2度目。ーーそれからの日々。
最終話です。
早いものであれから5年以上経ちました。
王太子殿下・妃殿下の婚姻式から半年を経てヴィジェスト殿下とメーブ子爵令嬢・パメラ様との婚約式が行われ発表されまして。どうやらヴィジェスト殿下はパメラ様に振り回されているようだと噂が。さすが商売人の家柄。でも王子妃教育を頑張っているようだし多少は振り回されても文句は言えないでしょうね。
王太子夫妻のラブイチャぶりは王城内で知らない人は居ないそうです。直接王族と関わる上位の使用人から噂が流れまくって下位の使用人まで噂が届いているそうな。へぇ。まぁあの2人ならそうでしょうとも。近いうちに懐妊の知らせがあるでしょうね。
国王陛下と私は今回は私的には一度もお会いしてません。私との婚約を認めて欲しい、とトラル様が直談判した時に、私に会わせる顔がないと仰っていたそうな。そんな事ないのにね。でもこちらから会いたいですって言うものでもないので、いつか私的に謁見出来たらそれで良いと思います。
ノクシオ殿下の婚姻式に招待されたのは数年前。ご結婚された方は国内の侯爵家のご令嬢でした。大人しそうな方でしたが、ノクシオ殿下とドナンテル殿下曰く見た目だけ、との事ですから中身は……言及しないでおきましょう。王太子殿下となられたノクシオ殿下。そしてその妻は当然王太子妃。
その王太子妃殿下のご懐妊が分かったところで、ドナンテル殿下とアリシャとの婚姻式の日取りが決まったそうです。ノクシオ殿下に子が出来るまでは婚姻しない、というのがドナンテル殿下とアリシャの決め事だったそうで。もちろん、ノクシオ殿下のお子は無事に生まれたし、アリシャも婚姻しましたよ。私も参列しました。
シオン帝国の上魔法学園の領地経営科に変更し、当初は文官科と違う内容についていけずアリシャと励まし合い勉強を教え合いながら頑張ったのも良い思い出です。サヴィとベタルターは帝国の文官になって頑張っているそうです。手紙だけのやり取りですけど。どちらも帝国の中枢部を狙っているとか。夢は大きく持つといいよ。
トラルのご実家レード男爵家ですが。お義父様とお義母様には相変わらず好かれてます。良かった良かった。そしてご夫婦仲良く旅行に出かけている事が多いとか。長男のお義兄様とお義姉様はレード男爵家の領地経営に力を入れてますが、領地の特産品(レード男爵領は織り物産業です)に新作が出たらメーブ子爵家が目を付けたとかで、その新作が躍進したそうです。
そしてメーブ子爵家は当然のように、その織り物で作った一点物の広告塔を私に頼んできました。……義家族の特産品ですからね。積極的に広告塔になりましたよ、当然。おそらくパメラ様はそんな私の性格をよくご存知なのでしょうね。説得材料に持ってこられましたから。この時点で私が引き受けるのは目に見えていたでしょうよ。
次男のデスタニアさんなんですけど。そのレード男爵家の特産品を売るためにメーブ子爵家へ弟子入りしたらしく、今はメーブ子爵家の商会で頑張っているとか。将来を見据えた事で、デスタニアさんの意識がしっかりとしてトラルが日本人だった時の先輩さんの意識は消えたそうです。憑依が終わったのかな。
なんでも「これで歪みは無くなる」とデスタニアさんの脳内に声が響いたとか。それと同時に日本人の先輩さんの意識は消えたとか。デスタニアさん曰く、憑依していたトラルの先輩さんは、神様とかそういった人外の存在に連れてこられたんじゃないかな、との事でした。神様……居るんですね。デスタニアさんの意識がはっきりして将来にも目処が立ったところで、デスタニアさんに恋人が出来た、と聞きました。そのうち紹介してもらえるそうです。
セイスルート家は、お父様はまだまだ現役ですのでルベイオお兄様が当主になるのもまだまだ先。あ、ルベイオお兄様はもちろん既に結婚されてますよ。イルヴィル王太子殿下のちょっと後でした。ロイスは学園在学中に婚約者が出来て、その婚約者との仲は良好。一人娘さんなのでロイスがお婿に行くわけですね。ロイスは、私とお母様・お姉様の関係を見てきたので、婚約者さんの味方をする事を決めているようです。うん、正しいね。お母様とお姉様が婚約者さんを無意識のうちに不利になるような状況に追い込まないよう、よく見ているとのこと。ロイス……大きくなって。
そのお母様とお姉様ですが。
