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成る程。では、お互い不干渉といきましょう。  作者: 夏月 海桜
2度目の人生を送る事の原因と意味と結果。
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2度目。ーー2度目の人生の目標は、長生きです。・8

いつもお読み頂きまして、ありがとうございます。

ちょっと長めです。

その後。イルヴィル殿下のエスコートを受けてシュレンお義姉様は夜会の会場へ。私はそちらも招待されていたから出席するけれど。夜会に出席しても話す機会なんて無いだろうと思っていたから、その間に話が出来て嬉しかった。夜会会場の方は婚約者が居るなら婚約者にエスコートしてもらい、居なければ身内の男性にエスコートしてもらうのが通常。私はもちろんトラル様にエスコートしてもらった。私はヴィジェスト殿下の筆頭婚約者候補者だったけれど、辺境伯家の娘だから意外と顔は知られていない。あまり王都に来なかったからね。名前だけは知られている、という所。通常の夜会だと名前を呼ばれるのだけど、今回はイルヴィル殿下とシュレンお義姉様の披露宴を兼ねたような夜会なので名前は呼ばれない。


もちろん、警備は厳重だから変な輩は入って来られないのだが。そもそも王城内だし。入って来るとしたら相当な手練れになってしまう。そんなわけでトラルと一緒にのんびりと主役が現れるのを待っていたのだけど。いくら私の名前が有名でも、顔を知る人は知っているわけで。驚いた者が何人もいた。……何故驚くのかしら。


国王陛下直々に私が筆頭婚約者候補者の座から下りたことを発表されてましたよね? 公式文書で貴族の各家に一通ずつ。国民にも知らしめていたし、その公式文書にはヴィジェスト殿下の婚約者をメーブ子爵令嬢とする、とまで書かれていましたよね? 私……と辺境伯家とは、きちんと円満な話し合いの上、縁を結ぶには至らなかったとも発表されてましたけど? それでどうして驚愕なんですか? 皆様公式文書の存在をご存知ないとか言いませんよね?


それともあれですか。筆頭婚約者候補者であったにも関わらず正式な婚約者になれなかった私に、他の男性との婚約などあるわけがない、とでも思ってました? そんなことをつらつら考えましたけど、笑顔の裏に押し込めておきました。別にケンカを売りたいわけじゃないし。王家に忠誠を誓ってなくてもウチとの関係を良好に保ちたいから、王家から招待状が届いたので出席していますが、何か?


そんなささくれた私の心は、主役の登場で落ち着きました。イルヴィル殿下とお義姉様がお綺麗です。国王陛下夫妻とヴィジェスト殿下並びにメーブ子爵令嬢もご一緒です。あ。マズイ。メーブ子爵令嬢と視線が合ってしまいました。面倒事が起きそうな予感……。


私はイルヴィル殿下の婚姻式のために王都に前乗りしてました。さすがに2日前には到着してましたよ。シュレンお義姉様のためですからね。お父様の名代としての役割も有りましたけど、お義姉様が私を知らずともお義姉様に恥を掻かせたくなくて。準備を念入りにしたかったので前乗りしたわけですが。そこをヴィジェスト殿下がお忍びてやって来たわけです。……先触れも出さずに。先触れくらい出そうよ、王族だろ? という本音をぶちまけつつ応対した私に、ヴィジェスト殿下は申し訳なさそうに火種を落としました。


ええ、ほんとに。

殺意を覚えた私は悪くない。


「どんなご用件です? 先触れも出せない程のお急ぎの用でございましょう?」


「そんなに嫌味を言わないでくれ。先触れも出さずに悪かった。君と私の仲じゃないか」


「どんな仲ですか。友人でも必要最低限の礼儀は有りますよ」


「だから悪かった。それよりもケイトに頼みがある」


ちっとも悪びれていない言い方で雑に謝ったヴィジェスト殿下は図々しくも頼みがある、と言ってきましたよ? なんでしょうね。よっぽどの頼みなんでしょうねぇ?


「先触れも出せない程お急ぎの頼みってなんです?」


「そういじめないでくれ。……ケイトの手紙に書かれていたメーブ子爵令嬢との婚約なんだが、条件を出されてな。その条件を叶えてくれるなら婚約する、と言われ……。実は彼女の事が少し気になっているもので、ついつい、なんでも条件を受け入れる、と頷いてしまってな」


あなた本当に王族⁉︎ 軽過ぎなんだけど⁉︎ 安請け合いしないで条件くらい確認しなさいよっ!


という文句を呑み込んで先を促す。叱責するのは私の役目じゃない。溜め息くらいはつきましたけどね。


「それで?」


「うん。メーブ子爵令嬢は、その、君に会いたい、と」


「私に? 何故?」


「理由は会えたら話す、と。その兄上の婚姻式後の夜会で会わせたいのだが」


「それ、私の都合を聞いているようで押し付けているだけですよね?」


「ぐっ……だ、ダメか?」


私が冷静に突っ込めばヴィジェスト殿下が縋るような目を向けてくる。ああ面倒事の予感がする……とはいえ、王族からの話を断る事は出来ない。忠誠を誓ってないから二心有りと思われないように、溜め息をつきつつ了承するしか無かった。……揉めたくなかったし、ね。


そんなやり取りを思い出しながらメーブ子爵令嬢がやって来るのを視界の片隅で捉えていた。主賓の挨拶は終わっていて主催のダンスも終わった所なので、良いタイミングではあるわねぇ。遠い目になっているんだろうなぁって思いながら挨拶を交わした。


「あの、ご無礼を申し上げますが。セイスルート辺境伯令嬢にお願いが有りますの」


と切り出したメーブ子爵令嬢は、何故かややテンション高めな気がする。上擦った声から察するに興奮しているように思えるんだよね。……そして私は知らなかった。この状態のメーブ子爵令嬢の話術に逆らう術がない事を。簡単に言うと、私は丸め込まれてしまったのである。


要約するとメーブ家では新たな一点物装飾品をシリーズ化しようと考えているらしい。その広告塔になる方を探していたようだが、メーブ子爵令嬢の目を引いたのは、あのイロイロ有ったお茶会に参加していた私だけだったようで。……あの時見られていたのは、そういう事だったらしい。ヴィジェスト殿下も広告塔の候補だったらしいが私を見たら興味が失せたそうな。


それ、ヴィジェスト殿下の前で言わないであげて。ヴィジェスト殿下、泣きそうだよ。


なんでもその新作商品は何年も前から力を注ぎ込んでいて、ようやく完成。ちなみにその新作商品にメーブ子爵令嬢が企画段階の最初から携わっているそうで。初大仕事に張り切っていたようです。で。後は広告塔の人に宣伝してもらうだけの状態なんだけど、メーブ子爵令嬢のイメージする広告塔が私だけだったから、私がオッケーしないとその商品はお蔵入りとか。


それは責任重大だわー。ってか、そんな事まで話されて断れる人は居るのかって話ですよねー。ええもちろん、断れませんでしたよ。そんなわけで私は丸め込まれました……。後にメーブ子爵令嬢を良く知る人……彼女の身内と話した所、テンション高めの彼女の話術からは誰も逃げられない、との事でした。身内が言うならもうダメですね、分かりました。腹を括ります。


そんなわけで、後々広告塔になった私ですが、何故かやたらとデボラ以下ウチの使用人達に喜ばれました。なんでかしら。

それは会長・デボラ。副会長・クルス率いるお嬢様を愛でる会の面々にとっては大ニュースだからです!


と、突っ込んであげて下さい。


次回最終話の予定です。(上手く話がまとまって書き切れれば)

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