめいたゴブリンの内、一番近くに居た盾側のゴブリンが二回首筋をザザッと切り裂かれて黒い粒子となって消える。
残り一対三だが地力が違う。油断するべきではないが、慎重に行くことにしよう。落ち着いて相手の動きを読みながら相手の弱点に致命打を打ち込み続ける。二分かかるかどうかの間に六体を処理しきり、魔結晶二個とヒールポーションを拾う。幸先良いな。
そのまま道なりに奥へ進んでいく。ここはゴブリンが必ず三匹以上の集団で現れ、たまにソードゴブリンがそれを率いている。ソードゴブリン自身の実力はゴブリンと比べればそれなりに強いが、先手を取れれば無傷で仕留めることが出来る。
また、ゴブリンについても武器を持ってはいるが殴られたらしびれる~ちょっと痛いで済む程度であり、こちらもほぼ無傷で仕留めることが出来る。つまりこの階層にもう敵は居ない。
四層を散歩の気分で回遊出来るようになった事に俺はある種の安心感と楽しさを覚えだした。それと同時に、いつも腰にぶら下げて忘れる事のない相棒である万能熊手の実力を発揮したくなる場面がそろそろ出てくるんじゃないかとも期待している。
ゴブリンで潮干狩りを……するならどこを狙うか。目か首筋か。ちょっと試してみるか。早速次の一団を探すと、三分もしないうちに次が現れた。ゴブリン三匹というとてもタイミングのいい数だ。
素早く近寄り二匹を一刀のもとに首を刎ね飛ばす。三匹目は突然のことにびっくりしていたようだが、こちらに気づき臨戦態勢を取る。俺はグラディウスをバッグに仕舞うと腰から万能熊手を取り出す。
さぁ、どうするか。弱点は首、目、頭、腕。確実に仕留めるなら頭か。頭を引き裂いてみよう。ゴブリンに素早く近づくと頭を思い切り熊手で引っ掻く。ゴブリンは頭部に凄まじい痛みを伴ったのか、武器を捨てて頭を抱えている。
これは早く楽にしてあげないと可哀想だな。そのまま熊手で首筋を引き裂く。ゴブリンは頭と首筋を両方抑えて更に痛がっているように見える。おかしいな。
う~ん、これは潮干狩りをする相手としてはそぐわないかもしれないな。俺は熊手を腰につけなおすと再びグラディウスを取り出し、首をはねてやる。
ゴブリンは恨みを決して忘れないような表情でそのまま黒い粒子になって消え去る。楽にしてやったのに恨むなんて、ひどいゴブリンだ。ひどいゴブリンは魔結晶を落としていった。ちょっといい奴だったな。
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