2度目。ーーようやく嵐のような1日が終了しました。
お父様達を迎えに行こうと立ち上がったらドナンテル殿下が「どこへ行く⁉︎」と詰問してきました。
「お父様が帰られたようですし殿下方の護衛もご一緒のようでございますからお出迎えを、と思いましたが」
「む。いやそれは良い。それよりもケイトリンだったな」
「はい」
ドナンテル殿下が初めて私の名を呼ばれました。まぁ別に嬉しくないですけど貴様よりは遥かに良いですからね。
「ケイトリン。ノクシオだけでなく俺とも友達になれ」
「は?」
真顔で問い返している自信があります。いやだって私はノクシオ殿下からの友人の誘いを断りましたよね⁉︎ 聞いていらっしゃいました⁉︎ それなのにノクシオ殿下の友人認定且つドナンテル殿下の友人って、えっ? 何それ? しかも命令口調だったよね? 逆らう事なんて考えてもいないですよね⁉︎
「先程ノクシオからの申し出は断っていたがそれは申し出であって命令では無かったからな。命令ならば断れまい?」
そう来たか! この王子、只の傲慢かと思ったけれど中々どうして頭の回転は悪くないじゃないですか! でもね。
「殿下は命令で友人を作るのですか? 恐れながらそれは友人とは言い難いか、と。私は対等な立場でなくては友人とは思えません。命令では対等な立場とは言えませんが」
「だろうな。だが対等な立場では断る気だろう? だから王子として命令している」
わぁ。ああ言えばこう言う。
「なれど。私は王族に屈する事を良しとはしません。我がセイスルート家はこの国の王家にも忠誠は誓っていない家ですから」
「ならば勝負だ」
「勝負?」
「ケイトリンと俺とノクシオで勝負をし、ケイトリンが負けたら友人になる。俺とノクシオが負けたら諦める。これならば対等な立場だろう?」
くっ……。本当にこの王子は頭の回転は悪くないな。でも甘い。
「恐れながら」
私が言うより早くノクシオ殿下が割り込んだ。
「手加減無しで正々堂々と勝負だよ。ケイトリン嬢も王子だからと言って遠慮しないで全力を出せば良い」
ぐっ。私が今言おうとしたことが奪われてしまいました! 王子相手に対等な勝負なんて出来ないって断ろうとしていましたのに!
「それはお断りさせて頂きます」
私が黙ったところでタイミング良く応接間のドアが開いて仰ったのはお父様でした。
「お父様、お帰りなさいませ!」
「ただいま、ケイト」
お父様の背後には気難しそうな表情を浮かべているお兄様もおります。眉間の皺はデフォルトです。お父様似の厳しい顔立ちに眉間に皺の気難しそうな表情がお兄様の普通で私が3歳くらいの頃からこんな表情でいらっしゃいました。顔はそれでも中身はとても優しい方なんですけどね。そしてお父様が殿下方に視線を向けて通告されます。
「殿下方のお父君に連絡を取らせて頂きました。護衛の方達もご到着されました。どうぞお引き取りを。またケイトリンは殿下方のオモチャでは有りませんので王子妃も王太子妃も殿下方の友人もお断り致します」
わぁ。お父様、結構怒っていらっしゃいます。まぁそうですわよね。黙って隣国まで来たこの王子達の所為で余計な手間や仕事が増えましたものね。これがきちんと公式でしたらまた違いましたけれど私的且つ何も連絡無しですものね……。お父様とお兄様のご苦労が忍ばれますわ。とっとと帰れ、と言いたくなるお父様の意見に全面的に賛成致しますわ。
「これはセイスルート辺境伯卿もつれないですね」
ノクシオ殿下が笑みを貼り付けつつ立ち上がります。形勢不利なのはご理解頂けたようで何よりですわ。
「今日のところは失礼しよう。だがケイトリン。俺もノクシオも其方と友人になる事は諦めたわけではない。また来る」
「来なくていいです。友人も遠慮申し上げます」
ノクシオ殿下が立ち上がったところでドナンテル殿下も立ち上がりましたがそんな置き土産をして行きそうになりましたので、即答しておきました。二度と来なくていいし友人にも王子妃にもなりたくないですわ。ドナンテル殿下もノクシオ殿下もニヤリと笑ってようやく護衛の方達と合流して我が家から出て行って下さいました。
嵐のような1日がやっと終わりましたわ。
でもあの笑いが怖い。あの2人、一体何を企んでいるのでしょう。そしてあの笑みを見た瞬間、2人が兄弟だとしっかり認識致しました。……怖っ。




