閑話・1度目。ーー男同士の密約・6
約束の日までやはり監視は付いていたが、受け付けの女の子では無くなっていた。かと言って、対応した魔術師でも無い。まぁ協会の人間なのは解ったが。この3日。特に外には出なかった。研究者らしく閉じ籠り、というやつだ。そうして約束の刻限に協会へ向かうと、前回対応した魔術師が現れた。
「言われたこと、調べてみたよ」
挨拶も抜きに切り出されたが、そんな事は気にしてない素振りで先を促す。結果から言えば、魔術師団から協会へ所属を変えた者は居なかった。逆も然り。
「ただ。元々協会設立の人達が魔術師団に所属していたから、その方達は所属を変えた、と言っていいとは思うけど」
「そうでしたか。ありがとうございます」
魔術師協会設立当初の者以外は、か。魔術師協会設立当初の者達に接触する……事は無理だろう。普通に考えて死亡しているだろう年齢。どうしたものか。取り敢えず、貰った情報を紙に書き取りながら、他の方法を考える必要が有る。
「何かお役に立てたかな」
「魔術師団と魔術師協会との考え方の違いは理解しているのですが、考え方が違うと扱える魔法や教わる魔法が違うのか? という検証は出来ないため、この問題は没ですね。仮説は立てていたのですが」
「ほう? 仮説を、ね?」
興味深そうに尋ねてくる魔術師に、仮説を披露してやれば、真剣な顔つきになって話を聞き出した。そんなに大した事は話していないのだが。
「成る程。そういった仮説が……。確かに魔術師団の方は先ず、特殊魔法有りき、の考えに基づいて魔術師に上下関係を教え込みますね。特殊魔法が無い者の考えを受け入れないし、排除しようと動いてます。それ故に魔術師団は自分達は優秀だ、という考えが有って、それが魔法に影響を及ぼしている……。それ故に、協会側の魔術師が魔術師団の考え方を受け入れた結果を知りたい、と。面白い」
いや、そんなに面白い事を言ったつもりは無いが。
「それだと初代会長達がその仮説について一番近しい方達だったが、全員死んでいるしなぁ」
ーー今、さらりと重要な事を言ったぞ⁉︎
「ああ、協会は設立してから100年程経ちましたから、そうでしょうね」
「そう。初代会長達が魔術師団を出て協会を設立したからね。もちろん、当然のように会長達は死んでいるからね。現在の協会長は初代会長達の孫にあたる方だが」
そういえば先程から協会設立当初の者達が複数居る、と言っているが……。シーシオ様は設立当初はそれぞれ別々の団体だった、と話していた。だが、この口ぶりから察するに、協会に所属している現在の魔術師達は、当初から一つのものだと考えているようだ。
ここは一つ、仕掛けてみるか?
「不思議ですねぇ」
「えっ?」
「いえ、先程から協会の設立当初から一つのものだというような口ぶりなので。私の調査では設立当初は別々だった3団体が、いつの間にか一つになっていたようだ、と」
「ああ、そのことですか。確かに最初は別々の団体でしたが、確か初代協会長達が晩年に義兄弟になったので、それを契機に一つの協会として成立したと協会に所属している者達は誰でも知ってますよ」
あっさりとした話に嘘は見えない。では、協会内ではその認識なのか。これはシーシオ様の予想とは違う、ことにならないだろうか。俺の予想ともだいぶ違うぞ?
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