2度目。ーー事の真相は知らない方が幸せです。・2
新年おめでとうございます。(もう1/21ですが)
執筆滞ってしまいましてすみませんでした。ラストが自分の中で納得出来ず、何度も考え直してみたのですが、考えていたラスト以上のラストが思い浮かばず、もうこれでいこう、と諦めましたので、このままラストまで突っ走っていきます。執筆してみたら案外納得出来るラストかもしれませんけども。
「実は、俺が動いたことに魔術師協会の上層部が直々に顔を見せたんです」
切り出したクルス曰く。協会の受付女性に魔術師団の事を少し悪い感じで話を持ち出し、受付女性が好感を持った所で現れた、幹部に見えない魔術師と何度か話し合っていた、と。魔術師協会との接触中に確保していた宿では受付女性の監視付きだった。
「もちろん、俺はその女性に気付いてないフリをしてましたよ。ところが」
クルスが受付女性に気付いてないフリをしている事に、幹部に見えない魔術師さんが気付いていた。つまりクルスの目を誤魔化せるほどの魔術師だった、その相手は。
「魔術師協会の協会長、その人だったんですよね」
「は? ちょっと待って? 今、幹部に見えない……要するに下っ端の魔術師って言わなかった?」
「ええ。俺の目にはそう見えてました。でも」
「魔術師協会の協会長……?」
クルスがそういった相手を見抜けなかった事実が信じられず、私は呆然とする。
「お嬢様が呆然とするのも分かります。俺だって、正体を知らされて唖然としました。自分の目を疑った事なんて、これまで無かったですからね」
自嘲するクルスに私が掛けられる言葉は、無い。私に慰められる事を嫌うクルスに言葉なぞ掛けるわけがない。けれど。
「本当にクルスが分からなかったのね?」
「それなんだが。クルスがどうというより、向こうが上手だっただけだ」
伯父様が仰る事に首を傾げた。
「クルスは変装をしていたな?」
私が頷くと、伯父様はそれの魔法版だと思えば良い。と言う。認識阻害魔法。認識阻害って本当に魔法で有るの? あれでしょ、その人だ、と認識出来ないヤツ。伯父様を伯父様と認識出来ない。私を私と認識出来ないってアレ。日本の記憶だと病気の一つじゃなかったっけ?
「魔法でそんなのが有るんだね……」
「魔法で? 違うものなら有る事に納得出来るのか?」
私がしみじみと呟けば、伯父様が聞き咎めたので私は前世の日本人の記憶として説明する。
「魔法という概念も存在も無い世界で生きていた、とは聞いたが。成る程。病としてそういった症状が有るのか」
「うん。私も詳しくは知らない。でも人の顔が覚えられない病気とか、文字の判別が出来ない病気とか、色々有ったみたい」
「ふむ。魔術師協会の協会長は、確かに魔法でクルスの目を惑わせたのだが。ケイトリンの前世の世界とやらは、医学が発達した世界なのかもしれないな」
「あ、そうだと思う。例えば。指を切ってその治療に、水で手を洗うだけでなく、アルコール消毒をするのは数百年は前に判明していたよ。私が生きていた時代は、その指に包帯よりももっと簡単に皮膚に貼り付けて包帯代わりになるような絆創膏が当たり前だったし。絆創膏すら古い物になりつつあったもん」
「ばん、そうこ?」
伯父様、違う。絆創膏だ。んー、こっちってセロテープみたいなの無いんだよね。あ、でも。糊は有る。
「糊を紙に付けるとくっつくじゃない? あれの強力なタイプが皮膚にくっつくの」
話しながら、絆創膏の絵を描く。真ん中は患部に当ててガーゼ的な役割を果たす事を教えた。
「これだと包帯のようにグルグル巻きじゃなくても、困らないでしょう?」
「確かにこれならば包帯が邪魔になる事も無いな。魔法が無いからこそ、知恵でこのような物を発明したのか」
「そうかも。……ええと。話を戻すけど」
伯父様と盛り上がっていると、背後からデボラの咳払いが聞こえて来て、すっかり話が脱線していた事に気付いた。
更新頻度については明言出来ませんが、来週再来週がかなり忙しいので、2月末で完結予定です。




