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閑話・1度目。ーー男同士の密約・4

本日2話目の投稿です。

ご注意下さい。

「本当に、魔法を研究されているんですね」


受け付けの女の子も現れた魔術師も嫌な顔一つせず、寧ろ深く頷いた。どうやら騙り者ではないのか探られたらしい。


「偽者だと?」


「あー、気分を害したのならすみません。魔術師は少なくなりましてね。そうすると多数者の意見って大きくなるじゃないですか。ただでさえ少数派というのは、声を上げるのが難しい。それが多数派から見ると異端にも思える存在だと尚更なんで」


俺の問いに、魔術師が答える。成る程。


「つまり異端者迫害?」


「ええ。実際、魔術師に魔法を使用しての依頼に来た……と言いつつ、実際には魔術師殺害未遂というのが無いわけでは」


「そうでしたか。それじゃあ俺もその手の類だと思われた、と」


「嫌な思いをさせて」


「いえ。そういった事例が有るならば慎重になるのも分かりますからね。理解しますよ」


謝罪をしようとする魔術師に、謝罪不要、と言い添えれば、それで相手も納得したらしい。それから研究の内容や手助けして欲しい話など、仕事の話に入っていく。


「基本的な事から、ですが。魔術師団の魔術師は特殊な魔法を扱える人達が所属していて、こちらの協会の魔術師は一般的な魔法を扱える人達が所属している。この認識で合っていますよね?」


「そうです。とはいえ、あちらの魔術師達も一般的……所謂自然の魔法は扱えるとは思いますが」


「そのようですね。あちらは自然の魔法……火・水・風・土の魔法の他に特殊な魔法が扱えるとか」


「そうです。こちらは自然の魔法のみですね」


「私の研究から見るに、特殊な魔法が扱えるか否かで団所属か協会所属かに分かれているように思えます。まぁその辺は私の研究にあまり関係ないのですけどね。ただ、少し興味が有るのは……例えば、特殊な魔法を扱える魔術師が団の方針に従えない、やり方が気に入らない、という考えをした場合、こちらの協会に来るという事が有るのかどうかってことですね。それと、逆に特殊な魔法は扱えないけれど、協会より団に所属したい、という魔術師が団に所属するのかどうか」


「成る程。研究者らしい視点ですね。そのような事が気になるなど、魔術師にも居ないと思います。実際、私も今、尋ねられるまで、特殊な魔法がないから最初から協会所属、としか考えておらず、団に所属したい……とは考えたことも無かったですからね」


「そんなものですか。魔力の無い俺からすると、特殊な魔法が扱えるかどうかで、団か協会かって決まるのが不思議ですが」


「そうなのかもしれませんね。私は、団に所属するなど全く考えませんでしたが、他の魔術師達の中には、団に所属したかった、と考える者も居るかもしれません。気になるようなら確認しましょうか?」


「お願いします。後、団から抜け出して協会に所属しているとか、団は嫌だから協会が良いとかって人なども」


「ふむ。研究に必要、と?」


「いいえ。絶対必要ではないですよ。好奇心から尋ねているだけです。ですから無理に調べて頂かなくて構わないです。でも、例えばその考え方が魔法を使用する際に影響するのだろうか? という疑問は有りますからね」


「ああ……魔法を使用するには、意思が関係しますからね。確かに考え方が魔法を使用する意思に影響する可能性も考えられますね。いや、魔術師になって協会に所属してから10年以上は経ちますけど、その発想は無かったですね。分かりました。団から協会に所属。或いは協会から団に所属したい者が居るかどうか、調査してみましょう。魔術師達の中であなたの研究に協力したい者が居たなら、あなたが直接話せるようにも取り計らいます」


というところで、今日の俺は引き下がる事にした。お嬢様から一時的に離れるに辺り、学園から離れた宿の一室も借りている。話が弾んだからといって、怪しい民間人なのは変わらない。案の定、跡を付けられながら宿に戻って来た。気配から察するに、受け付けの女の子だと思うが……気配が判らなかった相手も居たかもしれないから、油断はしない方がいいだろう。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

次話は木曜日の投稿予定です。

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