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2度目。ーー事の真相は知らない方が幸せです。・4

「そもそも前提が違うんだ」


伯父様が大きく溜め息をついてから、そんな言葉を放った。


ーーはい? 前提?


首を傾げて続きを促す私に、伯父様はあの襲撃事件についての真相を語り出した。


「元々は、鬱憤を晴らすために魔術師協会の魔術師達が考えたのが……あの襲撃事件だった。それもかなり杜撰な計画のもので。襲撃犯達は、同じ協会の魔術師達同士で大規模な魔法を使うことを企んでいた」


「はぁ……」


取り敢えず相槌を打って話を聞いていく。


「魔術師団所属の魔術師を襲撃するつもりはまるで無く、お互いに魔法を使いたかっただけ」


「それって、護衛していた魔術師さんを狙ったわけじゃなくて、同じ協会内の魔術師同士が敵味方に分かれて模擬戦をやろうとしていたってこと?」


「そうだ。但し綿密な計画も無ければ、協会長にも内緒だった。シオン帝国内で魔術師団や魔術師協会に許可無く魔法を使うことは、シオン帝国中枢部の怒りも引き起こす。何しろ、中枢部は魔術師を管理している権力者だからな。勝手は許されない」 


「だからシオン帝国から離れた所で魔法を使おうと思っていた……?」


「そうだ。そして、前提が違う通り、別に魔術師団の魔術師を襲撃する目的では無かったから、他で襲撃は無かった」


「もしや、ロズベルさん母娘やジュスト達一行が、偶々あの場所を通りかかっただけ……とか?」


「その通りだ」


まさかの、そのオチかっ!


「つまり。魔術師協会所属の魔術師達で日頃から溜まった鬱憤を晴らすために模擬戦を企んでいて。その場所が偶々あの場所だった……?」


「そういうことだな。そして、短気なやつが偶々護衛をしていた魔術師団所属の魔術師を見かけて、日頃の鬱憤を晴らす機会とばかりに、魔法を仕掛けた。その仕掛けた魔法は元々模擬戦で使用するための魔法だったのだが」


あー、そういうこと……

って、ロズベルさん達一行も護衛をしていた魔術師さんも、完全なとばっちりじゃないの⁉︎


「仕掛けていた魔法を発動してから、一般人が居るし、何処かの家だか国だかの影が居るし、で。もしやマズイ相手に魔法を仕掛けてしまったのではないか? と襲撃犯達が思っても、もう遅い。仕方なく発動させた魔法を終わらせるしか無かった。というのが真相だ」


「いや、それにしては大掛かりだったと聞いているけど⁉︎」


「ああ、大人数での襲撃について、だろう? あれは人形だ」


はい? なんだって?


「伯父様、今、なんて?」


「あれは、人形だ。土属性の者が発動出来る人間そっくりの人形。戦闘が得意な人形らしく、それなりに戦えるし、簡単な魔法も使える人形。だから死体が消えた、と思ったわけだ。実際には死体ではなくて人形を消したようなものだ。戦闘で負ければ死ぬように見える魔法が掛けられた人形」


「人形……」


魔法ってそんなんまで出来るんですか、そうですか。


「つまり、人形と戦闘するつもりで魔法を仕掛けていたのを偶々見かけた魔術師団所属の魔術師に発動させて遊んでやろうと思ったら、実は襲撃に間違われた、と。それを隠そうとしていたら、クルス達がシオン帝国に居るから、やらかした事を誰かに喋らないように魔法で脅した、と?」


「そのようだな」


はぁ⁉︎ うちのクルス達をなんだと思っているんでしょうねぇ! ケンカ売ってんの⁉︎ 高値で買い取ってあげるよ⁉︎ セイスルート家、舐めんなよっ!


「伯父様、ちょおっと、その馬鹿者達……じゃなかった襲撃犯達とオハナシアイは出来ますかね? うちのクルス達を可愛がってくれたお礼を、ね?」


「気持ちは解るが、ことは魔術師に関する問題だ。正直、中枢部に掛け合っても許されないし、なんだったらケイトリンが中枢部から睨まれる。それは避けたいだろう?」


伯父様にそう言われてしまうと、私も黙るしかない。さすがにシオン帝国中枢部とやり合う気は無い。中枢部がどんな存在か、人数も性別も個人の性格も何もかも分からないのを相手にするのは、ちょっと無理。仕方ない。私は襲撃犯へのお礼参りを断念する事を決めた。

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