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ドナンテルとノクシオの新婚生活

お待たせしました。

今回はドナンテルとアリシャ夫妻の新婚生活及びノクシオとジョアンナ(ノクシオの妻の名前)夫妻の新婚生活をお送りします。

ジョアンナさんの名前はここで初めて出したはずですが、過去に名前が出ていたらすみません。(記憶してるところでは初のはずです)

「ドナンテル様」


「アリシャ。どうした?」


隣国の王太子・ノクシオとその異母兄・ドナンテルの執務室の隣にあるちょっとした小部屋で2人が執務の休憩に入っていたところで、先頃ドナンテルと婚姻式を済ませたアリシャ王女……もといアリシャが、ドナンテルに会いに休憩している小部屋を訪れた。


ドナンテルとアリシャは、ちょっとオレ様で我儘なドナンテルをニコニコしながら手綱を握るアリシャのお陰で割と上手くいっている関係だ。新妻に若干デレている異母兄をチラリと見ながら、わざわざ此処に来た、という事はノクシオにも話を聞いて欲しいのだろう、とノクシオは判断する。


「うふふ。ドナンテル様。ついでにノクシオ王太子殿下も聞いて下さいませ」


「私はついで、ですか。義姉上」


ノクシオは苦笑しつつ話を促せば、いつもは小国とはいえ王女としてきちんと教育されていた賜物で微笑み以外の表情など見せないアリシャが、ちょっとドヤ顔になって手紙を見せびらかしてきた。


手紙?

手紙である。

ドナンテルとノクシオが2人で首を傾げた所でその差出人を見て2人共頬を痙攣らせた。


「「ケイトリン⁉︎」」


そう、2人の初恋であり、アリシャとは友人付き合いをしているケイトリンである。


「ケイト、何故だ。何故、俺やノクシオにはちっとも手紙すら出して来ないのにアリシャには出すのだ……」


ドナンテルは差出人を確認した瞬間、項垂れる。ノクシオは天を仰いで溜息をついた。いや、ケイトリンにとってはいくら隣国の王族と公式で友人でも、妻帯者となった2人に遠慮しているわけである。

尤も、ケイトリンがドナンテルとノクシオに出す手紙の内容など、誰が読んでも深読みする事も無いような時候の挨拶と互いの近況報告と体調の良・不良を問う程度の至極真面な文面なのだが、それでもやはり妻帯者に対して女性からの手紙は失礼だろう、と遠慮している。


更にはドナンテルの妻となったアリシャとは友人なのだから、ドナンテルとノクシオにわざわざ出すよりもアリシャに気軽に手紙を出す方がお互いに良いだろう、と判断しての事なのだが。


そんなケイトリンは知らない。


自分からの手紙がアリシャに届くか、ドナンテル若しくはノクシオに届くか、で、ケイトリンの友情を取り合っているなどと。無論、アリシャとケイトリンが出会ってからは、アリシャ対ドナンテル(ノクシオ込み)のケイトリンからの手紙対決は、圧倒的にアリシャの勝ちである。


勝負にもならないような量の手紙をアリシャとケイトリンは交わしている。

いい加減諦めればいいのだが、どうにもドナンテルとノクシオの中でケイトリンの1番の友人の座を確保し続けたいようである。


アリシャは実際にケイトリンと出会い、共に勉学に励み、互いに支え合って来たから、ケイトリンがどういう女性か理解しているし、ケイトリンの事を知っているからこそ、ドナンテルとノクシオの兄弟が思う程、ケイトリンは2人に思い入れが()()()()()()()()事も理解している。

ケイトリンは2人を友人と思ってはいるだろうが、例えばドナンテルとノクシオがクッキー10個分の友情をケイトリンに抱いているとしたら、ケイトリンの2人に対する友情の思い入れは精々6〜7個分程度。アリシャの自惚れで無ければ、おそらくケイトリンのアリシャに対する友情の方がクッキー9〜10個分といった所だと思っている。


それくらい、ケイトリンとドナンテル・ノクシオ兄弟の友情の思い入れには差が有るのだが……。


「失礼致しますわ、ジョアンナでございます」


王太子妃として頑張っているジョアンナ……ノクシオの妻が自分の執務を終わらせて、ノクシオに書類を届けに来た。執務室に姿が見えず、休憩している小部屋を覗いたジョアンナは、ドナンテルとノクシオとアリシャが揃っているのを見て、感情を綺麗に隠した完璧な微笑みを浮かべた。


