閑話・1度目。ーー恋情と友情の狭間で。・1
ノクシオ殿下視点です。
最初に出会った時は、只の興味だった。
父である国王陛下の気紛れだと思っていた隣国の辺境伯家の娘との婚約話。こう言ってはなんだが、政略としてまるで成り立たない旨味の無い相手としか思えなかった。何しろ自国の貴族ではない。しかも辺境伯爵。侯爵家と同格の爵位と言えども少々王族の婚約者の地位としては低い。あくまでも伯爵位だし。
だから内々に候補にしようかと考えている、と告げられてもまるで興味が湧かなかった。ドナンテルもそうだったはず。ところが。こちらから断るのではなく向こうから断られた、と国王陛下が言ってきた。
は?
王族だぞ?
こちらからではなく向こうから?
不敬じゃないか?
私は思っただけだが、ドナンテルは口に出していた。だが、まぁ珍しく異母兄と意見が一致していたので何も言わなかった。それから暫く後、国王陛下が剥れていた。冗談でも何でもなく剥れていた。それはもう、子どものように。一国の国王がこれってどうなんだ? というレベルだ。
国王として優秀だし、執務も外交も公務も何の問題も無い父が。さすがに唖然とした。こんな父を見た事など無かった。ドナンテルと2人で呆然としていたと思う。その父から不貞腐れ気味に、ケイトリン・セイスルート嬢がヴィジェスト第二王子殿下の婚約者候補を決めるお茶会に参加するんだって。……と乱暴に告げてきた。
ケイトリン・セイスルート嬢。
父である国王陛下から打診されたが、それに答える間もなく私達との婚約を辞退してきた娘の名前であった。
あの父にこんな表情をさせてしまう程、父はセイスルート辺境伯に傾倒している。その事に驚くと共に、セイスルート辺境伯に興味を抱いた。そしてついでのようにケイトリン嬢にも興味を抱いた。
その時、ドナンテルがとある提案をしてきた。ヴィジェスト第二王子殿下のお茶会は受け入れるのに、俺たちとの顔合わせすら拒む令嬢を観に行ってやるか。それは私自身も思っていたから、一も二もなく賛成した。……思えばドナンテルと何かをやろうとしたのは、これが初めてだった。
そうして護衛を連れて隣国へ……セイスルート辺境伯爵領を訪ねた。
この時、ケイトリンと出会った事で私の人生は大きく変わる事になった。仲良くも無かったドナンテルと仲良いふりをしていただけだが、ケイトリンに出会って以降、私の意識改革である程度ドナンテルと本当に仲良くなった。同時にドナンテルはおバカ王子の姿を封印した。
これもケイトリンのお陰なのかもしれない。ケイトリンの忠告を受け入れたドナンテルに変化が現れたのだから。そしてそれは少なからず私にも影響していた。
お読み頂きまして、ありがとうございました。
1度目、とタイトルにありますが間違いではなく、ケイトリンのように前回の記憶がある者が2度目。ノクシオは無いため1度目としています。
19時にまた更新します。




