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閑話・1度目。ーー男同士の密約・2

暫くクルス視点が続きます。

お嬢様の助言を元に髪色を変えてみる。これはシーシオ様がそういう魔法を扱える者を手配してくれた。そんな魔法すら有るのか。何でもありだな、と他人事のように思いつつ様々な準備を整えていく。中でもシーシオ様が念のためシオン帝国の中枢部に打診したところ、シオン帝国で作られたという機械を渡された。なんでもその機械に話しかけると声がシーシオ様の元まで届くようになっているらしい。仕組みは分からないので、使い方だけ聞いた。


ちなみにシオン帝国の中枢部からは、探る事の許可は出すが何が有っても、手助けはしない。という方針らしい。つまり怪我をしようが最悪死のうが知らぬ存ぜぬというところか。

だが。

逆を言えば、好き勝手させてもらってもいい、という事だろう。お嬢様から、死ぬな、と厳命されている。つまり死なないように反撃を許す、ということだろう、と解釈をしているから、手加減付きで命を狙ってきた奴等へたっぷりとお礼が出来るというわけだ。


お嬢様から叱責を受けた。


叱責だったがその声音に潜む悲しみを理解した以上、お嬢様を悲しませてしまった贖いは、きっちり奴等に仕返しをする事で報われるだろうか。まぁ俺もやられっぱなしは性に合わないから今から楽しみだ。


「では、暫く私の配下という事にしておく。あの子には知らせない方がいいか?」


「いえ、定期的に報告をしたいとは思っています」


「では、あの子への報告は私からしておこう」


お嬢様に連絡が取れない以上頼るしかないのだが、なんだか体よく姪であるお嬢様と更に仲良くなりたいだけの餌にされたような気がするのは気のせいか。

まぁいい。

終わったらお嬢様とお茶する予定だ。

そのご褒美のためにもさっさと調査を開始しよう。


「これが3人の候補者が作り上げた組織です」


紙に書かれた名前。

眉間に皺がよった。


「本当ですか?」


「そうだ。だから中枢部も手出ししない」


「3人それぞれに組織を作ったのかと思ってましたが……」


「元は別々だったが、この100年程の間に一つの組織になった。とはいえ、元はそれぞれと言ったように、別に結束力は強くない。ちょっと突けば直ぐ壊れる」


「でも、それをしていないのは?」


「バラバラになるより一つに纏まっている方が楽だからだろう」


「それは、そうかもしれませんね」


確かに面倒くさい連中がバラバラに何かをしているよりも、折角表面上とはいえ一つに纏まっているのなら、その方が監視等楽だろう。だが、本当に厄介な組織ではあった。


組織の名は【シオン帝国魔術師協会】


シーシオ様が所属している魔術師団とは違い、魔術師団……つまりシオン帝国の中枢部の考え方とは反りが合わない魔術師や、魔術師団に所属出来る程の魔力が無かったり、大した魔法が使えなかったりする魔術師やらを集めて何かあれば手助けする所。数が少なくなったとはいえ、シオン帝国は魔術師達の国。魔法が使える人間。


当然俺達普通の人間と何ら変わらず、上の考え方に反発する者もいれば、そもそも組織に入れない単独が好きな者も居る。そういった者達でも怪我や病気などで誰かの手を借りたい、とか、他国へ行く際の必要な物や注意事項等を知りたい、とか、どうしても他人の手が必要な時のために出来た組織だ、とシオン帝国に来て直ぐの頃に知った。


魔術師団に属せなかった魔術師達の砦のような存在。


つまり下手をすれば、協会に所属する魔術師達と敵対してしまう可能性も有る。これを厄介と言わずになんて言えばいいのだろう。中枢部も手出ししたくないし、魔術師団として調査も出来なかっただろう。都合良く使われた、と気付いたが仕方ない。

手を引けば良いのかもしれないが、やられっぱなしも癪だ。


第一、手加減付きで命を狙われた。


心底腹立たしい。まるで俺には全力を出す必要なんてない、と言われているみたいで。誰を相手にしているのか、知っておくべきじゃないだろうか。

たとえ魔法が万能だとして。魔法の使えない俺は相手にもならない。と思っているのなら、それは思い上がりだと教えてやるのが、親切というものだろう。

お読み頂きまして、ありがとうございました。


クルスは、デボラ・アレジ・ガリアと何よりケイトリンの前では冷静さを前面に出してますが、根は好戦的です。つまりこっちが素。


……クルス大好きな方達、こんなクルスでも大丈夫ですかね?

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