「ジョアンナ。お疲れ様。執務が終わったのかい?」


「はい、ノクシオ殿下。こちらに書類をお持ちしました」


「ありがとう。ジョアンナも一緒に休憩しないか?」


「お誘いをありがとう存じます。ですが、執務室の片付けをしたいと思いますから、また次の機会に」


「……そうか。分かった。じゃあ送ろう」


「いえ、大丈夫ですわ。護衛と侍女がおりますもの」


「私が、送りたいんだ。送らせて欲しい」


「……かしこまりました。よろしくお願いしますわ、殿下」


ノクシオが妻であるジョアンナをエスコートして出て行くのを、ドナンテルとアリシャは見送る。それから2人は顔を見合わせて溜息をついた。


「アレ、どうにかならないかなぁ、アリシャ」


「私もそう思って、ジョアンナ様にお声がけした事が有りますけれど、その。ジョアンナ様はケイトリンと話をした事が無い、でしょう?」


「ああ。ノクシオの立太子式と婚姻式の挨拶くらいだからなぁ」


アリシャはどうにかならないか、と溜息をついていた。ジョアンナとノクシオは政略結婚だ。アリシャとドナンテルもそうだが、2人はケイトリンという共通の友人のおかげで、政略結婚とは言いながらも、お互いを信頼し、大切にし、男女の愛情も抱ける関係になっていた。アリシャとノクシオも良い義姉弟関係を築けていると言って良いだろう。


けれども。ジョアンナとノクシオは政略結婚の関係そのものなのだ。決して仲は悪くないが、アリシャとドナンテルのように仲睦まじいという事も無い。ノクシオとジョアンナが結婚して既に半年が経つ。もう少し打ち解ける事が有っても良いとは思うのだが、ジョアンナがどうにも線引きをした態度を崩さないのである。


そんなわけで、1ヶ月程前、アリシャとジョアンナの2人でお茶会をしたのだが……ジョアンナはアリシャにも打ち解けてくれなかった。もう少し思っている事を教えて欲しい、とアリシャは望んでみたのだが。アリシャが元王女であり、義理とはいえ姉である所為か、敬う相手として接するだけで態度を崩さない。ジョアンナは自分が政略結婚でノクシオと婚姻出来たから、一定以上の歩み寄りは不要だと思っているようにも思えた。


「だから、というわけでは無いのでしょうけれど。ジョアンナ様とお話をした時、私とも距離を置いた形でしたの。始終線引きされたまま会話して。けれど一つだけ最後に……多分無意識なのでしょうね。私は淑女とは思えないあんな動物みたいな令嬢とは親しくなれませんわ、と微かに呟かれましたの」


「それって、ケイトリンの事か?」


「ジョアンナ様も、あの大規模なお見合い交流会に参加されていましたから、ケイトを遠くからでも見たのだと思いますわ」


「うーん。動物みたいな令嬢、ねぇ。まぁケイトリンは淑女の仮面を被れるヤツだけど。俺とノクシオの前で敢えて被らなかったから、今の俺達が在るんだよなぁ」


「出会いのお話ですわね」


「うん。ノクシオはさぁ、腹黒だけど」


「確かに」


「あんなに他人を気にかけるヤツじゃなかったよ。子どもの頃は。ケイトリンに出会わなければ、おそらく俺達は互いに命を狙い合ってた」


「そう、ですか」


アリシャも王女である。後継者争いやら政争やら血腥い話に怯む事は無い。が、ドナンテルとノクシオの兄弟仲を見てしまうと、そういった争い事が有ったかもしれない、などとは想像も出来なかった。


「ケイトリンのおかげなんだ。だから、ノクシオはああして妻となったジョアンナと向き合おうとしている。子どもの頃のままなら向き合う努力すらしなかっただろうよ」


「そういった事を話してみたらどうでしょうか。……そうですわ。私とドナンテル様とノクシオ殿下とジョアンナ様で話し合いをしましょう。今まで、私達が誘ってもジョアンナ様が断ってしまわれて4人でお茶会をする機会すら無かったですわ。夜会はその他の貴族も国王陛下夫妻も居ますから違いますし。私達4人だけで話す機会が必要ですのよ」


「そうか。それもそうだな。こういう執務の休憩時間じゃあ短くて込み入った話なんて出来ないし」


そんなわけで、ドナンテルは早速自分とノクシオ付きの側近達と相談し、またアリシャ(彼女も当然王子妃として執務はこなしている)とジョアンナ付きの女官とも話し合い、4人でゆっくり話し合える日を調整する事にした。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

アリシャとドナンテルは早くからケイトリンという共通の友人についての話題で打ち解けて、良い関係ですが。

ノクシオは……という新婚生活です。いや、最初から何もかも凄く上手くいく、ということは無いわけで。この後は、うん、まぁアリシャとドナンテルが頑張ってノクシオとジョアンナの仲をどうにかこうにかしているかな、と。多分。


来週の月曜日にお送りしますのは、ドミトラルとケイトリンの結婚式です。来週から3日……4日……くらいの連日更新の予定ですので、お楽しみに。

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