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成る程。では、お互い不干渉といきましょう。  作者: 夏月 海桜
2度目の人生を送る事の原因と意味と結果。
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2度目。ーー長く長く続いた関係の終わりと新たな始まり。・4

「ロズベルさんは、領地から一生出られないって魔法をかけられたそうよ」


デボラ・クルス・アレジ・ガリアにそれだけ伝えて部屋の窓から空を見上げ……視線を下に向けて町並みを眺めた。大概どこの宿も1階は食事処で2階以上が宿泊用の部屋になっている。この宿は安くも無ければ高くも無い宿賃で4階建て。その3階の部屋に私とデボラで1室。クルスとドミーで1室。ちなみに現在ドミーは部屋でクルスを待っているらしい。一緒に来れば良い、とクルスも誘ったみたいだが、断られたとか。そしてアレジとガリアで1室。で。この部屋は私とデボラの宿泊部屋。そこの窓から下に視線を向ければ、仕事終わりの人達が一杯という感じで賑やかに歩いていた。


その一方で自業自得の部分が有るとはいえ、少女が生涯何処の土地にも行けないような罰を与えられた。なんだか世の中分からない事だらけ、ね。


「クルス。ドミトラル様の事はよろしくね」


「かしこまりました」


「アレジとガリアもよろしくね」


それから明日の出立時刻を伝えておく。日の出と共に、と言った私に4人は目を細めて真意を無言で尋ねてくる。


「襲撃犯の黒幕が何を考えているのか解らない以上意表を突く方がいいでしょう?」


「まぁそうですね。魔術師狙いだったのか、元男爵令嬢母娘狙いだったのか」


下手に突っついてナニカ出てくるならともかく、何も無い状態で突っついても意味がない。だから。


「もしまだ向こうが諦めてないなら突っついて来やすいかなぁ、と」


私がそう言えば、クルスが眉間に皺を寄せる。


「……それって随分こちらに詳しいって事になりますよね?」


そしてそう言った。


「そうなるね」


私が肯定するのと同時にアレジとガリアが消えた。見張られている、と考えたのだろう。


「クルスどう思う?」


「予想は色々出来ますね。例えば、あの親子……というか娘の言動が気に入らなくて、嫌がらせ。もしくはその言動の所為で不利益を被り、怒りから襲撃」


「そうね。嫌がらせというより不利益の方が可能性高いよね」


私もそれは一番可能性高いと思ってる。


「何処からか魔術師が同行する事を聞いて魔術師を狙っていた」


「それだと不可解な事が多いけどね」


「そうですね。何処から話が漏れたのか。魔術師全般に恨み等があるのか。狙われた魔術師のみに何かあるのか。そして結局襲撃しても捕まった途端に自害していますからね。目的も判らないし誰を狙ったのかも判らない。それに魔術師を狙ったのは脅しなのか。それなりに腕が立った襲撃犯だったようですし、統率が取れている所から寄せ集めの賊などではない。結局は解らない事だらけですよね」


「そう。そして。黒幕さんはあっという間に自害した者達の遺体を片付けている。という事は?」


私が問いかければデボラが答えた。


「それだけの金と権力と人を持っている」


「そう、なるよねぇ」


金も権力も持っているのは確かだろうけど、遺体を片付けるのだから、そういった事をやれる人すら従えているという事。怖いよね。


「そうなると。黒幕とやらは、お嬢様の動向も把握している?」


「可能性もあるってこと。だから突っつけるように日の出と共に出立すれば突っついて来やすいかなぁって。ドミトラル様はクルスが守ってくれるでしょう? 出来れば、私も好きな人と一緒なんだからもうちょっと甘いものを期待したいけど。実際、頭の中お花畑でしたけど。そういうのが理想じゃない。だからさ。襲撃とか黒幕とか考えたくないんだけど。でも、降りかかる火の粉は払わねばならぬ、だよねぇ」


「なんです? それ」


私のことわざにデボラが怪訝そうに聞いた。


「日本のことわざってやつでね。要するに飛んでくる火は、たとえどれだけ小さくても火傷の恐れがあるから積極的に避ける必要があるってこと」


「ああ、つまり可能性が低くても襲撃される可能性があるのなら、それを排除すべきということですか」


私の説明にクルスが深く頷き……珍しく、本当に珍しくニヤリと笑った。ーー怖っ。クルスがこういう笑みを浮かべるのってあんまり無いんだけど。もしや結構怒ってる?


「クルス。結構怒ってる?」


「怒ってますよ。襲撃した奴等に、捕まった途端に自害するような事を教え込んでいるって腹立たしい。如何にも駒としか考えてないのが気に入らない。おまけにアレジとガリアがお嬢様から命じられた事を全うして直ぐに戻っているにも関わらず、綺麗に死体を片付けた。つまり近くに居たのに実行した奴等を助けなかった。使い捨てでしょう」


「それは俺たちも怒ってます。俺たち影もそういう扱いをされても本来は文句は言えないけど。当主様もお嬢もそういう扱いをしない。だからこそ、ああいう奴等がそういう扱いをされるのは、辛い。俺たちはこんな扱いされないのにってなんだか悔しいんですよね」


クルスに続けてガリアがそう言った。そうか。ウチだからそんな扱いはされないけど、本来ならそういう扱いをされても文句は言えない立場なのか。……そう、なのかもしれない。だから、似たような立場の相手がそういう扱いをされた事が……悔しいんだね。


「もし。黒幕が出て来たら。私が一発ぶん殴ってあげるよ」


私がそう言えば、デボラもクルスもアレジもガリアも驚いたような顔をして……「お願いします」と口を揃えた。

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