2度目。ーー隣国の王子殿下達は猪と狸だと思います。・3
お読み頂きましてありがとうございます。
それにしても……前回では王太子の座がノクシオ殿下に決まった所為なのかドナンテル殿下はノクシオ殿下を暗殺しようと企んでいたようですが。そしてその企てがバレていたようですが……2度目は現時点で仲は悪く無さそうですわね。ん? ちょっと待って? ドナンテル殿下がノクシオ殿下を暗殺しようと企んでいたのに、何故あの時点でドナンテル殿下は無事だったの? おかしくないかしら。ノクシオ殿下は王太子に決定していた。だからそれを妬んでドナンテル殿下はノクシオ殿下を暗殺しようと考えた。普通そんなのが発覚したらドナンテル殿下を処刑しないかしら。だって後々の火種にしかならないのよ? たかが噂かもしれない。でもあの時点でセイスルート家の影が寄越した情報だった。噂でも良いから隣国の情報を集めて寄越す事が前提だったわけじゃない。寧ろ正確な情報を得るために精査したものだけを報告してきたはず。それならばアレは噂などではなく、本当だった。
つまりドナンテル殿下は少なくとも本気だった。本気でノクシオ殿下を暗殺しようとした。……セイスルート家の影が手に出来た情報なのだからノクシオ殿下がその情報を手にしていないはずがなかった。それなのに前回ノクシオ殿下はドナンテル殿下を放置した。そう放置したのだ。自分を暗殺しようと考えていた異母兄なのに何の措置も取らなかった。捕縛も無ければ処刑も無い。それって……考えられる事として
1つ。我がセイスルート家の影の情報が偽りだった。つまり暗殺計画自体無かった。
2つ。ドナンテル殿下を放置して背後関係(黒幕の存在)を洗い出すつもりだった。
3つ。ノクシオ殿下はドナンテル殿下を取るに足らない存在だと思っていた。つまりドナンテル殿下が企てても未遂で発覚するくらいドナンテル殿下には力が無い。だから無害だと考えていた。
こんな所かしら? 先ず1は無いと思うわ。セイスルート家の影は当主に絶対的な忠誠を誓っているから嘘偽りは付かない。だから情報は確かだった。そして影自体が偽情報を誰かに掴まされるほど間抜けなんかじゃない。精査して確定出来るまで報告をしてこないのがウチの影だ。だからあの暗殺計画は噂などではなく事実だった。
では、2の可能性。これは有り得るけれど私が2度目の人生である現時点で同い年のノクシオ殿下はこれだけ腹黒なのだから更に成長を遂げていた8年後にドナンテル殿下を泳がせて黒幕を見つける……なんて、さっさと見つけていただろうと想像出来る。それとも黒幕探しは慎重を期すために時間がかかっていたのかしら。それならばあの時点でドナンテル殿下が生かされていた理由に納得出来る。
そして3の可能性。一番有り得る判断ではあるけれど……要するに警戒するのもバカらしいくらいドナンテル殿下は力を持っているようには見えないけれど。それでも放置しておく理由が分からない。……もしかして現在異母兄弟とはいえ2人でお忍びで我がセイスルート家に来るくらい仲が良さそうに見えるのだから3番目の予想が案外当たっているのかしら?
……いえ、今これだけ考えていても仕方ないですわね。前回のことであって現在のことではないのだもの。私とヴィジェスト殿下みたいにドナンテル殿下とノクシオ殿下が前回の記憶を持っているならともかく、そうそう都合良くいくわけがありませんわね。
抑、私とヴィジェスト殿下に前回の記憶があることの不思議現象についても考える必要がありそうですけれど考えようが無いことも分かります。考える材料が無いのですわ。あまりにも判断材料が少な過ぎる。ヴィジェスト殿下と話せば幾らか解るかもしれませんが、現状私はヴィジェスト殿下と関わりたくないのでこの一件は保留ですわね。
思考が飛んでしまいましたけれど。現状ドナンテル殿下とノクシオ殿下は異母兄弟とはいえ仲は悪くない。ってことだけは受け入れておくべきですかしらね。……ところで今更ながらに気付きましたがお二方、いくらお忍びとはいえ護衛はどういたしましたの? この応接間に1人も護衛が居ない事が恐ろしいのですけれど。




