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伯父様のその後

お待たせしました。

リクエスト第1弾。伯父様のその後を知りたい、とリクエストして下さった方、ありがとうございます。

長いあとがきが有りますが読まなくても大丈夫です。

「俺が、俺が兄上の代わりに一番意思の強い男になってこのセイスルート家を継ぐ。だからっ! だから、兄上、隠している事が何なのか俺には分からないけど。家の事は気にしないで、自由になってくれ!」


「済まない……」


ハッとして目が覚めた。どうやら夢だったようだ。そして、弟に謝った言葉は夢であり現実でも有ったようで、実際に口から言葉が溢れたような感覚がしていた。だから目が覚めたのだろう。私は随分と懐かしい夢を見たな、と苦笑して執務室の隣にある仮眠部屋からのそりと執務室へ足を運んだ。


こんな懐かしい夢を見たのは、きっと弟の娘……ケイトリンに会ったからだろう。弟に良く似た容姿とそれ以上に良く似た心を持った姪は、色々な要因が重なり、現在はこのシオン帝国の上学園に在籍していて卒業までもう直ぐ、といった所。そんなケイトリンとは本来なら一生会う事など無かった筈だった。そう考えると運命というか、人智を越えた存在というか、そういったものを感じずにはいられない。


尤も、魔術師団長である私、シーシオからすれば【魔法】というもの自体が人智を越えた何かであるわけで。そう考えると、まぁこの状況も受け入れ易くなる。何がどうなってこうなったのか。考えても仕方ない事は考えずに受け入れる。これはもう()()()()()()()としか言い様が無いのだから。


会う事が無かった姪との交流は、その場限りのはずだった。私はシオン帝国で魔術師団長という鎖で縛られるにあたり、シオン帝国の中枢部から外界との接触を極力減らすように厳命されている。だからいくら血の繋がった姪とはいえ、頻繁に会う事など許されるわけもなく。本来なら手紙すら許されるものでは無かった。


ただ。

私が欲に負けたのだ。


私が魔法を使えるなど知らないはずの弟が。それでも私の苦しみを見抜いた弟が、私との約束を守りセイスルート家の当主の座を手にした弟が。


()()()()()ケイトリンをシオン帝国へ寄越してくれたのではないか、と思ってしまう程度には……私は欲に勝てなかった。外界との接触を極力禁じられていると理解していながらも、突如現れた血の繋がった存在との交流を断ち切れなかった。もう一度家族を実感させてくれる存在を、私は……自ら手放せなかった。


手紙の件はこちらからシオン帝国中枢部に既に連絡しておいてある。かなり渋られたが、長年の私のシオン帝国に対する態度と貢献が効を奏したようで。手紙だけならば、と了承を得られた。まぁ一番の理由は、私がケイトリンに対して「手紙ならば構わない」と発言していた事だろうが。要するにシオン帝国中枢部に対して事後承諾をもらっただけである。


そうして得られた姪との交流は、若さとはこういうものか、と若い時を思い出すような輝くような文面に心躍る事も有れば、姪からの話によると精神年齢はそれなりだという所為なのか、年齢よりも老成した意見が書かれた文面もあって、実は私の糧になっている。


職務上、私の事はあまり話せない。私的な事すら慎重にならなければ、何処からどんな機密事項が漏れるか解らない。そんなわけで、私からケイトリンに返信する内容は、当たり障り無い、自分が健康であること、偶に食べる甘味代わりの果物のこと、天気の話くらいなもの。それでもケイトリンは私からの手紙を心待ちにしているようで、私が返信をすれば即刻更にその返信を寄越してくれる。


こんなケイトリンを可愛いと思わないでいられようか。


そんなわけで私は、いつかは終わると理解しつつも、その日が来るまでは姪からの手紙を心待ちにしながら、魔術師団長の仕事をこなしている。さて。今日の仕事はなんだっただろうか。


魔術師団長と言っても常に魔法ばかり使っているわけではない。というか寧ろ魔法はそんなに使わない。どの魔術師にも言える事だが魔法を使うために必要な力・魔力というのは生まれた時から定まっている。増える事はなく減る一方。ただ魔力量が元々桁違いに多い、とか、他の魔術師には使えない特殊な魔法を持つ者が大抵魔術師団長の座につく。


私も他者には扱えない特殊魔法を持っているため、魔術師団長の座についた。……いや据えられた。魔術師団長と聞こえは良いが、実態は只のシオン帝国中枢部に逆らわない為の鎖。だが、同時に私のような特殊魔法の持ち主は、シオン帝国に許可無く魔法は使わないので寿()()()()()()()()()という利点がある。


特殊魔法の持ち主は、寿命が短い者が多い。


理由は解明されていないが、大体が短命だ。解っているのは、()()()()()使()()()()事が延命に繋がる。だからシオン帝国中枢部に命じられない限り、特殊魔法は使わない。だから私もこの年まで生きている。特殊魔法の持ち主はもっと早くに寿命を迎える者が多いのだから、私は長く生きている方だろう。


魔術師団長の座に着いたり魔術師団に入団していたりする魔術師は、それなりに長く生きていられる。まぁシオン帝国という飼い主に飼われている動物と思うかどうかは、微妙な所だろうが。長く生きられるという利点が有るのは確かだった。


そんなわけで魔術師団、特に団長は通常魔法は使わない。魔術師の多くは自分の好きな研究に没頭するし、魔術師団長は、仕事の殆どが書類仕事だ。魔術師達の研究報告書を読んで中枢部に奏上する書類とか、やらかした魔術師達の始末書と共に詫びの手紙を認めるとか。そんな感じだが。


今日もそんな書類仕事と格闘することになるだろうが、可愛い姪の何気ない日常が綴られた手紙を胸にして、頑張る事にする。

お読み頂きまして、ありがとうございました。


伯父様は、2度目のケイトリンの人生を書く前から出す事が決定していたキャラだったのですが。(随分遅くなって終盤でしたけども)まさか、その後を気にして下さる方がいらっしゃるとは思いませんでしたので、とても嬉しいです。


伯父様を出す事で、セイスルート家がタータント王家より古い家である事の重さを加えたくて、いつ書く事が出来るかな……と自分の遅筆さに泣きそうでした。更には、かと言ってあまり重点的に書くと恋愛物語では無くなるし……と匙加減にも悩みました。(本編、ほぼ恋愛要素皆無という突っ込みは聞こえません)


そんなわけで、伯父様のその後もどこまで書こうか悩みました。

というか、あまり書くとジャンル変更してタイトルも変更して続編を書き始めるレベルになりかねないので……。

伯父様の話は、主役はケイトリンですけど、恋愛じゃなくてファンタジー辺りにジャンル変更した続編を書き始めるレベルになっちゃうんです。


なので、敢えてその後の伯父様の日常にさせて頂きました。リクエストして下さった方、ありがとうございました。


来週月曜日にお届けしますのは

【家族から見たケイトリンとドミトラル】

です。

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