2度目。ーー恋する私と大人の貴方。・3
大変お待たせしました。
「どこに行くの?」
待ち合わせた喫茶店に行くのかと思えば、彼は全然違う道を行く。魔法学園生徒御用達の店がある通りから外れた道。
「うん? そういえばケイティに、今、俺がやってる仕事って教えた事が無かったと思って」
「タニアさんが居なくなってから、ってこと?」
「デスタニア兄さんが一緒だった時と変わらない仕事だけどね」
「そうなの?」
言われてみれば、タニアさんが声の魔術師だとかって話は聞いたけれど、ドミーが何の仕事をしているのか聞いた気がしない。……これ、結構ショックだわ。好きな人が何の仕事をしているのか知らないってまずくない⁉︎
無職で無一文。それならそれで私が養えばいいけど。いくら国王陛下が直々にお声がけしたとはいえ、旅費はともかく生活費をずっと出してるって事も無いだろうし……。まぁ仕事をしているって今教えてくれたわけだし、これからその仕事を教えてくれるわけだし。生活費はどうにかなっていたわけよね? という事は少なくとも無職で無一文では無いわけよね⁉︎
そんな事を思いながら、大通りから1本路地を通った先には、大通りの喧騒がやや遠くに聞こえているのに、なんだか空気感が圧倒的に違う通りに足を踏み入れていた。空気に呑まれるとはよく言うけれど、まさにそれ。
静けさがこの通りを支配している。
「こっち」
先程よりも声量を落としたドミーに促されて只管についていく。なんていうか、品格が大通りよりも高い、そんな空気感。一体ここはなんなのだろう。疑問がグルグルと脳内を駆け回る。そうして立ち止まった彼の視線を追うように私もその建物に視線を向けた。
木の温もりを感じさせる前世でいうところの所謂ログハウス。その扉を開けて中に入るとーー
「えっ?」
驚きで言葉を失った。様々な道具や薬草らしき物が所狭しと並んでいる。
「狭くてごめん」
「それは大丈夫。ねぇ、ドミー。もしかしてお店?」
「正解。デスタニア兄さんが声の魔術師として活躍していたからね。その兄さん経由で頼まれた雇われ店長。俺がまだタータントで学生だった頃、文官科に在籍していた。それで国王陛下から命を受けた後、最初のうちは兵団の書類仕事を請け負っていたんだ」
兵団の書類仕事……。ウチの辺境にも兵団は有るけど、要するに前世での交番の役割と消防士ではなく消防団員の役割を担っているような所よね。領内のあちこちに数人から十数人の規模で存在している。何処の国でも似たようなものだと思うけど……その書類仕事?
「ケイティが考えている事は大体合っているかな。どこそこで夫婦喧嘩が起こった。その仲裁に誰それが駆けつけた……みたいな書類ばかりをたくさん。嫌ではなかったけれど、その仕事だとあちこちに出向けない。縄張り争い的なのも有ったし、書類仕事をする事務員は兵団の中でもかなり地位が低くて。簡単に休暇を取れるものでも無かったし」
……うん。そうだよね。どこも似たようなものよね。ウチの辺境領も領地の外れだとそういう兵団になりかけるから、ちょいちょい抜き打ちで視察に行っていたわ、お父様やお兄様が。抜き打ちだから段々その手の差別は無くなっているけど、ウチの領地と他の領地の境辺りの兵団は、他所から来た兵士なんかがそういう差別を未だにやらかすから、抜き打ち視察は止めるわけにいかないのよね。
あ。今はそっちじゃなかったわね。
「じゃあ直ぐに事務員は辞めたの?」
「ある程度お金が貯まったら辞めた。ただ、その仕事の繋がりで魔術師と繋がってね。それで兄さんの事も魔術師団が認めてくれた。尤も魔術師団員に迎えられる程の凄い魔法でも無かったから、認められても自由だったけど。却ってそれが良かったとは思う。動き易かったから。で、まぁその魔術師団経由でこういった魔術師に必要な道具や薬草なんかを販売する雇われ店長だったんだ」
「そう、だったのね」
「まぁそれもケイティが魔法学園を卒業して、その後をどうするかで決まるけど」
サラリと物凄い発言をしたドミーに目を向ける。優しい微笑みでスルリと私の頬を撫でながら軽く肩を抱き寄せて……急に甘い雰囲気になってしまって、耐性が全くない私の顔は鏡を見なくても真っ赤になっているのは分かる。だって、身体が熱いんだもの! なんでこんな急に甘い雰囲気になっているの⁉︎
私は。私はどうしたらいいのか分かりません!
なんだかんだで330話ですね……。
そして気付いたらPV500万まであと少しです。執筆中に500万ビューを突破したら何か記念話を書きます、と言っていましたが……何を書けばいいのかさっぱりです。珍しく何も思い浮かばない……。
ですので、今まで出したアンケートから、読みたいものを皆さんが選んで下さいますでしょうか……。詳しくは5/1の活動報告にて。




