2度目。ーー王子殿下3人が私に友人候補を押し付けてきます。……要らない。・3
ヴィジェスト殿下からのお茶会をお断りする為に背に腹は変えられずドナンテル殿下及びノクシオ殿下の『友人』という立場を選んでしまった私は当然我が国の王家と国の重鎮の皆様に知られました。それも態々お二人が連名で私を『友人』として暫く滞在させるから許可をするように文書を送って。……まぁ間違ってはいないんです。用も無いのに外交官の家族でも無い未成人の私が隣国へ気軽に行けるわけが無いんですもの。旅行であっても国外に出る場合は申請する必要があります。軋轢とか政治的な問題とか色々イロイロ有りますから。しかし、今回の場合は私が王家に申請せねばならない事なのに、殿下方が文書を出すっておかしくないですかー? えっ、コレ私が早まった決断をしましたかね? 殿下方の日程は上手いな、と思いました。ヴィジェスト殿下とのお茶会当日に帰国する事にした日程なのです。その3日前から『友人』の私を隣国に招待する事になっています。おそらく我が国の国王陛下はセイスルート家に殿下方がお忍びでいらっしゃった事、時折手紙のやり取りをしている事はご存知なのでしょう。真意を問うために呼び出された城で陛下も重鎮方も誰一人として動揺していませんでした。
前回の記憶があるので陛下方の内心が動揺しているかどうかくらいは分かります。陛下は動揺されると普段は指一本動かさないのに頰杖をつくのです。これは動かしてしまった指を誤魔化すための仕草です。重鎮方のうち宰相様・騎士団長様・魔術師長様(希少ながら魔法使いさんがこの国に居るんですよ! ゲームの攻略対象では無いですけどね!)くらいは動揺されているかどうか、見抜けます。そしてお三方は動揺されていらっしゃらない。ですから把握はされていたのでしょう。これなら意外と簡単に許可を得られるかもしれません。
そんなわけで呼び出された私とお父様は(きちんとお父様にはご報告済みです)以前から遊びに誘われていて知らされた日程が偶然にもお茶会と被ってしまいました、とお答えしました。もちろんしれっと。何も後ろ暗い所が無いので国王陛下も重鎮方も許可を出すしか無くて渋々というのが良く分かる程分かり易く許可を得られました。ヤッター! と喜ぶ間もなく謁見の間を出た私達にヴィジェスト殿下の侍従が近寄って来てお茶会に出られないなら、今、お茶会をしようとのお言葉……。こ・と・わ・る・ためにドナンテル殿下とノクシオ殿下の『友人』という立場を選んだのに! 断れないじゃないですか……。だから、ヴィジェスト殿下。私じゃなくてロズベル様とイチャイチャして下さいよ……。
結局王家と変に拗れるわけにはいかないために私はヴィジェスト殿下とお茶をする事になり。やけに上機嫌な割にドナンテル殿下とノクシオ殿下と『友人』である事に不機嫌になられて。私はドッと疲れました。
「ねぇセイスルート辺境伯令嬢」
「はい、殿下」
「隣国のドナンテル殿下とノクシオ殿下と友人なら僕とも友人になれるよね?」
疲労しながらお茶を飲んでいると、ヴィジェスト殿下からそんな爆弾が投下されました。……要らない。心底要らない。でも私にノーという選択肢は無い。隣国との軋轢になっても困るのです。火種に転じて戦争なんてもっと困る。というか嫌。
「か……かしこまり、ました」
諸々を考慮した結果、私はヴィジェスト殿下の『友人』という立場も受け入れました。そこからは月に一度は3人の殿下方から手紙をもらい、予定通り隣国へ遊びに出かけた(表向きかと思いましたが国内の観光地へ連れて行って頂きました)報告をヴィジェスト殿下にする羽目になって。それも手紙では許されず態々城まで出向いて。
つくづくどうしてこうなった⁉︎ というような日々を送り1年。お姉様が学園に入学して私は内心に喝を入れました。この1年でお姉様が変わって下されば良いのですが、変わらなかった場合は私は隣国を含む幾つかの国の学園を選んで留学する手筈となっております。
お父様にお願いして他国の学園の様子を影に調べてもらい吟味して3つまで候補が絞れました。タイムリミットは私が学園に入学する1年前……つまり来年の今頃までです。現時点で候補が3つに絞られているのは寧ろ行幸では無いでしょうか。
ただ……最近物凄く嫌な予感がします。いえ、予感させる言動があると言うべきでしょうか。
ーーやはり隣国の影は優秀らしくて、私が我が国の学園に入学せずに他国へ留学する事を知っていて、是非我が国へ来い、とドナンテル殿下もノクシオ殿下も強引に説得にかかってきている、そんな今日この頃です。
だから、私の、意思……。




