2度目。ーーお茶会は中々に波乱の展開でした・4
殿下の席は決まっておりましてそこに前世で言えばおよそ10分くらいですが……ご令嬢方と会話する機会がございます。そんな短い間に侯爵・伯爵位のご令嬢方が殿下と会話をすると言ってもそんなに話すことなんてありません。精々ご令嬢が名乗って自分の好きな物をアピールするくらいでしょう。ですから何とかして自分の印象が殿下に残るように皆さま必死です。私は興味がありませんからアピールする気はサラサラありませんが。さて。あの侯爵令嬢様が1番ですわね。私は……2番目辺りでしょうか。早いですね。まぁ良いですが。あらもう来ましたわ。やっぱり2番目でしたか。爵位が上の者から呼ばれますものね。私が名乗って挨拶をしましたら殿下が「生きてた……」と呟かれました。
えっ⁉︎ まさかとは思いますが。まさか前回の記憶があるとか仰いませんわよね⁉︎ いやいやまさか。
「セイスルート辺境伯のご令嬢だね。ヴィジェストだ。よろしく頼む。……今回は青ではないのか」
殿下が私に名乗った後に呟いた言葉も聞こえてきました。……間違いないですわ。この方前回の記憶がございます。だって前回私が殿下と初めて顔合わせをした時。殿下の目の色に合わせた青のドレスを着ましたもの。困りましたわぁ。記憶があるということは下手すると私を死なせてしまった罪悪感から婚約する、とか言いそうですもの。一応この方腐っても王子と言いましょうか変に正義感が強いのですもの。厄介ですわ。私も記憶がありますから全く気にしなくて良いです、とお伝えするべき⁉︎ いえ、そんな事を言って変に目立つのも嫌ですわ。少し様子を見ましょうか。
それにしても……殿下の側に居る同年代の男の子2人が気になります。もしや攻略対象の残り2名でしょうか? それにしても考えてみれば不思議なゲームですわね。殿下と宰相様の末子と騎士はヒロイン・ロズベル様と年齢が近いのにドミーだけ年齢が違い過ぎますわ。どうやって出会ったのかしら? その辺は日本の時の親友にもドミーにも聞いていませんでしたわね。ドミーと会ってもゲームの内容より他愛無い話をしている方が楽しかったのですが失敗しましたかしら。
「セイスルート嬢? どうした? 具合が悪いのか?」
あらヤダ。ボンヤリしすぎましたわ。全く自分をアピールしない私に違和感を覚えても仕方ないですわね。よし。具合が悪い事にしてしまおう。……いえ後で侯爵令嬢様に嫌味を言われるのもごめんだわ。
「いえ。申し訳なく思います。失礼しましたわ」
何ともありませんよアピールをしたと同時に時間切れとなりました。あらラッキーですわ。私は殿下の前を退きました。これで後は残りの皆様との時間ですものね。お茶会として招待状に書かれていた時間を見るとご令嬢方それぞれと10分の会話で終わりと見るべきです。という事はもう私は殿下と何も無くて良いわけですから後は帰るだけですわ!




