2度目。ーー長く長く続いた関係の終わりと新たな始まり。・1
夏期休暇前試験の結果が告知されるというので掲示される場所へと向かっている。ドミーとの初めてのデート(忘れてしまいたい黒歴史でもあるけどね! 頬にキスされて倒れたなんて、どれだけ恋愛経験皆無なのよ、私……)から10日程経っていた。アリシャから質問責めに会いましたけど何か? 頬にキスされて頭が真っ白になった、と言ったらアリシャに珍しく憐みの目を向けられましたけど何か?
どうせ私は恋愛経験に乏しいわよっ!
そんな私でも全力で挑んだ試験の結果は気になります。いくら私がシオン帝国での留学を続けたいって言っても成績が悪ければ留学は取り止めになるし(タータント国の代表ですから、国の顔に泥を塗るような成績は許されません。学費や諸費は自腹ですけどね!)上学園を目指すにしても、成績が悪ければ目指す事も出来ないですからね。
で。結果は……アリシャが3位。私は5位。サヴィが28位でベタルターが20位。何とか国の体面は守れたようで安堵した私の隣で明暗が分かれています。アリシャは満面の笑み。どうやらここまで良い成績は初めてだそうです。私のおかげとか言ってますけどアリシャの頑張りがあったからですよ。
そんなアリシャとは対照的にサヴィとベタルターが沈んでました。特にベタルターが。上位50位までが此処に掲示されているわけで、そこに入れるだけ良いと思うのですが。そういうものでもないそうです。ちなみに、何故ここまで沈んでいるのか2人に尋ねてみれば……。
「「順位が下がった……」」
だけしか答えない。呆れてアリシャを見れば、簡単に説明してくれました。どうやら何処の科でもクラス分けは成績で決まるようです。で。成績があまりにも悪いと年度途中だろうと容赦なく別クラスに移動させるそうで。おお、なんと厳しい。
でも、私達最終学年ですよね? と問えば、何処の科でも上位30位以内までの成績で上学園を望む人は、優先的に上学園入学試験を受けさせてくれるそうです。その優先試験は一般試験より若干難しいものの、その優先試験に合格すれば帝国の政官という将来の道が拓けるそうです。優先試験に合格イコール将来安泰なのだとか。
「でもそれって優先試験で合格しても普段の試験の成績が悪かったら、意味は無いと思うけど違うの?」
「もちろんその通りよ。でも一つ二つくらいの順位の差は誤差だもの」
「ああ成る程ね」
逆に言えばそれ以上差がつくことは許されない、ということ。上位ならば構わないけど、下位に出ることは許される事はない、とか。取り敢えず理解出来たのは、サヴィもベタルターも上学園を目指しているし、優先試験も受けたいのだろう、ということ。それならばこの落ち込みようは理解出来た。
でも。
「何故、私とアリシャと一緒に試験対策勉強をしていたのに、順位が落ちたのかしら?」
という私の素朴な疑問は、2人の令息の胸を抉ったようだ。でもアリシャは「誰の所為でもない。自分達の所為よ」と冷たい。どういう事なのか尋ねれば。アリシャが大きくため息をついて教えてくれた。どうやらジュストが帰国する前……つまりロズベルさんの一件で忙しくしていた私は気づかなかったけれど。
「一つはジュスト・ボレノーが帰国したことね。彼、教え方が上手かったから、私達が2人に教えたよりも分かり易かったのだと思うわ」
それはまぁ納得出来る。私もジュストの教え方が上手い事には気付いていたし。
「それともう一つは。……2人共に同じ子を好きになったらしくて、その子の愛を競い合っていたのよ」
「えっ」
アリシャ曰く、その子は同じ教室の子らしいのだけど明るくて笑顔が可愛いらしい。で。2人共、その子に惹かれた、と。で。どちらが彼女に相応しいか2人で勝手に張り合って彼女のご機嫌取りをしていて……勉強が疎かになった、と。成る程ね。
「ちなみにその子は巻き込まれてしまって成績は?」
私はそちらが気になってアリシャに尋ねる。アリシャが無言で彼女の名前が書かれている順位表を指した。どうやら16位のようだ。
「常に15位前後だから影響は無いわね。ちなみに今までは、ベタルターも15位前後。サヴィは20位前後ね」
あらあら。それは確かにだいぶ順位が落ちたようです。
「でもまぁ、次は挽回したらいいんじゃない?」
私はなんて言えば良いのか分からず、結局そう言うしかなかった。でもアリシャは自分達が愚かな事をしていたからだ、と情け容赦ない。まぁ恋に溺れて己を見失ってしまったのは不味かったでしょうね。恋に溺れるのではなく、そこから奮起して更にやる気を出す方に、己を持っていけば良かったのだから。
尚、アリシャ曰く、「あの子、婚約者がいるのよ。そして2人の仲は良好なの」だそうです。2人は知っているはずなのに、都合良く忘れているのかしら、とため息を吐きながら教えてくれました。確かに恋に溺れて己を見失ってますね……。私も気をつけましょう。