トラルに家庭事情を全て打ち明けた所、トラルが間に入ってくれるようになりました。私の様子を見ながら、お母様とお姉様との距離を縮めていくように舵を取ってくれてます。そんなトラルを見て思いました。やっぱりウチの男達は脳筋だわ、と。トラルみたいな繊細な行動をセイスルートの男達が出来るわけがない。
お母様は私との関係がマイナススタートである事を悔やんで、お義姉様……ルベイオお兄様の妻との関係には慎重なようです。慎重に距離を縮めてちょっとぎこちなくも良い義母・義娘関係のようです。良かった良かった。お義姉様の居心地が悪いのは、私も勘弁ですよ。
尚お姉様には学園在学中の頃から何かとお姉様を研究している(本当に研究らしい。お姉様の心理状況を分析している)方との婚約が調ってます。なんでも、「一生君を研究したい。俺と結婚して君の心理を読み解けば、ご家族の仲も進展するかもよ?」が、プロポーズの言葉とか。斬新です。その言葉にコロリとしたお姉様は相変わらず単純なのでしょう。
そうそう。ロズベルさんですが。実のお父様とお兄様と和解し、お母様であるマリベルさんは、お父様と再婚しているそうです。ロズベルさんは領地から出られないけど、1人で頑張っていて、時折家族全員で仲良くしている、と私宛てに手紙が来ました。嬉しいですね。
あと、伯父様……シオン帝国の魔術師団長である伯父様とはシオン帝国から帰国しても手紙のやり取りだけは続けてます。私がお願いしたら、手紙だけなら、と頷いてくれました。伯父様、何気に身内に甘い方なんでしょうね。
私、ですか?
もちろん、上魔法学園を卒園し、直ぐにドミトラル様と婚姻しました。婚姻して直ぐから元アウドラ男爵領を治める……事はなく。いくら領地経営科で学んでも、そんなに簡単にはいきません。一応、セイスルート家の当主であるお父様の元で修行してます。お父様、そこそこにセイスルート家の当主としてやれてました。いえ、ホントに。書類仕事も嫌々だけどやれていてびっくりです。もちろんトラルも一緒に修行してますよ。
で。デボラは当然、私の側から離れず。クルス達も私の影のまま。他にも何人かセイスルート家から私の元にやって来て、私ってこんなに使用人から慕われていたのか、とビックリです。嬉しいですけどね。
そして今日は……
「ケイトリン・セイスルートを元アウドラ男爵領……現セイレード男爵家当主と認める」
……ということで。叙爵式です、私の。忠誠は誓ってなくても辺境伯の爵位をもらっているセイスルート家。私も男爵位をもらいましたよ。忠誠誓ってないのに。セイレードって安直な命名ですが割と気に入ってます。セイスルート家とレード家を合わせた名前ですからね。ケイトリン・セイレード女男爵とその夫、ドミトラル・セイレードに変わるわけです。ちょっとドキドキして大いにワクワクしてます。
これからセイレード女男爵として領地を治めていく決意表明をしなくては。
「ーーお集まり頂いた皆様には、未熟な私にご指導を賜りたいと共に、見守って頂きたいと願います。また、私はセイスルート辺境伯家の生まれ。セイスルート辺境伯家は皆様ご存知のように、タータント王家より古い家柄。それ故にタータント王家の監視役も担って来ました。王家が間違いを犯さないための監視役。故にセイスルート辺境伯家は王家に忠誠を誓わない。その心を私、ケイトリン・セイレードも継いで行きたいと願っています。ですから私も……セイレード家も王家に忠誠を誓いません」
古い家柄だから許される発言なれど、ザワザワとこの叙爵式に参加している国の貴族達がさざめきます。まぁそうですよね。忠誠誓わないって言ってますもんね。私の隣で私の挨拶を見守っている最愛のドミトラル様と視線を交わして微笑み、私を男爵に任じてくれた国王陛下並びに王妃・王太子夫妻・第二王子と婚約者をチラリと見た後。
私は決めていた言葉を口にしました。
「ですから、タータント王家の皆様ーー
ーーお互い、不干渉といきましょう」
お読み頂きまして、ありがとうございました。
長い長いお話に付き合っていただき感謝致します。
このあと、あとがきを改めて書いてから番外編として、500万ビュー突破記念話とか、活動報告コメント欄を開放しますので、こんな話を読みたい的なリクエストがあれば可能な限り対応致します。
そんなわけで本編は完結ですが、完結設定にはしません。次話はあとがきです。(あとがきは、今夜更新予定です)




