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成る程。では、お互い不干渉といきましょう。  作者: 夏月 海桜
2度目の人生を送る事の原因と意味と結果。
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2度目。ーー長く長く続いた関係の終わりと新たな始まり。・9

いつもお読みいただきまして、ありがとうございます。

「お話は以上で宜しいです?」


私が尋ねればイルヴィル殿下は書類を渡してきた。見ろ、という事ですか。7枚……。これってヴィジェスト殿下の婚約者候補の書類か。私が見て良いのかしらね。というか知りたいとも思わないって言いましたよね、さっき。何故見せて来るんですかね。


「その中から選ぶなら君は誰を選ぶ?」


「……イルヴィル義兄様。ほんっとうに策士ですよねぇ。ヴィジェスト殿下が決めるのが難しいって言ったら、私がこの令嬢を薦めていたよって言って婚約させる気、満々じゃないですかー」


「良く分かったな」


「また心にもない褒め言葉を……」 


そんな事を言いつつ書類に目を通すのは、時間のムダだから。イルヴィル殿下が決めたなら反論しても言い包められるのが目に見えている。そんなムダな時間を費やす気はない。


「あら? ナイゼルヌ侯爵令嬢とエルネン伯爵令嬢とイロイロあったあの日のお茶会に参加していた方が3人いらっしゃるのですね」


でもそうか。あれからまだ2年程。婚約を結んでない令嬢の方が多いだろう。というか、4人はあのお茶会に参加していなかった令嬢。年齢から察するに参加年齢に達していなかったということ? いえ、違うわね。


「ああ……なるほど。シュレン義姉様の派閥のご令嬢が5人と中立派という名の日和見主義派が2人ということか」


「ひよりみ?」


おっと。うっかり日本の言葉を出してしまった。


「常に有利な方を見極めてそちら側につこうとする、という意味です」


「ああ、確かに本当にシュレンの家の派閥にもつかず、反対勢力にもつかない家ってあるけど。君の所みたいに。そういった真の中立派とは違って、中立派と掲げながらある時はシュレンの家に擦り寄りある時は反対勢力に擦り寄る家が有るね。うん、確かにその2家はひよりみ? 主義だねぇ」


「この2家は何故選ばれたんです? シュレン義姉様に楯突かれたら要らぬ諍いが起きますよ」


私の忠告にイルヴィル殿下はニヤリと笑った。……その笑みは王子がしていい笑みじゃないよ。悪人だよ、それ……ってまさか。


「敢えて楯突かせて諍いを呼び起こしてその責任を取らせるついでに、反対勢力の声を抑え込もうという鬼畜な所業ですか⁉︎」


私の予想にイルヴィル殿下はまたニヤリと笑った。シュレン義姉様を守るために敢えて楯突かせて危険な家は睨みを効かせる気で⁉︎ もう、ヤダこの人。本当にシュレン義姉様第一主義! そんで私の予想に返答しない事で言質を取らせない辺りが腹黒っ! 仮にこの会話を誰が聞いていたとしても、イルヴィル殿下は何も言ってないから、何の証拠にもならない……。ホント腹黒いや全身真っ黒。


シュレン義姉様、こんな人でいいのかな。ああいや、知ってたっけ。イルヴィル殿下のこういう部分をシュレン義姉様にはひた隠しにしてるけど、シュレン義姉様はご存知だった。で、知ってる事をイルヴィル殿下に隠していたわ。どっちもどっちの似た者夫婦になるって思ったっけ。ーーうん。イルヴィル殿下の手綱はシュレン義姉様に握ってもらっていれば安心ね。


「もうイルヴィル義兄様が選んだ方で良いんじゃないですか?」


投げ槍になった私は悪くない。


「まぁそう言わず」


「いえ、本当に。イルヴィル義兄様考えて下さい。例えばですよ? 仮にですよ? もしもシュレン義姉様がイルヴィル義兄様と婚約を嫌がって断ったとして……だから! その黒い笑みをやめて下さい! もしもの話だって言ってるじゃないですか!」


仮の話でそんなに黒いオーラ出すな! と言いたい。


「落ち着きましたね? もしもそんな事が有ったとして。その後シュレン義姉様がイルヴィル義兄様にこの令嬢との婚約をお勧めします! って言われたらどうですか?」


「……そんなの会いたくない」


「ヴィジェスト殿下にそんな経験をしろ、と? 筆頭婚約者候補者の座についていた私に勧められたよって紹介するんです?」


イルヴィル殿下はちょっぴり考えて溜め息をついた。


「成る程。それもそうだな。分かった」


「では、お話はこれで終わりですね。失礼します。……あ、そうそう。イルヴィル義兄様とシュレン義姉様の婚姻の儀は楽しみにしています」


「ありがとう」


立ち上がり綺麗なカーテシーを心掛けて挨拶すればイルヴィル殿下は苦笑して頷いてくれた。次にいつ会えるか分からないから、心を込めたのは理解してもらえたはず。


書類を見た限り、まぁ中立派という名の日和見主義の2人も含めて誰でも大丈夫そうだった。意外だったのは、メーブ子爵令嬢が候補に入っていた事かしら。ナイゼルヌ侯爵令嬢とエルネン伯爵令嬢とのアレコレの時にもいたご令嬢だったけど、あまりヴィジェスト殿下に興味が無さそうだったのに、ね。いくらシュレン義姉様の家の派閥の方でも、直ぐに誰かと婚約したかと思いましたわ。


ヴィジェスト殿下を広告塔にして自領の一点物の装飾品を売ろうとしている? いやでも、その必要なんてないくらい、売れているはずなのに。婚約者候補の書類選考に残っている、とかは知らないでしょうけど。ヴィジェスト殿下との婚約がメーブ家にどんなメリットが有るのかしら。……まぁ気にする必要もない、か。個人的にはメーブ子爵令嬢は悪くないと思うけど、他の人も悪くなかったものね。どうかヴィジェスト殿下の意向と合わせて選んで欲しいものだわ。


ヴィジェスト殿下、私達は伴侶としての道は交わらなかったですが、どうぞお幸せに。

アンケートのご協力をありがとうございました。なんだか迷われる方が多かったようでしたね……迷わせてすみません。記念話は本編完結後に執筆させて頂きます。


さて……今話に出てきた令嬢方の名前、何人の方が覚えていらっしゃる事でしょう? ちなみに夏月は忘れていたので、見返しました。

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