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成る程。では、お互い不干渉といきましょう。  作者: 夏月 海桜
2度目は婚約者の座を回避中
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2度目。ーー多分これが、今出来る事の中で最良なのでしょう。・2

すみません。いつもの時刻に更新出来ず大変お待たせしました。

「それは……」


「自分もシュシュを甘やかし過ぎた。ケイトだけでなくてな。ルベイオからも言われたのだよ」


「お兄様が?」


「いくら病弱とはいえキャスベルもセイスルート家の子。甘やかし過ぎていませんか? とな」


お兄様が……。思う所があったという事でしょう。前回の私達兄弟の仲は目に見えて悪くなかったのですが決して良くもなかった事は覚えています。特にお姉様は誰とも仲良しとは言い難いものでした。いえ。お母様がお姉様第一だったので私達に関わる事が最低限だったと言うべきでしょうか。


「お兄様がそのような事を……」


「うむ。言われたのは少し前だった。その時は実際病弱なのだから仕方ないだろう、で済ませたが。ケイトが男爵家は伯爵家からの話を断れないだろうという一言を聞いて考えたのだ。自分は決して地位を振り翳したつもりはなく友人として話を持ちかけたつもりだ。向こうもそれは分かってくれていると思う。だが傍から見れば地位を振り翳したと見られる事も有ろう。その上で嫁に出すつもりの娘が我儘であれば? 厄介払いをされた、と向こうは思うだろうな」


お父様が強面の顔に苦い物を丸呑みしたかのような表情を浮かべます。きっと幼子が見たら悪夢の原因になるか号泣対象でしょう。日本人だった頃にテレビ映像で見たナマハゲを見て号泣する赤ちゃんを可哀想だと思いましたが、あのレベルの表情が私の真向かいにありますわ。父ですので泣きませんけど。


「お父様が其処まで考えていらっしゃる上での決断ならば私からは何も申し上げますまい。ただ」


「ただ?」


私は少しだけ思案してから決断しました。


「現状ではお母様とお姉様を引き離すのにお姉様を学園へ入れる事が最良のやり方なのでしょう。ただ私は万が一を考えます」


「万が一?」


「お姉様が変わらなかった場合、ですわ」


お父様は腕組みをして「ああ」と嘆息されました。お父様もその事は危惧されているのでしょう。


「その場合。私が学園に入学する頃はお姉様は未だ在籍中です。お兄様も今年から入学ですからもうすぐですわね。5年間の在学中お姉様と1歳違いのお兄様がいらっしゃる間は問題ないのですが。お兄様が卒業なさってからの1年間。性格が変わらなかったお姉様はきっと私を疎ましく思われる事でしょう。現に先程の会話でお姉様の要望を跳ね除けましたから、お姉様は私に悪感情を抱いておられました」


「そうだな。するとルベイオが卒業してからが問題か」


「私は別にお姉様を嫌ってはいませんが果たしてお姉様は? という所です。お姉様が私を嫌ってしまった場合、学園内で何をされるか分かりかねます。その時にはロイスも入学していますがロイスはお姉様に口では勝てませんもの。となれば下手を打てば学園内で醜い兄弟争いを見せる羽目に陥ります」


「それはセイスルート家当主としてもお前達の父親としても見過ごせないな」


「私もそんなものを周囲に見せる気は有りませんし、それによって我が辺境伯家が陰口を叩かれるなぞ許せません。ですのでお父様。私を他国へ留学させて下さいませんか?」


「は?」


先程まで重々しく私の考えに頷いていたお父様のお顔。鳩が豆鉄砲を喰らった表情に変わりました。


「お姉様が変わらなかった場合、私を疎ましく思うお姉様がいらっしゃる事はセイスルート家内に要らぬ不和を招きますわ。直ぐとはさすがに申しません。私が入学する1年前までにお姉様が変わる事を願いましょう。ですがそこまでに変わらなかった場合は」


「ケイトが入学しないことで家でも外でも醜聞を広めることは無い、と」


「はい」


お父様の案ではお母様とお姉様を引き離すだけのもの。ですから私が考える多分これが、今出来る事の中での最良の考えだと思うのです。

お父様は彫刻にでもなったかのように指一本も動かしません。それから長いような短いような沈黙の後で「是」と了承して下さいました。

お読みいただきましてありがとうございました。

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