2度目。ーー秘密を打ち明ける相手は選びたい。・2
本日、7時の更新に間に合わずにすみません。
この時期毎年風邪をひいてしまうので、気をつけていたのですが、やはり風邪をひいてしまい、体調不良です。明日の更新も遅れるかもしれません。
寮の自室の窓を開けてクルスの名をそっと呼びました。
「お呼びでしょうか」
ややして姿は見せずにクルスの声が届いてきました。
「デボラから渡された手紙を確認しました。急遽決まった、と」
「は」
デボラから渡されたのはクルスからで、殿下達の入学が前日に決まったとのことでした。連絡する時間が無かったのかもしれませんが、甘い事も言えません。私は仮とはいえ3人の影の主人ですから。
「そういうことにしておきましょう。但し次は無いわ」
「御意に」
「それで? 殿下方の入学が急遽決まった事は解りましたが。ドナンテル殿下が病だった事にした理由は?」
「入学を決定した理由が、殿下方が折れなかったから、でしょうか」
「つまり、ドナンテル殿下もノクシオ殿下もコッネリ公爵の思惑に乗らなかった、と?」
「はい」
それにも関わらず殿下方の軟禁生活を緩めた。解除に至っていないのは、護衛を大人しく待っていた殿下方の様子で判っている。……学園内の誰かを人質に取ろうとしている?
「……もしやあなた達、殿下方が入学する事を私に連絡しなかったのではなく、連絡出来なかったの?」
私の問いかけをクルスは無言で押し通してきました。否定しないけれど肯定もしない。結局肯定と同義。そうであれば、クルス達は命を狙われていた私を、もしくはそれに準じるような危機に陥っていた私を助けるために、連絡をしている暇が無かった、ということになります。
「……そう。要するにコッネリ公爵は殿下方が自分の思い通りにならない事に焦れて、狙いを変えたわけね。私の命を駆け引きの材料にしようと考えた、ということか。だからあなた達は連絡が出来なかったのね」
「……お嬢様は、その年齢で先々のことを読み過ぎでは?」
クルスから知られたくなかった、とばかりな不満気な声が聞こえてきます。それはまぁ仕方ないことでしょう。これでも前世から含めればかなりの年齢なのですから。お父様よりも年上になりますわよ。
「色々、考える事が多いのよ。……ところで、例のお嬢さんとは会わなかったわ。まぁ初日だからという事も有るだろうけれど。彼女の動向は?」
クルスの不満気な声を曖昧に流して、例のロズベル様らしき女性の事を尋ねました。
「まだお嬢様の入学に気付いた様子は有りません」
「そう。……殿下方の入学は?」
「其方は気付いたようで、ヴィジェスト第二王子殿下が居ない事に疑問を抱いているようでした」
「殿下方の名前が違う時点で自分が何処にいるのか分からないのかしら? それにヴィジェスト殿下とご自分の年齢が違う事にも気付いていないなんて……。本当にロズベル様なのかしら」
「……お嬢様? まるでヴィジェスト第二王子殿下の乳兄弟の女性をご存知のような仰り方でございますね」
クルスの指摘に私は自嘲する。
「ボレノー様との会話を聞いていたのでしょう?」
デボラとの距離は開いていましたが、ボレノー様の背後の頭上(おそらく周囲にあった木々のどれか)から人の気配がしていたので、クルスかアレジかガリアだろうと思いました。彼らは真の主人であるお父様から、私の身辺警護を託されているはずなので。
ちなみにお父様は、入学の前に一度、こちらの学園長と話し合いを持たれた後は直ぐに帰国されていますから、王家から頼まれたこの国の様子を探るのは私とクルス達に一任されています。
尤もお父様の性格上、近いうちにこちらにまたいらっしゃると思いますが。自分の部下達を信頼していても、自分で動く方が早いと考える猪突猛進のお父様ですから。大人しく待っている事が嫌になるのは想像せずとも分かります。
それはさておき。
「……気付いておられましたか」
クルスが珍しく質問とは微妙に食い違う返答を寄越しました。
お読み頂きまして、ありがとうございました。




