2度目。ーー次の報告を聞きましょう。・3
「その辺の事なら調べて来ましたよ。だからガリアに先に報告を任せたので」
デボラの言葉を受けたようにアレジが言いながら室内に入ってきた。どこから聞いていたのかしらね。
「お帰り、アレジ」
取り敢えず声をかけて4人でお茶会をしながらアレジの報告を聞く事にしました。
「結果から言います。下っ端文官達は、情報収集能力の無い無能でした」
「あらあら」
アレジがお茶を一口飲むと一気に結論を出しましたが。そうですか。無能ですか。
「というか」
アレジが肩を竦めながら話を続ける。
「文官にしろ、騎士団にしろ、下っ端、つまり役に付いてない者は皆、上に逆らうな精神が染みついてます」
「つまり。上が言った事に疑問を持たない?」
アレジの報告に私が確認を取れば、アレジは頷き続ける。
「ええ。それがどんなにおかしい事でも受け入れる。どうもシオン帝国が長年繁栄してきた事によるものですね」
「あー。成る程ね。中枢部は絶対的存在。それに逆らえば良くて仕事を失い、悪くて命を失うってとこ。その方針が長年に渡り染みついたから、上が何を言ってもその通り、って反発しない、と」
「さすがお嬢」
アレジの報告は納得いく。上がそんな方針なら、そりゃあ誰でも我が身可愛さにどれだけおかしくても受け入れるわ。結果、何も考えない集団が出来上がった、と。
「となると。私をお花畑の住人に仕立て上げたそれなりのお偉いさんが居るって事になるわけだけど」
「もちろん、その辺もちょっと探って来ました。それで分かったんですけど。監察官が関わってますねー」
「監察官? それって騎士団の監察部隊と関係ある?」
「大有りです。監察官っていうのは、文官の監察部隊みたいなもので。やっぱり何の動きもないんですよ。おかしなことに。で。騎士団の監察部隊の1番上と文官の監察部隊の1番上が兄弟で」
「兄弟」
「シオン帝国から長年監察部隊を任されている部隊ですねー」
「あらあら。つまり下っ端文官達はそこから流された噂を信じて私をお花畑令嬢だと思い込んだ、と。騎士団の方は寧ろ何もないのね」
「それは、カリオン家が関わってます。カリオン家……サヴィの祖父と父は、帝国騎士団の第一騎士団長。帝国騎士団は第一から第五まであるんですけどね。それぞれの騎士団長は地位がそれなりに高い。騎士団長をまとめる総騎士団長が騎士団の1番ですけど、その次ですからねー。だから騎士団の監察部隊の偉い人より地位が上なので、カリオン騎士団長が認めているなら……みたいな感じで、お嬢のことが広まってます」
あー。成る程ね。騎士団監察部隊のトップより、カリオン家の方が騎士団員達から信頼されているわけか。それにしても……。
「もしかして、騎士団と文官って仲が悪い?」
「お嬢、良くお分かりで」
「サヴィの家が騎士団とはいえ、そんだけ偉い地位にあって、騎士団員から信頼されているにも関わらず、下っ端なのに文官達が私をお花畑令嬢だと思い込んで噂しているのなら、騎士団員と文官達に交流が無いって考えるのが普通でしょ。それもただ交流が無いだけじゃ、こんなに私に関する話が真っ二つになるわけないじゃない。だったらお互いに反目し合っているって考えるべき。だから、文官と騎士団の中で私の評価が綺麗に真っ二つになっているって現状になる」
「まぁそういうことですよね。ってことで、お嬢の印象を操作している監察ってとこ、ガリアと一緒に探ってきますー。あと文官達への報復も頑張ります」
あ。アレジ、本当に怒っていたわね。ニコニコ笑いながら、なんか黒いものが見える気がするわ。何をするのか聞かないでいようかな。
「いいけど。事態が収拾出来る程度にしておいてね」
「騎士団の監察部隊と文官の監察ってとこ、潰すくらいなら?」
「中枢部に睨まれると厄介」
潰す気でいたのか! さすがにそれは中枢部が動くと面倒くさそうな臭いしかしないからっ!
「えー。じゃあいっそ、中枢部を」
「やめなさい。シオン帝国の中枢部に手を出したら、さすがに私個人じゃあ手に負えないと思うわ。監察部隊と監察官達探って噂を抑え込む程度にしておきなさい」
「「「えー。つまらないー」」」
アレジだけじゃなく、ガリアとデボラまで。相手が悪いっつーの。もう少し命を大事にしなさいっ!
「「「お嬢(様)にだけは言われたくない」」」
私の顔を読んで答えるなっ。確かに毒飲んだり殴り込みに行ったりしてますけどもっ! アンタら私の配下でしょーっ。
お読み頂きまして、ありがとうございました。




