2度目。ーー招待状という名の腹黒からの召喚状。・2
デボラとクルスには私が2度目のケイトリンの人生を送っていることは話してある。まぁあの状況では仕方なかったとはいえ。でもなるべくなら他人に話したいとは思わない。絶対頭のおかしな人だと思われる。
……いや、ヴィジェスト殿下が証人ですけども。でもだからといって、積極的に話したいとは思わない。
でもなぁ……。お父様には話しておく方がいいのかしら。小競り合いの一件もあるし。うーん……。どうしよう。
「クルス」
「はっ」
呼べば何処からともなくクルスが現れる。有り難い事にセイスルート家に帰って来てもクルスは引き続き、私の手足になれるようお父様が命じてくれていた。
「教えて欲しい事があります」
「なんなりと」
「隣国と我がセイスルート辺境領との間で、小競り合いが起きるような情報は?」
「いえ、今のところはそのような話は」
クルスが少し戸惑ったように答えた。
「1度目の人生で、私が14歳の時に隣国と小競り合いが起きました。お父様が指揮を取られました。その間、お父様が居ない間、お姉様とバートンとの婚約に亀裂が入りました」
クルスは黙って話を聞いている。
「それが元で私が15歳の時にお2人の婚約は解消されます。それは避けたい事態です。お姉様はバートンに望まれて婚約した、と思っていますが。バートンの気持ちは私には分かりません。ただこの婚約は、我がセイスルート辺境伯家とあちらの家との約束有りきの婚約です。辺境の地を守るために一枚岩となれるように。解消になったとしても変わらず協力しあえるとは思いますが、何処か足並みが揃わないとも言えません」
「……つまり。婚約解消にならないように見張っておけ、と?」
「見張るというより小競り合いの方が気になります。1度目の私はずっと城にいたので、お姉様の婚約が解消された事をお父様の手紙で知りました。1度目の人生でも仕えてくれたクルスに詳細を尋ねようにも、クルスは私に心配をかけないよう配慮されたお父様の命により、何も話せませんでした。だから元凶である小競り合いについて、誰かに調べてもらうよう、お父様に進言して欲しいの」
「かしこまりました」
クルスが私の命を受け、そのままお父様に進言に向かったようでした。ホッとする一方で、隣国との小競り合いがタイミングが良すぎたというか、狙っていたというか。作為的なものを感じてしまって不安が拭えなかった。
けれど私はクルスに託した。後はクルスに任せよう。
そう思いながら2週間後のお茶会に向けて、もう一度マナーを振り返る。同時に国の内外の噂を集めるように指示を出した。そうしてあっという間にお茶会当日を迎えてしまった。




